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ミッドナイトシャンバラ放送中

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リアクション

 
    ★    ★    ★
 
「ペンネーム、そうがくのとーまさんのおハガキです。
 俺の友人でマスクを被った変身ヒーローをやってる男がいるんですけど、
 一緒に温水プールに遊びに行ったときに悲鳴を上げている女性を助ける為にかけだしたその友人の海パンを誤って脱がせちゃったんです!
 その事に気付かずにいつものヒーローのノリで女性の前で名乗りと共にポーズを決めたその友人は当然すっぽんぽん…それ以来彼はヒーローを辞めてしまいマスクを被る事が無くなりました、
 もし傷心の友人が露出に目覚めてしまったらどうしようと心配でなりません!
 シャレード・ムーンさんどうすれば良いですか?助けて下さい
 あれ? さっきの手紙となんかシンクロしてますよね。偶然なのかなあ。
 そうですね、もし露出狂になってしまったら薔薇学に行って……、えっ? この話題もやめろですか。なんで?」
 ちょっと不思議そうに副調整室の方を、シャレード・ムーンは振りむいた。中では、電子兵機レコルダーが、なぜか大あわてで×印を出し続けている。
「どうも、ヒーローの品格を損なうような話は今日はNGのようですね」
 そう言ってから、一瞬、シャレード・ムーンがカフを下げる。
「それじゃ、番組にならないでしょ。バイト君たちはあまり内容に口を出さないように!」
 注意してから、何事もなかったかのようにすぐにカフを上げなおす。
「みんな、お友達では苦労している人が多いんですね。そういうお友達とはあまりつきあわない方がいいという考えもありますが、お友達はお友達だったりするから、仲良く乗りきってくださいね。友と友の力を合わせるということは、10+10で20なのではなく、10×10で100なのだあ!
 さて、次のお便りです。
 ペンネーム、あおがくのつきさん。
 私剣の花嫁なんですけど時々パートナーが私から光条兵器を取り出そうとするときに光条兵器じゃなくて胸を掴むんです、彼は間違ったと言っていますが度々掴まれるので故意にやっているのでは?と疑っています。
 シャレード・ムーンさんどうすれば良いですか?
 故意でしょう。そして、それは恋に違いありません。
 つかまれたら、つかみ返しましょう。
 お幸せにー」
 
    ★    ★    ★
 
「この素麺美味しいな……」
 わざとらしくそう口にして素麺を掻き込んだ樹月 刀真(きづき・とうま)は、チラリと漆髪 月夜(うるしがみ・つくよ)の方を盗み見た。思い切り目を細めてこちらを睨みつけている。
 こうやってあらためて見てみると、やや目尻の切れ上がった漆髪月夜はかなりの美人なのだが、それゆえに目を細めて睨みつけられると、それはそれでかなり怖い。
 その視線に樹月刀真は凍りついたとき、ちょうどあおがくのつきさんの投稿が読まれた。
「ぶふっ!!」
 思わず樹月刀真は、口に含んでいた素麺を盛大に噴き出した。どう考えても、今の投稿の内容は自分たちのことだ。だとしたら、書いたのは一人しか思いあたらない。
「何の事? 私このラジオ聞くの初めてだよ? ああ、牙竜、この素麺美味しいね♪」
 漆髪月夜があからさまにとぼける。
「いや、『あおがくのつき』とか内容的にもどう考えてもお前だろう……」
 答えはない。
「それよりもだ。そこのセクハラ男……」
 如月 佑也(きさらぎ・ゆうや)が、頭から素麺を垂らしながら樹月刀真に言った。
「なんだ、うらやましいのか?」
「うらやましい……、身体めあて……」
「違うだろ、貴様ら!」
 息もぴったりな二人に、如月佑也は樹月刀真に噴きかけられた素麺を投げ返して叫んだ。
 
    ★    ★    ★
 
 ペンネーム、蒼学の黒服さんです。
 俺の友人数人がフラグを建てまくってます、どうしたらいいでしょうか?
 シンプルですね。
 しかたありません。夏です。
 リア充は夏になると、Gのように海岸とかキャンプ場に湧いてくるんです。
 諦めましょう。
 それよりも、早くカウンター技の「実は俺も……」を身につけるしかありません。ただし、これは合体技なので……」
 
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「うめー、そーめん、うめー」
 橘 恭司(たちばな・きょうじ)は、わざとらしく素麺をがっついた。
 なんだか場の雰囲気がちょっとおかしい。
 アルマゲストでのんびりと夏の夜の慰労会のはずが、あちこちでぴりぴりとした空気が走り、盛大に素麺を噴き出している者もいれば、特定の誰かを睨みつけている女の子や、人が変わったように素麺をむさぼり食っている者もいる。まあ、かくいう自分も、素麺をむさぼり食っている者の一人なのではあるが。
 それにしても、このグループ内格差はどういうことなのだろう。
 不公平である。
 とりあえず何があってもいいように、後で武神牙竜に光学モザイクでも渡しておこう。何かあれば、不幸はまず奴に襲いかかるだろうから。
 
