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リアクション
■
で、数分後――。
「くそっ! しつこいな!」
振り返って、シイナは舌打ちをする。
全力疾走にもかかわらず、【自警団】は諦めなかった。
それなりに体力自慢の者が集められているらしく、振り切れない。
このままでは追いつかれるのも時間の問題だ。
「という訳で、最後の手段だ! 残りの洋品店全部回りながら、奴らをまくぞ!」
シイナは全力疾走のまま、明日香や美羽の協力を仰ぐ。
「右、右、右……いや、次の交差点を左だ!」
「て、それ、斜め左でしょ!」
パコッ、明日香は懸命にスリッパで方向修正する。
「しかし、シイナ!」
恭司が怒鳴った。
「店に入り込んだら、囲まれてしまうぞ!」
「大丈夫だ! 奴らは正常な男共だ。まずは無理だろう」
「は? 正常? 男?」
(俺も男だぞ?)
嫌な予感に恭司は眉をひそめる。
彼の嫌な予感はものの見事に的中して。
その後彼らは「ランジェリーショップ」と「コスプレショップ」に立て続けに入らされることとなった。
後者は「無料セール大放出中!」と銘打ってある。
一行は売れ残りの「シスター」と「神父」の礼服に着替えて、変装して飛び出す。
だが聖職者の大群なんぞ、田舎町では怪しまれて当然だ。
という訳で、一行はどこまでも果敢に【自警団】から追い掛け回されるであった。
「なぜこんな完璧な変装なのに、見破られたんだ?」
「当り前だろうが!」
バシッバシッハシッハシシッ、パカッ!
恭司、美羽、ロートラウト・エッカート(ろーとらうと・えっかーと)、刀真、明日香から、総ツッコミに会う。
特筆すべきはエヴァルト・マルトリッツ(えう゛ぁると・まるとりっつ)だろう。
彼は4名が終わるタイミングを見計らい、かねてより調達した金ダライを不敵な笑いと共に取り出す。
「ツッコミってなあ、こうするもんだ! 行くぜっ!」
シュパッ。
狙い定めて金ダライを放り投げる。
だが、運悪く目の前に「金物店」の看板が!
のわっ! とのけぞった時には遅く、看板に直撃した金ダライはそのまま顔面目掛けて直撃した。
「うう、俺は今回もこんなところで果てるのかい!」
エヴァルト、撃沈。
彼の背をドカドカッと【自警団】が乗り越えて行く。
「『魔術師』の男かい? 『占い部屋』に通っていたらしぜ」
町民達の話を、遠のく意識の中で聞きながら……。
「エヴァルト……短い人生だった。おまえの死は無駄にはしないぞ! しかし誰が惨い目におまえを追いやったのか……」
「貴様だろうがっ!」
シイナが再び総ツッコミにあったのは言うまでもない。
■
「乗り越えるぞ!」
シイナが指示したのは、高いレンガの外壁だった。
上部から怪しげに綱が垂れ下がっている。
「何? あれ?」
美羽が首を傾げて。
「君は無理でしょう?」
刀真はシイナにくぎを刺す。
彼の意見はもっともで、綱は地上部まであるから良いとして、外壁はゆうに3メートルはありそうだ。
「何を言うか、刀真! 日々、新聞配達で鍛えた脚!」
「は? 新聞配達?」
「地球にいた頃、10年近くやっていたんだ。という訳で、行くぞ!」
残り数メートルの位置まで【自警団】は迫っている。
殴り倒せないこともないだろうが、そんなことをしたら「地球人迷信」に拍車をかけてしまうことになりかねないので、ここはシイナに従った方がよさそうだ。
そういった次第で、彼らはレンガ壁の綱を目指した。
「ファイト、イッパアーーツッ!」
各自は綱に飛びついた。
その途端、リンゴンッとうるさく鐘の音が鳴りはじめた。
それも1つや2つではない。
何十、何百という数だ。
その騒々しさに、【自警団】はおろか町の人々でさえ家から出てきて、何事かと空をキョロキョロと見上げる。
シイナが説明する。
「礼拝堂につながってるのだ。この隙に教会へ逃げ込むぞ!」
■
壁を綱を伝って乗り越えた所で、そこは教会だった。
折しも礼拝堂では結婚式の真っ最中だったらしく、新郎新婦が花弁舞う人垣の中、階段を下りてくる。
「よし、あいつらを人質にとって、町での安全を確保するぞ!」
「え? 人質ですって!?」
「そうだ。このままでは拉致が明かない。花嫁でも人質にとれば奴らも大人しく捜査に協力するだろう」
「いい加減にしろ!」
全員がハリセンでツッコむ。
その間に恭司は神父の礼服を脱ぎ去り、
「キミとは、ここで終わりにしようか」
元の姿に戻ると「光学迷彩」で姿を消す。
「ブラックコート」を被せ、「バーストダッシュ」!
シイナ拉致に成功した。
「まあ、こんな奴でも、役に立つ時は呼んでくれ!」
彼女の携帯電話を美羽に放り投げて、タアーッと去って行く。
「彼がやらなければ、俺がやっていたところですね」
あっけにとられて見送る一行の中で、刀真だけはしきりに恭司の行動を称賛していたとか。
……ともあれ。
今回彼らの判断は正しく、シイナを案内役にしてさえメインストリートの半数の洋品店を捜索することに成功した。
「エヴァルトくんや調教組も、重要な情報を手に入れることが出来たことだしね!」
ボロボロのエヴァルトを探し出してきたロートラウトは、一行の成果を褒め称える。
「もっともエヴァルトくんは、ルミーナちゃんの情報が欲しかったんだけどねー」
という訳で、別行動でルミーナ捜しに出向こうとする。
その時着信が鳴って、美羽はシイナの携帯電話にでた。
「え? ルミーナさんとオルフェウスさんの蝋人形が見つかった?」
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