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【臨海学校! 夏合宿!!2020】漕ぎ出せ海の運動会!

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【臨海学校! 夏合宿!!2020】漕ぎ出せ海の運動会!
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〜*餌を探すところから勝負は始まっている!
  フィッシング大会!!(釣った魚は夕食に)〜




「さぁって!
 餌を探すところから勝負は始まっている!
 フィッシング大会!!(釣った魚は夕食に)
 か・い・さ・い・です!!!!

 魚の大きさ、何匹、何体つれたかでポイントを計算します。
 大きい魚一匹でも、最大の大きさなら得点も跳ね上がりますよーー!
 小さくても、沢山つれたらポイントは沢山!
 さ、皆さんがんばってください!」


 影野 陽太の高らかな宣言により、競技が開始された。
 

 とはいえ。


 釣りとは元来静かなもの。つりに支障をきたすような音量で実況中継するわけにも行かず、参加者はひたすら静かに餌がかかるの待つのみである。
 早速小船を使って沖合いに出たのは、姫宮 和希たちと小鳥遊 美羽、そして赤城 長門たち計3隻の船だった。
 姫宮 和希は自らが流木から切り出した巨大ルアーを海に勢いよく投げ入れると、小鳥遊 美羽も続き、そして赤城 長門は飛び込んだ。

「ええ!?」

 この行動にはおもわず岩場にいたメンバーが驚いてそちらを向いてしまったが、その赤城 長門が飛び込んだ直後に竿を支えているホーク・キティが景気よくパートナーを応援しているのを耳にすると、なんとなくだが状況を理解して、それぞれが自分の握る竿に集中しなおす。



「ふぁあ……」

 あくびがてら椰子の実をくくりつけたロープを放り投げたレロシャン・カプティアティは、第一のヒットを得た。その当たりも決して小さくはなく、ぼーっとしていた彼女自身が海に引きずり込まれそうになっていたのだ。

「危ない!」

 宇都宮 祥子がその身体を支えると、勢いに乗ってレロシャン・カプティアティは引き上げる。引き当てたのは、1メートルほどの巨大なアジによく似た魚だった。空中に引っ張りあげられ、岩場の上でびっちびっちと跳ね上がっている。
 一同が驚きの声を漏らしていると、人魚のエイリが『このあたりのお魚は、なるべく食べられるものを追い込んでありますから安心してくださいね』と付け加えた。

「なんかもう、これだけで満足かも……ふあぁ……」
「せ、せめて捕まえるところまではやらない?」

 苦笑を漏らしている宇都宮 祥子の竿もわずかに揺れていた。ヒットしたのだと確認すると、すぐさま自分の竿を握り締めた。コチラもかなり大きそうだ。勢いよく引き上げると、80センチほどのいわしを吊り上げることが出来た。

「よっし! 餌にするにはもってこいの魚ね!」
「え、食べないの?」
「そうよ、せっかくだからこいつを餌にもっと大物を狙うのよ」

 にっこり笑った宇都宮 祥子を見て、レロシャン・カプティアティはもう一度ロープに椰子の実をくくりつけ、放り投げた。彼女の中の何かに、火がついた……ようにみえた。
 テント設営を手伝っていた曖浜 瑠樹はそわそわしながらテントが立っている林のほうへ目をやる。

「りゅーき、どうしたのですか?」
「あ、いや……湯上のやつ、ちゃんと天幕用の葉っぱ巻けたかなって」
「そんな心配よりも、晩御飯の心配してくださいよー」

 マティエ・エニュールは可能な限り、彼女の目に見えて「大きめで元気そうな」みみずをえらんで釣り針にくくりつける。だが、チラッと見てさっとつけているだけなので、観察するのも辛いというのが傍目にも理解できた。曖浜 瑠樹はうーんと一つうなり声を上げると、手早く太いミミズを釣り針に取り付け、竿を振ってなるべく遠いところに放り込んだ。
 
