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【リレー企画】客寄せパンダは誰が胸に その3

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【リレー企画】客寄せパンダは誰が胸に その3

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「おお、こんな所にいたか、土方。敵は動けぬようだ。突っ込むぞ!」
 土方 歳三(ひじかた・としぞう)の姿を見つけた近藤 勇(こんどう・いさみ)が叫んだ。
「近藤さん、無事だったか。いつぞや魅了された恨み、一緒に晴らそうぜ」
 刀を抜いた土方歳三が答える。
 二人は、揃って倒れている客寄せパンダ様に斬りつけた。他にも、土方歳三がよく知っている人影とかが客寄せパンダ様によじ登っていった。
「パパパパパパパ!!」
 いかにもウザイと言いたげに、客寄せパンダ様が咆哮をあげた。
 刀など一切寄せつけない剛毛に得物を弾かれた新撰組の二人が、腹筋を使ってぴょこんと一気に立ちあがった客寄せパンダ様の衝撃に吹っ飛ばされる。同様に、客寄せパンダ様にとりついて攻撃していた椎堂紗月と鬼崎朔や、一生懸命くすぐっていた大久保泰輔も思いっきり遠くへと弾き飛ばされた。
「二人とも、無茶はほどほどにしろ」
 軍用バイクに乗ったマイト・レストレイドが、もんどり打って落ちてきた新撰組の二人に走り寄ってヒールをかけた。他の者たちも、パートナーたちが回収に走る。
「ううむ、やはり刀一本では傷もつけられんか。果敢にも、敵によじ登っていった者がいたようだが、あれは何番隊の者だ?」
 痛む身体をさすりながら、近藤勇が歩み去っていく客寄せパンダ様を見あげて言った。
「気にするな近藤さん、俺と契約をしているイルミンスール魔法学校所属の不審な女学生の姿が見えた気がするかもしれんが、おそらく気のせいだぜ」
 刀の切り傷に石田散薬を塗り込めば、客寄せパンダ様も正気に返るのではと思っていた土方歳三ではあったが、肝心の刀が通らないのでは話にならない。
 
    ★    ★    ★
 
「攻撃は逆効果だというのに……。しかたない」
 小型飛空艇に乗ってアルディミアク・ミトゥナたちに先行したレン・オズワルドが、客寄せパンダ様の近くに行って叫んだ。
「おい。攻撃をやめ……」
「ほーっほほほほほほ、行け、ジャイアントパンダ! すべての者を蹴散らして進むのよ!」
 客寄せパンダ様の背に乗っかった日堂 真宵(にちどう・まよい)が、ザンスカールの方を指さして叫んだ。
「パ゛」
 別に日堂真宵の命令を聞いているわけではないのだが、肩に乗っかったゴミ程度にしか思っていない客寄せパンダ様が、たまさかザンスカールへとむけて歩きだす。
「ほほほほほほほ、これは天罰なのよ。いつもいつも、このわたくしをコケにして。何がカレーよ、何が胃薬よ! すべて壊してやるわ」
 絶好調でお嬢様高笑いをあげながら、日堂真宵が勝ち誇った。
「まったく、何をやってるんだ。こっちの言葉も聞け!」
 あわや踏みつぶされそうになったレン・オズワルドが、あわてて回避しながら叫んだ。
「言葉での説得は無理だ。パンダも真宵もな!」
 それを見て、土方歳三が絶望の声をあげた。
 
