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リアクション
第4章 貧乳、巨乳、幼女、着せ替え。
「やっぱり、ちょっとえっちなお題だったねー、みんな観てるよ!」
「そんな事で臆する私じゃないですっ、やると決めたら全力投球なのですー」
藍玉 美海(あいだま・みうみ)とナリュキ・オジョカン(なりゅき・おじょかん)は、赤系の超ミニスカチアガールの格好で外に出ていた。外で――堂々と足を絡ませていた。片方が片方を押し倒して、これが最後の撮影である。
「どうせ、ねーさまの姿をしてるんだし別に大丈夫なんだもん。普段ねーさまにしてやられてばっかりだし、たまには無駄に絡んじゃったりして自重しない感じでがんばっちゃうんだもん」
美海は無駄に絡んじゃってミニスカートがめくれている。ナリュキは押し倒されてツインテールが土の上に無駄に広がっている。
「さゆゆと共にびくとりーを目指すですっ。あれ、向こうでもこっそり撮影会が始まってますねえー」
ナリュキの視線の先には、草葉の陰に隠れてカメラのシャッターを押しているスケベ男達と、撮られていることに全然気付かず掃除をしているエルシア・リュシュベル(えるしあ・りゅしゅべる)と音羽 逢(おとわ・あい)の姿があった。エルシアの、はちきれんばかりの豊満な胸や長い足に、彼等は夢中になっている。それほどの露出ではないものの、逢に鼻の下を伸ばす奴も多い。
「メイド萌え〜ってやつだね!」
「メイド服もいいですね〜」
高務 野々(たかつかさ・のの)とナナ・マキャフリー(なな・まきゃふりー)は、エルシア達の邪魔にならない位置で会話を交わしていた。
「むぅ、執事服というのは、いつもの服に比べると、ちと動きにくいで御座る……まあ、ナナ様の命ならば致し方あるまい」
「でも、そちらはまともなメイド服で良かったですね。野々は、自分の服を着ているからサイズが……ああ! あんなに屈んだら胸が! 野々! ちりとりとかは任せてキミは別の事を……! ああ、足をもう少し閉じて!」
「しかし、ナナ様をお守りするにしてもメイドのスキルではいつもと感覚が違うで御座るな……。何か見落としてなければいいで御座るが……」
思いっきり見落としている。
そこに、外を歩いていたトライブ・ロックスター(とらいぶ・ろっくすたー)が堂々とした態度で歩いてきた。
「何か困ってるなら俺が助けてやるぞ。ほれ、言ってみろ」
トライブは女子4人の中に入って、それぞれの様子を眺めやった。
(ふむ……どの雌も上玉だな。全員を嫁にすればトライブも喜ぶだろう)
トライブは5月に起きた空京での騒ぎで、エリザベート・ワルプルギス(えりざべーと・わるぷるぎす)やアーデルハイト・ワルプルギス(あーでるはいと・わるぷるぎす)、ファンを自負する歌を得意とする機晶姫の前でロリコンという不名誉を得てしまっていた。帰ってきた彼は、床をゴロゴロ転がりながら『違うんだー、誤解なんだー』と悶えていて、最近になっても、まだそれを引き摺っているらしい。
(つまり、幼女以外の者に対して愛を囁けば良いのであるな。こやつらは成熟した女子のようだし、嫁にすればもうロリコンとは呼ばれまい! ……いやしかし面白いな)
ということで、トライブと入れ替わった蘭堂 一媛(らんどう・いちひめ)はこの面妖な現象を利用して世間が彼に抱くロリコンのイメージを払拭してやろう、とナンパを繰り返していた。
……またナンパかい。
しかしトライブのナンパは、そんじょそこらのナンパとは少し違う。口説くだけではなく、助けるのだ!