「ああ、心配だ……今晩ちゃんと寝れるかなぁ」
「もー。そんなに心配なら、さっさと大物釣って見に行けばいいのですよ」

 ため息混じりにマティエ・エニュールが曖浜 瑠樹に向き直った瞬間、彼女の竿がぐん、と引っ張られた。とっさにマティエ・エニュールの身体ごと竿を掴むが、引きずり込まれないようかなりの大物らしく踏ん張るのが精一杯だった。

「これは……すげぇ!」
「い、いたいです……こんなの引っ張りあげられないですよー」
「ちょっとだけ我慢してください!」

 そう声をかけて割り込んできたのはロザリンド・セリナだった。ものすごく微弱な雷術を釣竿にかける。釣り糸をたどって、その一撃はどうやら獲物に命中したようでぷか、と浮いて来た。

「おお!」
「凄いです!」
「すみません、もし失格だったら、私一人にしてください」

 ロザリンド・セリナがそう宣言すると、エイリは首を横に振った。

『どの道、巨大な魔物が釣りあがったら皆さん攻撃はするでしょうし、攻撃は失格対象にいたしません。ただ、それを釣り上げたのはマティエさんになります』
「ありがとうございます。それで構いません」
「ええ! いいのですか?」
「はい、すいみません。差し出がましいまねをしてしまって……」
「いいや。むしろ助かった。そっちもなんかきつかったら呼んでくれ」

 曖浜 瑠樹は首を振って、にっこりと笑って返した。
 競技といっても、思いのほか……もともとが何を競うと明確に言われていないからか、助け合いながら釣りが進んでいった。飛鳥 桜のパートナーであるアルフ・グラディオスもヒットした。釣り上げたのは50センチほどの半透明の魚だった。

「やった! つれたぜ!」
「おっかしーなぁ……トマトでなんで釣れへんのや……」

 少年ヴァルキリーのアルフ・グラディオスは白い炎がプリントされたトランクス姿で、きゃっきゃ喜んで岩場を跳ね回っていた。だが、迷惑にならない程度の静かさで、だ。
 小さいトマトのプリントが入ったトランクス姿のロランアルト・カリエドは頬杖をつきながら釣竿の先を眺めていた。真っ赤なトマトに食いつく獲物は、いまだ表れないようだった。
 飛鳥 桜とジェミニ・レナードは参加者達につめたい飲み物を配り歩いていた。フィオナ・クロスフィールドが網を持って待機していると、彼女のところにも飛鳥 桜が飲み物を持ってきた。

「あれ、参加しないの?」
「うん、お手伝いかな。あっちはあっちで楽しんでるし……」
「私と一緒ね」

 くすくす、とフィオナ・クロスフィールドと飛鳥 桜が笑いあっていると、隣に腰掛けていたエステル・ブラッドリーにヒットした様子だった。

「うーん、あんまり大きくないかも」
「とりあえず引いてみなよ」

 アンドリュー・カーの言葉に、エステル・ブラッドリーは思いっきり釣竿を引き上げる。すると、そこにかかっていたのは大きなえびだった。

「わあ! 伊勢えび? ロブスター?」
「これは、甘エビかな……すっごく大きいけど……」

 驚きのあまり目を丸くしているアンドリュー・カーにもヒットし、彼が釣り上げたのは巨大なブラックタイガーだった。

「えびばっかりね」
「このルアーにはえびが食らいつくみたいだね」

 仲良くならんで笑いあう二人を、フィオナ・クロスフィールドは少し遠い眼差しで眺めてしまった。そこへ、とことこと歩いてきたのはジャッカロープという兎に角が生えた生き物だ。ディオネア・マスキプラ(でぃおねあ・ますきぷら)は相変わらずの獣形態でフィオナ・クロスフィールドに四葉のクローバーを差し出した。

「え、あの……」
「なんだか元気がなさそうだから、あげるね☆」

 それだけいうと、パートナーの霧島 春美(きりしま・はるみ)の元へと駆けて行った。フィオナ・クロスフィールドはそれを見つめて、アンドリュー・カーの隣に腰を下ろした。