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「ラジオネーム、メカ好きメイドさんからです。
 人型機動兵器が海京で秘密裏に開発されていたそうですが、今後どのような機体が出てくると思いますか?
 武装について、手以外に、どんな場所に取り付く武装が出てきそうですか?
 個人的には、肩、腕、背、腰、脚辺りに付くと嬉しいのですが。
 また、量産化が進み、契約者達の手に広く出回るようになった場合、どのようなカスタム機が出てくるのを期待していますか?
 うーん、イコンって言うんでしたっけ?
 私、まだ見たことないんですよね。
 なんでもおっきいロボットだとか。
 人の形をしているんでしたら、手がありますからいろいろ持てるとは思うんですけどー。でも、そういうおっきな武器がないと、そもそも持てる持てない以前の問題ですよね。
 今、二種類でしたっけ? 天御柱学院から公式発表されているロボットさんって。
 練習用の物とか、試作機なんてあってもいいとは思うんですが、今のところそういうのってないみたいだって聞いているんですが、ほんとのところはどうなんでしょう。
 もしかして作ったんじゃなくて、拾い物だったりして?
 そうでなければ、実は、いろんな形の物が海京にしまってあるんですよ。そのうち、新型の開発に成功しましたとか言って、倉庫の奥から発掘して出てくるんですよきっと」
『それでは、腐海の底に転がっているガレージキットとか、変身ベルトを、ガラクタの山から発掘してくるようなものでございます。一般的ではございません』
 電子兵機レコルダーが、神代正義の部屋を思い出しながらインカムで突っ込んだ。
「えっ? 腐海の底に転がってるガレージキットを発掘してる訳じゃないって? ごもっともです。
 では、次のお便りです。
 ペンネーム、荒ぶる葱ペンチさんのおハガキ。
 拝啓
 降りしきる蝉の声に夏の盛りを感じる頃になりました
 シャレード・ムーン様に置かれましては、お変わりなくラジオ放送に精を出されているご様子
 毎度楽しくラジオ拝聴させて頂いてます
 御丁寧にどうも。
 そういえば、この間ニュースで聞いたんですけど、空京のオフィス街で急に夕立が降ったそうなんですよ。それも、ホースで水を撒いたようなピンポイントの土砂降り。
 驚いた人たちが見あげたら、ビルの壁にバラミタオオミンミンゼミが止まってたんですって。どうやら、イルミンスールの森から飛んできたらしくって。その後は結構な騒ぎになってましたよ。
 さて、この度お手紙させて頂いたのは最近私に対してまだ中学生なのにやれ実は年寄りだの
 変装の為に女性の衣装を着ただけなのに実は女性じゃないのかだの根も葉もない噂を頂戴する機会が多くなっており
 是非シャレード・ムーン様に現状を打破するいい知恵を貸して頂けないかと思った次第です
 それでは、暑さに負けずこれからも頑張って下さい。
 敬具
 そういえば、こんなおハガキも来ています。もしかして、荒ぶる葱ペンチの知ってる人なのかなあ。パラミタも案外狭いですものね。
 ペンネーム蒼学の文学少女さんです。
 こんばんは、シャレード・ムーンさん
 最近私のパートナーが以前にも増して年寄り臭く…じゃなくて、
 大人びてしまって困って居ます
 以前はまだ敬語や珈琲好きと言った程度だったのですが
 最近では手紙の文面までどこかの会社員染みた書き方になってしまっていて…
 このままでは1○才のパートナーの将来が心配です
 どうか一緒に考えて下さい
 うーん、若年寄ですか。私は、そういうのも悪くはないと思うんですが。
 ほーんと、パラミタでは年齢って分からないですよねー。
 じゃあ、ちぎのたくらみを使っているのだということにして……あっ、それじゃ本当の年寄りになってしまいますね。
 でも、パラミタには、大ババ様のようにロリババをステイタスにしている人もいますから気にしちゃいけないですよ。
 若いうちからしっかりしているなら、それはそれでいいじゃないですか。
 外見にしても、女の子に間違われるほどかわいいなら、いっそのこと魔女っ子ならぬ魔法男の娘にクラスチェンジするとか。かわいいと思いますよ、きっと」
 
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「ぶっはーーー!!」
 盛大に食べていた蕎麦を噴き出して、浅葱 翡翠(あさぎ・ひすい)がむせた。
「だから、そんなに大食いするとむせるって言ったのよ……」
 ハンカチを出して浅葱翡翠の口許をぬぐいながら、北条 円(ほうじょう・まどか)が言った。こらえきれないといった体で、クスクスと忍び笑いがもれている。
「どちらかといえば、こちらの方を拭いて欲しいんだが……」
 蕎麦だらけになった樹月刀真が、ぼそりと言う。
「翡翠……グッジョブ」
 漆髪月夜が、サムズアップして見せた。
 樹月刀真は先ほど如月佑也に素麺を吹きかけたのであるから、これはこれで因果応報である。