「いえ……誰かに助けてもらえるようなことでもありませんから」
「まあそう言うな。ところでおぬしら、のぞかれているのは知っているか?」
「のぞき……と申すか!?」
驚くナナに、トライブはにやりと笑った。
「よし! ではまずあいつらを退治してやろう」
そう言うと、隠れていたスケベ男の所へと行ってサンダーブラストだのアルティマ・トゥーレだのをぶちかます。叢の中から『うらぎりものー!』という声が聞こえた。
「「…………」」
ナナがびっくりしていると、悠々と戻ってきたトライブは野々に言う。
「おぬしは先程、あのぱっつんぱっつんのメイド服に悲鳴を上げていたな。では……」
しゃがんでゴミを回収しているエルシアに近付き、着ていた制服のジャケットを掛ける。
「これを着るとよいぞ。そのでかい胸も隠れるだろう」
「でかい……くぅ!」
何故か、エルシアは悔しそうな顔をした。そんな彼女の顎に、トライブは指を添えた。さあ口説こうかという所で――
「くぉら! 馬鹿犬ーーーーーー!」
遠くから、なじみのある呼び声がした。振り返った先に怒涛の勢いで走ってくる一媛が見える。
「飼い主殿……何を怒っているのかわからんが、逃げた方がよさそうだの。わっはっは!」
トライブは一媛から逃げ出したが、すぐに足を止めた。男女の集団を見つけたからだ。中心には、これまた可愛らしい、生意気そうな少女が居る。少女は……貧乳だった。
「ほら少年! さっさと来ないと置いてくよー!」
トライブ達とは反対方向より、如月 夜空(きさらぎ・よぞら)は、軍用バイクを爆走させて蒼空学園に向かっていた。スピードを緩めることなく雨宮 七日(あめみや・なのか)を振り返る。
「事故るぞ……」
七日はそう呟くと、通常速度で飛ぶ小型飛空挺の上で独りごちる。
「はは、入れ替わりとか、んなファンタジーな……」
だが、前方のバイクのサイドカーには、自分――日比谷 皐月(ひびや・さつき)が乗っている。伸びた髪を風に靡かせ、足を揃えて少女のように座っていた。車体の外枠に片手を添え、こちらをちらちらと気にしている。
「…………」
束の間閉口してから、七日は溜め息を吐いた。
「……現実逃避してても始まらねーな。このままじゃ風呂にもトイレにも困るだろうし、早いところ何とかしねーと……」
風呂は兎も角、最大の問題はトイレであろう。いざ迫ってきたら回避できるものではない。
「なるべく水分は採らない様にしよう……ん?」
蒼空学園の近くで、何やら問答しているグループがあった。その殆どがどこぞの村で見た顔で、中心には車椅子に座った蒼い髪の少女がいる。未だ『本体』には会ったことが無いが、嫌な予感がする。
「おっ、いい獲物みーっけ!」
前を行く軍用バイクが突然停まった。夜空はブラックコートを纏い、カモフラージュを利用して物陰に隠れつつ、まことに怪しい動きで集団に近付いていった。
「何する気だ!? あいつ……!」
七日は飛空挺を降りて、彼女の後を追い掛ける。皐月もサイドカーから出て、歩き出した。
(入れ替わり……ですか……。何と言いますか、身体から違和感が消えませんね。それにしても皐月、意外と筋肉有るんですね……)
「ちょっと! 街に行くってどういう事? このままじゃ、いつ戻れるのか分からないのよ!」
「あの鍋が失敗するって決め付けてるな……。つーか、お前には関係ねーじゃねーか。入れ替わってないんだから」
「関係あるわよ!」
「何が」
「それは……!」
ピノの言葉に、ファーシーは何か反論しようとして口を噤んだ。少し俯いて胸に手を置き、躊躇うように目を逸らす。それを見て、ピノはしまったと思った。ファーシーが誰かを助けることを、助けになることを望んでいるのを知っている筈なのに。
「わたしは……」
「あー、もういい! 俺が悪かったよ」
面倒そうに金色の髪を掻き毟ると、ピノはファーシーと目を合わせた。実際の身長には差があるが、彼女が車椅子に座っているために見上げる必要も無い。
「でもこっちも大変なんだ。想像してみろ、俺が『わー、かわいいー』とか言ってる様を。それが街に出て遊んでるなんて……あ〜〜〜!」
自分で言って自分で想像して悶えるピノ。ファーシーはそれを見て、何だか冷めた気分になった。よく考えれば『ラス』が一緒に来たからといって役に立つとも思えない。
「分かったわよ。好きにすれば?」
「……言われなくても」
思い切り冷ややかに言ってやると、ピノは多少たじろぎつつも森とは反対方向に歩き出す。その背中に、ファーシーは追い討ちをかけた。
「その代わり、戻れなくなって1週間とか1ヶ月とかそのままでもラスだけは助けないから」
「…………1ヶ月……? あ。」「きゃあ!」
ファーシーは後ろから胸を掴まれ、悲鳴を上げた。後ろを振り仰ぐと、頭にゴーグルを乗せた赤髪の女性がにやりと笑った。そして続けて胸を揉んだ。
「ちょっ……! やだ!」
初対面の女性にいきなりセクハラを受けるという稀有な経験をしたファーシーは、慌てて車椅子を発進させる。
「小さいけど、いい乳じゃん!」
「あ、あなたは……?」
しかし、夜空が名乗る前に、割り込んだ人影があった。トライブだ。腰に両手を当てて、実に男らしくファーシーをナンパする。
「娘よ……俺のモノになれ」
「ト、トライブさん?」
「一媛!」
「夜空!」
一媛と七日がやってくる。一媛はトライブに食ってかかり、七日は集団の前で複雑な顔をして立ち止まった。勢いで走り込んできてしまったが……どの面下げて合流しろと……!?