「沢山釣って、みんなでバーベキューしましょうね。アンドリューさん。エステル」

 にっこりと笑った彼女に、二人は同じ微笑を返してくれた。

「もう、ディオったらどこにいってたのよー」

 霧島 春美はディオネア・マスキプラから分けてもらった天然の毛を使った毛ばりで、既にバケツいっぱいに釣り上げていた。
 といっても、実際には大きすぎるいわしや、ししゃもがキュウキュウに入れられていた。

「春美ー、こんなのいたのー♪」

 といって、手のひら大の蟹やアメフラシを自分用の小さなバケツに入れたものを自慢して見せた。しょうがないなあ、という感じで笑いかける霧島 春美は用意してある彼女陽の竿を手渡す。

「ほら、ワトソン君も一緒に。つりはね、事件の調査といっしょよ。ポイントさえ間違えなければ、結果はついてくる」
「ねーね、クローバーつけたらつれると思うんだー」

 海に来るのがうれしくてたまらないのか、ディオネア・マスキプラはきゃわきゃわっと四葉のクローバーの束を、見せて自慢すると、釣り針にくくりつけようとする。苦笑しながら、霧島 春美は貸してみて? と声をかける。

「……どうせなら、こう着けたら?」
「わぁ! かにさんがクローバーの傘さしてるみたいだね!」
 
 霧島 春美は手際よくうきのところにクローバーをくくりつけ、釣り針に先ほど彼女が見つけた蟹をそのまま引っ掛けた。

「これで、クローバーが沈んだら思いっきり引っ張るのよ?」
「うん。春美のみたいになったら引っ張るんだね?」
「そうそう……って、ええ! 大きいかも!!」
「じゃ、ボクも春美のところに投げるねー」
「ちょ、ディオ! 違うの、そこにじゃなくって!」
「わあ! ボクのも引っ張られてるよー! おっさかなおっさかなでっておいでー♪」

 つりをよく知らないディオネア・マスキプラは思うがままに釣竿を振り回し、恐らくは霧島 春美と同じ獲物に引っかかったようだった。

「……ええい! 一気に引くよ、ディオ!」
「うん!」
「「せーっの!!」」

 勢いよく二人がかりで引き上げると、青空を舞ったのは巨大な鮭だった。優に4メートルは行きそうなその大きな姿は、思わずため息を漏らしてしまうほど美しかった。


 そんな賑やかなつり大会が行われている端のほうで、雨月 晴人は釣竿をおろしながら、視線だけ隣のパートナーに送っていた。髪の色と同じ真っ赤なビキニ姿のアンジェラ・クラウディは青い瞳を同じ青さを持つ海に向けて楽しげに鼻歌まで歌っていた。
 強化人間である彼女が今の彼女になった経緯が、ふと頭をよぎったのだ。

 強化人間とは、パラミタ大陸にきても契約者たる資格を得られなかった人々が、強制的にパラミタ人になるための手術を受けた人たちだ。
 その手術は決して容易なものではなく、アンジェラ・クラウディにいたっては全ての記憶をなくしてしまっている。

「……ハルト、あたしのかお、何かついてる?」 
「あー……目と鼻と口」
「へんなハルトー」

 適当な言葉で誤魔化した雨月 晴人だったが、自分の口から出た言葉で気づかされた。

 たとえ、辛い手術を受けて今があったとしても、そのために全てを失ったとしても、彼女は自分と同じに生きている。
 自分に夢があって、やりたいことがあるのと同じように、彼女はそのために自分の全てを投げ出した。
 こうして契約できた今、自分に出来ることは……アンジェラ・クラウディの夢を、やりたいことを、支えてやることだと心底思った。

 ふとまた彼女と目があって、気恥ずかしさから視線をはずすと、大声で怒鳴られた。

「ハルト!! さっきから引いてるよっ!!」
「えええ!!!」

 気がつけば、確かに竿は大きく海に引っ張られている。アンジェラ・クラウディも手伝って二人で引き上げるが、飛び出してきたのは鋭い牙を持った巨大な鮫だった。運悪く武器を手放していた雨月 晴人はアンジェラ・クラウディを護ろうととっさに前に出た。

