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【十二の星の華】双拳の誓い(第6回/全6回) 帰結

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【十二の星の華】双拳の誓い(第6回/全6回) 帰結

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    ★    ★    ★
 
 入れ替わるように、すぐ近くの小さな亀裂から、シス・ブラッドフィールドとゆるスターたちが出てきた。
「早く、負傷者を運び込むにゃん」
 死屍累々の巨大ガザミたちを見て、シス・ブラッドフィールドが叫んだ。
 急いでゆるスターたちがちょろちょろと焼きガニの間を走り回るが、当然のように生き残りはいなかった。
「それにしてもいい匂い……ごくり。いやいや、俺様は魔獣の救助に来たにゃん。そこぉ、食べちゃだめにゃん!」
 我慢できなくなって焼きガニをもしゃもしゃ食べているゆるスターを見つけて、シス・ブラッドフィールドは怒鳴りつけた。
「でも……」
 
    ★    ★    ★
 
「海賊最大の秘宝、アルディミアクの下着を探していたら、とんでもない物を見つけてしまったあ。どうしよお」
 あまりにもわざとらしい棒読み台詞を吐きながら、南鮪がフレイムジャンパーやイルミンスール魔法学校の制服や明倫館制服などをわしづかみにして歓喜の声をあげた。
「なあるほどお。こりゃ、信長のおっさんが潜り込めって言うわけだぜ。いっそ、キマクに秘宝館でも作るかなあ」
 ほっくほっくの顔で南鮪が言った。今まで迷子になっていたかいがあったというものである。
「貴様、命がおしくないのであるな」
 牢の中から、リリ・スノーウォーカーが凄んだ。
「へーんだ。そんな所で騒いだって、ちっとも怖くねーぜ。むーん」
「こ、こら、人の服の匂いを嗅ぐな。おのれ、ここを出たら消し炭にしてくれよう」
 すでに充分変態な南鮪の所行に、リリ・スノーウォーカーが顔を真っ赤にして叫んだ。鉄格子の填った対魔法牢の中でなければ、全魔力を駆使して南鮪を亡き者にしているところだ。まして、今は下着姿である。なめ回すような南鮪の視線は、へたな攻撃よりも精神ダメージが大きかった。
「そこの変態。命があるうちに、その装備をこちらへさし出すのだ。そうすれば、ある程度の慈悲は示してやろう」
 ララ・サーズデイが、仁王立ちになって南鮪を指さして言った。膝をかかえて防御体勢をとっているリリ・スノーウォーカーとは対照的だ。
「やだ」
 短く言うと、南鮪は持っていた服を横において床に腰をおろすと、ジーッとララ・サーズデイの鑑賞モードに入った。
「あっ、そだ、写真も撮っておこう」
「これこれ、そこな色男。美しき者を鑑賞するのであれば、こちらへおじゃれ」
 隣の牢から手だけを出してロゼ・『薔薇の封印書』断章が南鮪を艶っぽく手招きした。
「んっ?」
 思わず南鮪が視線を動かす。
「やーめた。つまんねー、服着てんじゃん」
 ぷいと、南鮪が横をむいた。パラ実脳では、白い長襦袢が下着だと分からなかったようである。
 ロゼ・『薔薇の封印書』断章の方は、近寄ってきた南鮪を鬼眼で威嚇して、うまく装備を持ってこさせようという目論見が外れて、軽く舌打ちをした。
「いいかげん、ここから出すじゃん」
「だーめ」
 メイコ・雷動のお願いも、南鮪は軽くスルーした。
「ちっくしょう、鍵さえ開いてれば……」
 無駄と知りつつ、メイコ・雷動が鉄格子からのばした手で南京錠を引っぱった。その手に、何か出っ張った物があたる。
「えっ、鍵!?」
 指先でまさぐってみると、南京錠には鍵がさしたままだった。まさかシニストラ・ラウルスがこんなおおぼけをしていったのだろうか……。
「とにかく……」
 メイコ・雷動は、迷わず鍵を回した。南京錠があっけなく外れる。
「そこの変態!」
 素早く牢の外に飛び出したメイコ・雷動が、叫ぶと同時にバーストダッシュを利用した強力な一撃で南鮪をぶっ飛ばした。
「うぼあっ」
 完全に油断していて吹っ飛ばされた南鮪が、奧の壁に激突して気絶する。
「おー」
 牢の中のリリ・スノーウォーカーたちが思わず拍手した。
「さあ、早くここから出してくれぬか」
 リリ・スノーウォーカーが、メイコ・雷動を急かした。
「しかたないなあ」
 ちょっとめんどくさそうにしながらも、メイコ・雷動が鍵を探してリリ・スノーウォーカーたちを牢から解放した。
「ゲスめ、もはや問答無用。さあ、君のすべてを見せてくれ」(V)
 怒りが頂点に達していたララ・サーズデイが、容赦なく南鮪に近づいていった。
「ユリか、すまない。やっと脱出できたのでな。すぐに光条兵器を……」
 服を身につけつつ、リリ・スノーウォーカーが携帯でユリ・アンジートレイニーに連絡を入れた。
『す、すいません。今、こちらはそれどころじゃ……、きゃあ!』
「おい、どうなっているのだ、ユリ!?」
 携帯から聞こえてきた悲鳴に、リリ・スノーウォーカーは大声で聞き返した。
 
