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【十二の星の華】双拳の誓い(第6回/全6回) 帰結

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【十二の星の華】双拳の誓い(第6回/全6回) 帰結

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 4.羽翼(うよく)
 
 
「しまったあ、こっちにも敵がいたのかあ」
「大変ですわあ、逃げましょお」
 なんともわざとらしい声をかけ合いながら、ズィーベン・ズューデンとナナ・ノルデンが目立つように火術で攻撃をしながら海賊島の海岸線を空飛ぶ箒ですたこらと逃げて行く。
「待ちやがれ!」
「侵入者だ、追え!」
 海賊の見張りが、二人の後を追いかけていた。
「ここまでおいでー」
 挑発された海賊たちが、ペットの狼をけしかけた。
「簡単に追いつかれても困りますね」
 ナナ・ノルデンが、火術で狼たちを威嚇する。
「馬鹿め、そっちは……」
 海賊たちがほくそ笑んだ。
 そんなことは気にせずに逃げていた二人だったが、突然前方に岩が立ち塞がるように現れた。いや、ストーンゴーレムだ。海賊島の直接の守りに、要所要所に少数ながらおかれていた物だった。
「簡単には燃えてくれそうもないよね」
 振り下ろされた腕を避けて、ズィーベン・ズューデンが言った。高度をとりたいところだが、あまり上に行けば海賊島の上から狙撃される。
「何やってるんだもん。こんなの削っちゃえばいいんだよね」
 ブライトマシンガンを乱射しながら、小鳥遊美羽がリン・ダージたちとやってきた。
「派手にやっつけちゃおー」
 リン・ダージが、ナナ・ノルデンたちに飛びかかろうとジャンプした狼を狙撃して倒した。
「くそ、誰か呼んでこい!」
 仲間に言われて、海賊の一人が道を戻ろうとする。
「おっと、ここは通しませんよ」
 菅野葉月が、海賊の行く手に立ち塞がった。
「ちっ」
 海賊が、甲高く指笛を鳴らした。その音に答えて、上空を舞っていた強盗鳥が急降下してくる。
「葉月はワタシのもの! 近づく虫は駆除に限るよね!」
 ミーナ・コーミアが、トミーガンですかさず強盗鳥を撃ち落とした。
「くそっ、やってやろうじゃないか」
 海賊たちが、獣人の本性を現して虎の姿に変わると、菅野葉月たちに突っ込んできた。
 菅野葉月が、右手に持ったライトブレードで獣人の爪を受けとめる。
「いいでしょう、受けてたちましょう」
 菅野葉月は、左手から放った遠当てでいったん海賊を弾き飛ばすと、あらためて身構えた。
 