「大丈夫ですか!?」

 飛鳥 桜がその背にしている刀【霊剣千桜華】で鮫をみねうちで叩き落す。運よく岩場に引っかかると、雨月 晴人はすぐにその巨大鮫を引き上げる。

「よかった。まにあって」
「あ、ありがとう」
「えへへ。気にしないで。ボクが勝手にやっただけだし」
「ハルト、怪我ない?」
「あ、アンジェラは?」

 こくん、と頷いたのを確認して、思わずその頭をなでていた。その後ろで、だらしなく口を開いたままの獰猛な鮫はぐったりとしていた。

「グリちゃーん、これもとってー」

 秋月 葵は幾度目になるかわからないお願いを、全く同じ調子でパートナーのイングリット・ローゼンベルグに申し出る。白虎の獣人は、さすがに深いため息を隠すことなく吐き出すと、釣竿の先に着いた30センチもある大型しらすを針からはずし、バケツに放り込む。今投げたバケツの中は、その巨大しらすで満タンになっている。しかもこれで3つ目だ。

「お、おかしいにゃ……なぜに餌がついてないのに釣れるにゃん……?」
「わー、どんどん釣れるねー! 釣りってたのしーかもー」

 すっかりご機嫌の秋月 葵は満面の笑みでさらに釣り針を放り投げる。餌がついていないにもかかわらず、次に竿を上げるときにはまた魚が引っかかっているのだ。何らかの魔法か、彼女が天性の才能を持っているとしか思えない。

「でも、これくらい自分ではずしてほしいにゃん」
「グリちゃんー」
「わかったにゃーっ!!」

 イングリット・ローゼンベルグはきーっと甲高い悲鳴を上げながら、幾度目になるかわからないお願いを聞き入れて、巨大しらすを釣竿からはずしていた。

 芦原 郁乃はロザリンド・セリナたちと隣に腰掛けて、パラミタミツバチの子を十束 千種につけてもらいながら釣竿をおろしていた。

「ロザリンド、凄い量釣れてるわね」
「そうですか? でもサイズは小さいので……本当に晩御飯向けにしかつれてない感じです」

 少し残念そうに呟くロザリンド・セリナの横で、メリッサ・マルシアーノは糸だけで同じく何匹も釣り上げていく。その種類は多種多様で、普通に魚屋さんを開けるくらいの量が集まっていた。ご機嫌なのか、ふわふわの毛並みの尻尾をゆらゆらと揺らしている。そのかわいらしさに、十束 千種は癒され頬を染める。

「か、わ、い、い……」
「千種ー、こんなんじゃ沖釣りにいけないよ……」
「まぁ、とりあえずはここで粘ってみましょう。ロザリンドさんが釣れてるんだし、ポイントとしては間違ってないんだと思うの……あら?」

 言った先から、十束 千種の竿が当たったようだった。なかなか引きが強く、芦原 郁乃も自分の竿を投げてパートナーの竿をしっかりと握る。ロザリンド・セリナも先ほどのように雷術を放つが今回は効果がなさそうだった。

「ど、どういうことでしょうか?」
「お姉ちゃん、とにかく私たちも引っ張ろう!」

 メリッサ・マルシアーノの言葉に頷いて、十束 千種の身体ごと思いっきり竿を引っ張った。 
 つりあがったのは、1メートルほどのなまずのような見た目の魚だった。

「も、もしかして……デンキナマズでしょうか?」

 ロザリンド・セリナが呟くとそれを証明するかのように、なまずはびり、びり、と音と光を出して自己紹介しているようだった。

「た、たべられるのかな? これ……」

 芦原 郁乃の言葉に、その場にいたメンバーは固唾を飲み込んでいた。




 沖合いの小船はというと、大型を吊り上げることにだけ意識を燃やしているからか、小魚(3m以内)は全て海に返されるか、次の獲物のための餌にされていた。
 水中でひたすら餌の役割をしている赤城 長門は食らいつこうとする小魚(3m以内)を全てはじいていたのだが、一匹だけどうしても離れてくれないのに絡まれてしまった。自慢のドレッドヘアーが彼も気に入っているのか、すっかり住み着く勢いだ。
 しばらくなすがままにされていたら、その頭の彼の親御さんが現れ、これは大物だと赤城 長門は釣り糸を引っ張った。

