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リアクション
●ここにはいない相棒へ
自室のベッドに寝転んで、腕を伸ばして携帯電話を眺める。
悩んで悩んで、匿名 某(とくな・なにがし)は送信アイコンに指をかけた。
送る前に、もう一度読んでみる。
「よう。そっちの調子はどうだ? といっても、時間止まってるから関係ないか(笑)
お前と最後に会ってから結構経ったけど、俺はあの時思ったことはよく覚えてる。
お前の行動を他人がどう受け止めるかは知らない。だが、俺はお前の行動は間違ってないものだと思ってる。だからこそ止めなかったんだしな。
むしろ俺から見たらお前はよくやった。やりすぎたぐらいだ。少なくとも、口にした事を未だに何もできてない、口先だけの俺よりはずっと……。
正直、俺はお前のそういうところが羨ましかった。そういう、意地でもやり通そうとする力と前向きな想いが俺にももう少しあればって思うことは多々あった。
けど、今いない人間にそれを求めてもしょうがないことだよな。だからさ、俺は俺の力で変わっていくことにするよ。
なにせ世間じゃシャンバラが東西に別れて、さらにエリュシオンなんて奴らも関わってきてて大混乱だ。その中で俺のやりたいことを成すには、そりゃもう変わるしかないだろ?
変わって、世界と向き合って、ゴタゴタを終わらせたら必ず迎えに行く。それまでゆっくり休んでろよ。
またな……相棒」
「所在は、『携帯電話なんか絶対に通じない場所』……か」
指を止めたまま、呟く。
ここにはいない相棒――アレナという少女を護衛することを選び、太陽の光が届かない世界に残った大谷地 康之(おおやち・やすゆき)のことを考えた。たまたま彼のことを考えたんじゃない。携帯を新しくしたときから、いや、本当のことを言えば康之が最後の選択をしたときから、ずっと書きたいと思っていたメールだ。
親指に力を込める。
しかし某が弾いたのは、『送信』ではなく『削除』のアイコンだった。
送るのはやめた。康之のアドレスはまだ生きている。もしかしたら……と思わないでもない。
だけど、
「こんなこと文面でも言えるわけないだろ……普通に」
某は自嘲気味に呟いた。動いた拍子に前髪が目にかかったが、払いのけることはしなかった。
迎えに行くと宣言することが先じゃいけない。行動することが、実際に迎えに行くのが先だ。
待ってろよ、という言葉が某の唇から洩れた。
待ってろ……そう繰り返した。
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