    ★    ★    ★
 
「リンちゃんたちはあ、派手にやってくれているようですねえ」
 微かに聞こえてくる戦いの喧噪に耳をそばだてながら、チャイ・セイロンが言った。
「ミーたちは、ここを守ればいいんだな」
 キョロキョロ周囲を見回しながら、新田実が言う。
 岩壁の中は長年の浸食でできた鍾乳洞になっており、自然と複雑な横道が走り、ちょっとした迷路のようになっていた。とはいえ、海賊たちが利用していた部分はちゃんと手入れがされており、床や壁を削って平らにした跡によって通路と呼べる部分の判別は容易だった。
 トライブ・ロックスターから送られてきた詳細なマップを頼りに、千石朱鷺がココ・カンパーニュたちを道案内してすでに先行している。チャイ・セイロンたちは、彼女たちの退路を確保するためにこの場に残っていた。それに、気づかないうちに背後から敵が迫ったのでは挟み撃ちにされる心配もある。
「いずれにしろ……、静かに」
 自分たちに任せておけと言いかけて、本郷涼介が静かにするように言った。
 洞窟の支洞と思われる所から、ガチャガチャと鎧が触れ合う音が近づいてくる。
「敵か……?」
 殺気看破では何も感じられず、本郷涼介が単独で進んでそっと様子をうかがった。
 近づいてくるのは、二体の武者人形だ。おそらく、自動巡回でもさせているのだろう。いや、操っている者が近くにいる可能性もある。
「ココさんたちの方に行くとまずい。あれは私たちがなんとかしよう」
 そう言うと、本郷涼介はクレア・ワイズマンに目配せした。準備はできていると、クレア・ワイズマンがうなずく。
「すぐに戻ってくる。それまでちょっとこれを預かっていてくれ。私とともに数々の修羅場をくぐり抜けてきたものだ、お守り代わりにはなるだろう」
 そう言ってチャイ・セイロンに愛用のダイスを渡すと、本郷涼介はクレア・ワイズマンとともに武者人形のいる支洞へとむかった。
「ミーたちも、一緒に行こうか?」
 新田実が、チャイ・セイロンに訊ねる。
「いえ、大丈夫でしょお。多分」
 チャイ・セイロンは、預かったダイスをたいして考えることもなく豊かな胸の谷間の間にしまいながら答えた。
「こっちだ、こっち!」
 叫びながら、本郷涼介がバーストダッシュで洞内の壁を蹴って駆けあがるようにして武者人形たちの頭上を通りすぎた。
 発見した敵に武者人形たちが刀を抜いて振り返るところへ、一体の足下を氷術で凍らせて動きを止める。相方のことなどお構いなしに、自由に動ける武者人形が、ガシャガシャと音をたてて本郷涼介の後を追った。
 残された武者人形が、なんとか抜け出そうともがく。
「行きます!」
 倶利伽羅の槍を構えたクレア・ワイズマンが、バーストダッシュで飛び出した。身動きのとれなくなっていた武者人形を、強烈なチャージで粉砕する。
「やったね、おにいちゃん」
 クレア・ワイズマンは、槍を振って突き刺さっていた鎧の破片を外すと、急いで本郷涼介の後を追っていった。
「こっちか?」
 入れ替わるようにして、ラルク・クローディスと、アンドリュー・カー、フィオナ・クロスフィールドたちがやってくる。立ち塞がる海賊たちを蹴散らして、やっと追いついてきたのだ。
「あらあら、遅いですわよお」
「なら、取り返すまでだぜ。こっちだな」
 チャイ・セイロンに言われて、ラルク・クローディスが言い返した。
「はあ、なんでこうなるかなあ。遅れた分を取り返すよ、フィオナ」
「はい、アンドリューさん」
 猪突猛進に突っ走っていくラルク・クローディスを追って、アンドリュー・カーたちも走りだした。
 
    ★    ★    ★
 
「おらあ、ぶっ飛びやがれ。道空けろー!」(V)
 パワードスーツの力任せに、雪国ベアが立ちはだかる海賊たちを蹴散らしながら進んでいった。
「ちょっと派手すぎないか」
 楽しそうに暴れる雪国ベアをみて、樹月刀真がちょっと呆れたように言った。
「陽動ですから、あれでいいんですよ。好きにさせましょう」
 苦笑しながら、ソア・ウェンボリスが答える。
「刀真……、遊ばない」
 まるで踊るかのように縦横に灼骨のカーマインの銃弾を放ちながら、漆髪月夜が言った。
 海賊島についてすぐにココ・カンパーニュたちと別行動を取った彼女たちは、独自に内湾を目指していた。
 陽動となってココ・カンパーニュたちの方が手薄になればよし、よしんば逆になったとしても、それはそれで自分たちが先にアルディミアク・ミトゥナを救い出せれば目的は達成できる。
「分かっている」
 バスタードソードを構えると、樹月刀真は漆髪月夜のそばへと駆けていった。
「ソア、私たちもやっちゃおうよ」
 『空中庭園』ソラが、ソア・ウェンボリスの肩に手をかけてうながす。
「ええ。狂乱の炎よ、舞い踊れ!」(V)
 うなずくと、ソア・ウェンボリスが魔道書を広げた。禁じられた言葉を用いて、強化されたファイヤーストームを放つ。『空中庭園』ソラが、広がる炎に指向性を加えて前方へと押し出した。
 海賊たちを吹き飛ばすようにして、炎の渦が洞窟の奧の壁をも吹き飛ばした。
「ぐっ……、調子に乗りやがって。御主人、俺まで殺す気か!」(V)
 あわや巻き込まれそうになって、雪国ベアが叫んだ。
 ガラガラと崩れる壁のむこうから、光がさす。
「進むぞ」
 樹月刀真が、一同をうながした。