「おお!!? ちょちょちょう! イイカンジ!」

 チアダンスを踊りだしながら、ホーク・キティは思いっきりひっぱりあげた。
 そこにいたのは、下半身を巨大なたこに食われかかっている赤城 長門の姿だった。タコの大きさは足の長さを含めると10メートルは軽く越えていた。

「これがマーマンじゃけええ!!」
「おー! 超オーものっ!!」

 興奮した様子のホーク・キティはそのタコを自慢の格闘技で空高く蹴り上げると、積んであったロープでぐるぐる巻きにする(赤城 長門ごと)。タコはその一撃だけで息を引き取ったらしく、小船の脇に盛大な音を立てて落ちた(赤城 長門ごと)。

「あの巨大オクトパスはキティのネ!」

 目をきらきらさせたホーク・キティはそれだけで満足したのか、ロープを引きながら岩場へと戻っていった(赤城 長門はいまだ食われたまま)。

「……し、死なねぇといいんだが」
「それよりも、コチラもそろそろかかりそうだな?」

 姫宮 和希は海に目を凝らす。先ほどから、巨大な影がうろうろしているのはわかっているんだが、なかなかルアーに食いつかない。精巧に作られたルアーだが大きすぎて、ニセモノだとわかってしまっているのだろうか。

「よーっし! 私も負けないんだからー!!」

 小鳥遊 美羽の言葉に呼応するように、姫宮 和希も竿を握る手に力を込めた。あの巨大な影が食らいつきさえすれば、優勝は目に見えている。そう確信していた。

「うそ!」

 短い悲鳴が上がったのは、そのときだった。
 小鳥遊 美羽が捕まえてきたパラミタイノシシが、半分に食われていたのだ。それは、海の上からでもよく見えた。

「全然引いてる気配なかったのに」
「完全に噛みつかれてら……こりゃ……相当でけぇな」

 姫宮 和希は背中に冷や汗をかきながら、口元はうれしそうにゆがんでいた。ガイウス・バーンハートは微弱な雷術を放ち、その大きな獲物を釣竿の先に誘導する。巨大な影が、3人に目視できる程度になると、姫宮 和希と小鳥遊 美羽の釣竿が、勢いよく引っ張られた。その勢いに飲まれることなく、二人は懸命に踏ん張るが、明らかに力が強過ぎる。

「二人とも、感電に注意されよ!」

 ドラゴニュートは呪文の詠唱を開始すると、すぐさま右手を天に掲げた。その手に雷の力が集まると、それを海中に叩きつける。岩場で釣りをしていたものたちもそれを確認すると被害が少ないところへと移動した。


 どがああああああああんっ


 雷撃が津波をつくり、浮かんできたのは巨大なくらげだった。この海を守る守り神の子供であるというのは資料で知っていたから、巨大くらげを目にして、3人は驚きの声を上げた。

「わ、わ、ゴメン!」
「大丈夫!?」
「い、今治療を!」

 3人が大慌てでくらげに寄ろうと船を漕ぎ出すと、エイリがすぐに駆けつけてきた。くらげをそっとなでると、くらげ自身はまるで何事もなかったようにふわふわと泳ぎ始めた。まるで、はしゃいでいるかのようにも見えた。

『ふふふ。そう。この人たちね。わかったわ』
「え、あの……エイリさん?」
『あなた方が、この子を捕まえた、ということでポイントを差し上げます』
「な、いいのか?」
『この子がそういっているんです。だから、受け取ってください』

 その言葉に、岩場からも拍手が沸き起こる。静寂に包まれていた先ほどまでの釣り場が本当に嘘のようだった。だが、終了の合図はまだならない。

「間もなく海中玉入れの競技を行いますので参加者の皆さんは海岸までお越しくださいー!」