    ★    ★    ★
 
「ひーん、だめかもですぅ」(V)
 迫ってくる巨大ガザミから、ユリ・アンジートレイニーが悲鳴をあげて逃げ回る。
 ユリ・アンジートレイニーにむかって振り上げられたハサミが、振り下ろされる直前でソニックブレードによって切断された。
「早く行くのだ!」
 馬に乗った相馬小次郎が、巨大ガザミとユリ・アンジートレイニーの間に割って入って叫んだ。
「こっちですわ、早く早く」
 狭山珠樹が、ユリ・アンジートレイニーを手招きする。こんなこともあろうかと、即席のバリケードを作りあげて守りをかためていた。
「しかし、まさかこちらにまで攻め込んでくるとはな。菫はなにをやっておるのだ。それにしても、何が敵を呼び込んだのだか……」
 次々に海から上陸してくる巨大ガザミと戦いながら、相馬小次郎は状況を把握しようと努めた。
「海賊船も一隻来ているみたいだね。でも、狙いはこちらではないのか? そういえば、クイーン・ヴァンガードらしい通信が海岸から発信された形跡があったけれど。さっきのミサイル攻撃を察知して反撃にきたのか。とんだとばっちりだな」
 通信機器を守りながら、如月正悟が言った。
「どっちにしろ、暴れられればあたしは満足だよ!」
 手当たり次第に巨大ガザミを実力行使で叩き潰しながら弁天屋菊が言った。
 ジャワ・ディンブラのサインをもらえたことに喜んでいておいてきぼりにされてしまったが、神様はちゃんと敵を残しておいてくれたようである。
「とりあえず、カレーを駆けつけ三杯いかがデース」
 捨てられたカレーをかき集めてきたアーサー・レイスが、もったいないとばかりに巨大ガザミに配って回っていた。さし出すと言うよりは顔面にパイのごとくぶつけていく。
「大変です、カニさんが泡を吹いて苦しんでます!」
 あおむけになってひくひくする巨大ガザミを見て、ベリート・エロヒム・ザ・テスタメントが反射的に駆け寄ってヒールしようとした。土方歳三がすっと手を横に広げてそれを制する。
「殺人カレーが、初めて役にたったようだな」
 ベリート・エロヒム・ザ・テスタメントを狭山珠樹の所まで下がらせると、土方歳三は妖刀村雨丸で巨大ガザミに止めを刺していった。
 海賊による攻撃は予想外ではあったが、今のところは心配するほどではないように思われたのだが……。