「てめ、人が凹んでる所に気を利かせて果物を持ってきたかと思えば……とんでもない事やらかしやがって!」
「えーと……」
「気に入った雌を己がモノにするのは獣の本能だ」
「中身が入れ替わるなんてこんな面白い事、あたしが放っとく訳無いじゃん?」
夜空は輪の中央に立つと、全員を見回して宣言する。
「カモン、女の子と入れ替わっちまった幸運な野郎ども! あたしが女の悦びって奴を教えてやろう!」
「何言ってんだお前は!」
七日はその瞬間に状況を忘れた。一方、一媛は。
「本能だか何だか知らねぇけど、手当たりしだいに口説きまくり暴れまくりで、俺のイメージがより悪くなるだろうが! って、何楽しげな顔してやがる……」
「ふふん、飼い主殿は嫁が欲しくはないのか? ハーレムだぞ?」
「んじゃ、手始めに……キミだ!」
「わっ! ちょっと何するの!」
(ほう、これは逆に効果が……? いや、ますます女らしくなっても厄介だな……)
(ドゥムカの姿が胸を……。いや、女同士だしな、風呂でじゃれるようなものか)
「なに? 嫁? ……べ、別に欲しくねぇよ、ハーレムとか言ってんじゃねぇよ。自分の恋人くらい自分で見つけるわっ!」
「ロリコンと言われても気にしないのだな」
「いや、ロリコンじゃねぇから」
「……ロリコン……って、何?」
(はっ、しまった……)「ファーシー! 違うからな! 俺はそういう『コン』がつく類の趣味は……」
「女子なら年齢を気にしないということか? では、将来こういう子を連れてきたりとか……」
「は? 俺?」
「だから! 幼女を恋人として連れてきたりはしねぇよ! 変な勘違いすんな! 大体、俺にはちゃんと好きな……あ〜、何でもありません」
一媛は適当に言葉を濁す。
(……ファーシーの事があるから、俺の惚れてる女が鏖殺寺院の幹部ってのは言えねぇよな……)
ちらりと見られて、ファーシーは首を傾げる。
「……? 何? どうしたの?」
「幼女幼女って……前から言おうと思ってたんだけど、外見年齢12歳だからな! 確かに胸は無いし背も低いし子供っぽいけど!」
「それで12歳なの? 素直に10歳って言えば?」
登録してないから、まだ間に合う!
「ついでに、この口汚い幼女の胸も揉んでやろう!」
「だから幼女じゃないっつって……わっ、やめろ!」
夜空はピノの胸を揉んだ。挙句に掴んだ。むにむにむに……
「やめろ! 離せ! な、なんでこんな事……!」
「何故って? そこに乳が有るからさ!」
「……そろそろ自重しろよ馬鹿夜空」
「あれー? 何を何時の間に傍観者気取っちゃってんのかなしょーねん! 少年も立派な対象だぜ?」
ピノから手を離して七日ににじり寄る夜空。ピノはがっくりと崩れ落ちた。
「ピノが……俺のピノが……」
「……手をわきわきさせながら近寄るなッ!?」
「まーまー、そう緊張しなさんな。これでも手先は器用な方なんだぜ? トラッパーとかピッキング的な意味で」
「使い方間違ってるだろそれ!」
「何を言う、これがスキルの正しい使い方だ! ほれ捕獲ー」
むにむにむに……
「や、やめて下さい夜空! そんなはしたない……!」
一方、トライブ達は相変わらずロリコン――否、嫁についての問答を続けていた。
「好きな者がいるのか? しかし、嫁は何人居てもいいだろう」
「……いや、人間も狼も一夫一妻制なんだが……ん?」
むにむにむに……と胸を揉まれる一媛。
「なっ……俺も……!? そういやそうだ! 普通に会話してる場合じゃ……!」
「どうでも良いが……街だか大樹だかには行かなくて良いのか?」
そこで、ドゥムカがぼそりと言った。