First Previous |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
12 |
13 |
14 |
15 |
16 |
Next Last
リアクション
SCENE 12
御神楽環菜とのデートに夢見心地の影野陽太だったが、突然、
「じゃあ、そろそろ時間だから」
と彼女から切り上げを宣言される。
「時間、ですか?」
ぐるりとスプラッシュヘブン内を巡って、確かに二人は最初の地点に戻ってきていた。だけど『そろそろ時間』という表現が気になる。だってまだ陽は高いのだ。
「環菜様はこの後ご用事でも?」
「ごめんね、その『用事』なの。今日はもう一件、デートの申し込みがあってね。ほら、彼が来たわ」
幸せで一杯だった陽太の心に、一抹の冷たい風が吹きつけた。
「環菜、待たせましたか? リクエスト通りビキニで来てくれたんですね」
引き締まった体に端整な顔立ち、その相手は樹月 刀真(きづき・とうま)だ。
「ま、刀真の頼みじゃ断れないしね」
彼女は、陽太と接するときよりもやや砕けた口調だ。
「じゃあ、そういうわけで」
またね、と陽太に手を振って、環菜は刀真の腕を取った。
「会長……」
ルミーナ・レバレッジが風祭隼人とのデートから戻り、環菜たちを追わんとするも、
「環菜の事は刀真に任せて、ルミーナも休むと良いよ」
すっと音もなく刀真のパートナー漆髪 月夜(うるしがみ・つくよ)が現れて、ルミーナの手を取るのである。
「いえ……わたくしの職務は……」
ルミーナは月夜と環菜、それに陽太も見比べて口ごもったが、結局は流れるプールに連れられていくのだった。
「まあ、環菜が気になるんなら、私と一緒に見張ればいいじゃない」
「なるほど、そういうことなら」
なお、月夜の水着は漆黒のビキニである。
一瞬、一行についていきそうになった陽太だが、頭を横に振って自らを制した。
(「ダメです。俺の出番はもう、終わったんですから……」)
でも、と手の中を見る。もうじき会長の誕生日なので、とプレゼント用に持参したルビーのペンダントを渡しそびれてしまった。それだけが心残りだ。
環菜は波の出るプールに到着していた。
「刀真、フロートを用意して頂戴」
到着するなりこれだが、彼女の人使いの荒さを刀真は熟知している。
「はいはい、膨らませますよ」
とソツなく設営する。ちなみに彼は日焼けが苦手なので、環菜とルミーナ、月夜が泳ぐのを眺めるだけなのだ。
それからしばらくして、また、
「少し水辺で休むわ。サンオイルでも塗ってもらおうかしら……」
何気なく呟いた環菜に先回りして、さっと刀真はシートを拡げたりしてとても甲斐甲斐しいのだ。かゆい所に手が届く、といったところだろうか。ある意味環菜以上に環菜を知る刀真なのだ。しかも、彼女をうつぶせに寝かせて、
「環菜、サンオイル塗りますんでビキニの紐を解いて下さい」
さりげなくこう切り出せるあたり、彼もなかなかのものであろう。さすがにこれは月夜に、
「刀真、台詞がストレート過ぎる」
と突っ込まれていたのではあるが。(結局オイルは月夜が塗った)
First Previous |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
12 |
13 |
14 |
15 |
16 |
Next Last