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●第5章 あさぱに! イルミンの巻(峰谷 恵 編)

 朝、エーファ・フトゥヌシエル(えーふぁ・ふとぅぬしえる)が起きた時には、彼女は『彼』になっていた。おまけに『ござる』だった、口調が。
 飛び起きて、峰谷 恵(みねたに・けい)の部屋に飛び込むと、やおら、恵のシャツを引っぺがした。
「な、な…何故!? 胸があるでござる! 男になってないのでござるか!」
「へ? 生物学上は微妙ですが、お役所の書類では女の子ですよ? …わきゃぁ☆」
 エーファに押し倒され、恵をベッドに倒れこむ。
 そして、スカートを捲り上げ、パンティーに手をかけると……

 エーファは絶望した。

 大切なことだから、もう一度言おう。

 エーファは絶望した。

 ついでに、グライス著 始まりの一を克す試行(ぐらいすちょ・あんちでみうるごすとらいある)が、やさぐれて恵に襲い掛かってるエーファに横から不意打ちサイコキネシス(禁じられた言葉付き)をぶち当てて静かにさせたことも、落ち込みの原因だった。
「元の体でも胸で大幅に負けて、男性になってもこっちの大きさで負けるんですか、私は!」
「大きくてイイことなんか、あんまりありませんよ〜?」
「イイに決まってるじゃないですか! なにが小さい男の人たちに対する侮辱です。あなたは世間様を敵に回しています! 自覚しましょうよ」
 表だって言えないことで、侮辱もなにもあったものではない。
 恵は笑うだけだった。
「こうなればいっそ、ケイも私と同じ目に!!」
「被害を拡大させるな。そもそも原因となった物を持ち合わせていないだろう。何より、この場へ誰かに踏み込まれたらどう釈明する?」
 グライスは言った。
「どうやら、外も騒がしい…同じように性別が入れ替わった者がいるらしい」
「っていうことは、犯人がいるってことでござるな…あぁ、もう! この口調が一番腹が立つでござる!」
 エーファは怒って言った。
「とりあえず、犯人を見つけるでござるよ!」
 その言葉に皆は頷いた。