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蜘蛛の塔に潜む狂気

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蜘蛛の塔に潜む狂気
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【10・終わらない恐怖】

 雲の塔は、十三階の天井から上がすっかり壊れてしまった。
 そんな惨憺たる状況の塔ではあったが、それを皮肉るように雲は晴れて星が顔を覗かせていた。
 それを眺めているのは、翡翠、レイス、桂の三人。
「疲れましたね? でも、みんなボロボロですが、退治できたようで良かったですよ」
「すげ〜疲れた。まあ、良い物見れたから、良しとするかな」
「さてと、これで普通に使用できますね?」
「え? でもこれって修復に時間かかるんじゃない?」
「だろうな。まさかこのまま展望台として使うわけにもいかないだろ」
「そうですか? 俺はこうして星を見上げられて、十分に嬉しいですけど」
 このとき笑いあう三人が言ったように、
 雲の塔の再建にはしばし時間がかかることとなるのだが。
 その影響を与えたのが、唯一解き明かされなかった亡霊話であるのは、また別の話。

「おーっす。……いや、お前の声がちょっと聞きたくなってな」
 事件解決後、ラルクは砕音先生本人に電話をかけているようだった。
 そんな様子を眺めるのは、美羽とコハク。
 ふたりも砕音先生に連絡をしたかったようなのだが、今は恋人の彼に譲っておいた。
「それにしても、闇龍の影響がこんなところにまで及んでるなんてね」
「うん。僕たち……もっと、頑張っていかないと」
 そんな彼らの隣では、ウィングがうろうろと歩き回っていた。
「あの子、どこにいったんでしょうか。ちょっと目を離した隙に……」

 ウィングが捜し求める女生徒は、
 もう既に雲の塔から随分離れた場所を彷徨っていた。
「ああ……私は本当は、最初からあんな偽者は眼中になかったですよ? 私が信じているのは本当に本物の砕音先生だけ……。今も私を待ってるんですよね、先生……。安心してください。鏖殺寺院からも、バカな生徒どもも、邪魔するヤツは皆殺しにして、本当の先生を救い出してみせますから……え? あぁ……そうですよね先生。殺すのはやりすぎですよね……やっぱり先生は優しいです……それでこそ、私の愛する砕音先生……あはは……あははハははハははははハハハははハはははハはははハは!!!」
 彼女がこの先どこへ向かうのかも、やはり、別の話だった。


                                     終わり

担当マスターより

▼担当マスター

雪本 葉月

▼マスターコメント

 こんにちは、マスターの雪本葉月です。
 今回、一番怖いのは女生徒さんというオチでした。
 自分で書いたキャラながら、狂気に満ちていて軽く引いたくらいですよ。
 テーマは再び『想い』なのですが。
 以前のそれとは違い、執着や狂信といった若干毛色の異なる類のものです。
 想いの力は偉大でしょうけど、向かう方向を誤るととんでもないことになるのも事実。
 怖いものですね。