    ★    ★    ★
 
「ううむ、私はどうしたらいいのでしょう」
 自らの拳の頼りなさに、ルイ・フリード(るい・ふりーど)は歯がみしていた。これまでの経緯を見れば、いかな彼でも客寄せパンダ様には太刀打ちできないだろう。
「ふふふふふ……、お困りのようね、ルイ」
 そんなルイ・フリードの前に、シュリュズベリィ著・セラエノ断章(しゅりゅずべりぃちょ・せらえのだんしょう)が姿を現した。
「なぜ、ここに……」
「それは気にしない」
 まさか、ルイ・フリードが客寄せパンダ様に魅了されていた姿をじっと陰から楽しんでいただなんて言えない。
「そんな困っているルイに、セラからの秘密道具を授けよう! パンパカパーン! どんな相手でもこれを飲めば即撃退できる、名づけて……マッスルパゥワーZ! さあ、これを飲んでパンダ像に行くがよい! 後、攻撃するときはルイパーンチと台詞を言ってから攻撃するんだよ」
 そう言って、シュリュズベリィ著・セラエノ断章が、特製ボトルに入ったただの緑茶を差し出した。
「私のためにそこまで……。かたじけない。マッスルパゥワーZ、いただきます!!」(V)
 言うなり、ルイ・フリードがシュリュズベリィ著・セラエノ断章の差し出した緑茶をぐいとあおった。
「なんだかお茶に味が似てますね……しかし、力が湧いてきた気がします! よし、パンダ像を止めてきまぁぁぁぁぁす!!」
 ルイ・フリードが、雄叫びと共に客寄せパンダ様に突進していった。プラシーボ効果さまさまである。
「パンダ像さん! 止まってくださいーー! 迷惑をかけてすみませんでしたパアァァンチィ!」
 満を持して、ルイ・フリードが思いの丈を込めたパンチを客寄せパンダ様に浴びせた。
 そして、跳ね返された。
 客寄せパンダ様が立ち止まる。
「止まってくれたのですか……」
 ルイ・フリードが、満面の笑みを浮かべ……そして蹴り飛ばされた。
「なむなむなむ……」
 シュリュズベリィ著・セラエノ断章が、お星様になっていくルイ・フリードに祈りを捧げる。
 
    ★    ★    ★
 
「パンダの足が止まったアル。今アルよ。レキ、行けえ!!」
 客寄せパンダ様に近づいていたチムチム・リー(ちむちむ・りー)が叫んだ。レキ・フォートアウフ(れき・ふぉーとあうふ)の足をつかんで、ジャイアントスイングの体勢に持っていくと、勢いよくその身体を放り投げる。
「うふうふ、うふふふふふふふ。もふもふよ、もふもふだよー」
 空中を吹っ飛びながら、レキ・フォートアウフはこれから訪れる至福のときを思って恍惚とした。もふもふのパンダ毛皮の手触り。巨大パンダともなれば、それの感触は極上だろう。
「もふもふ〜!」
 じょりっ!
「いったぁー」(V)
 もふもふを堪能するはずだったレキ・フォートアウフが悲鳴をあげた。もともと、パンダの毛は見た目ではふわふわのもこもこであるが、その実は剛毛である。レキ・フォートアウフはそれを知らなかったらしい。
 ほとんど客寄せパンダ様の毛に突き刺されるに近い形になったレキ・フォートアウフが、痛がりながらその足から振り落とされた。
「ああ、どうしたアル!?」
 状況がよく呑み込めないまま、チムチム・リーはあわてて落ちてきたレキ・フォートアウフをキャッチした。
 
    ★    ★    ★
 
「みんな、戦っちゃだめです! パンダ様は平和を望んでいるんです!」
 激化する一方の戦いに、ソア・ウェンボリス(そあ・うぇんぼりす)が必死に訴えかけた。
「あぶねえ、御主人」
 戦いを止めようとしているソア・ウェンボリスを、客寄せパンダ様が踏みつぶそうとする。とっさに、駆けつけた雪国 ベア(ゆきぐに・べあ)が、ソア・ウェンボリスをかかえるようにしてその場から逃げだした。
「戦いを回避しようとしたって無駄だよ。もうこうなったら、私たちの必殺最終奥義で倒すしかないんだもん。頼んだよ、芽美ちゃん!」
 パワーブレスのサポートを受けて可能な限りの加速で走る月美 芽美(つきみ・めいみ)にかかえられた霧雨 透乃(きりさめ・とうの)が叫んだ。
「いっくよー、泰宏君!」
 名前を呼ばれた月美芽美が、思いっきり霧雨透乃を霧雨 泰宏(きりさめ・やすひろ)にむかって投げつけた。空中で身を丸めた霧雨透乃が、まるで巨大なソフトボールのように霧雨泰宏にむかって飛んでいく。
「ええい、ままよ。いっけー!!」
 飛んできた霧雨透乃を、ランスバレストの巨大盾ですくい取るように受けとめた霧雨泰宏が、大きく身体を回転させながらさらに加速させて霧雨透乃を客寄せパンダ様にむかって打ち飛ばした。同時に、素早くファイアプロテクトを霧雨透乃にかける。
「行っくよー!(痛たたたたたた……)」(V)
 打ち出されるときに盾を蹴ってさらに加速しながら、軽身功で飛距離を伸ばしつつ、霧雨透乃は宙をぶっ飛んでいった。
「熱血です! 透乃ちゃん!!」
 緋柱 陽子(ひばしら・ようこ)が、紅の魔眼を開放し、霧雨透乃の身体の周りをファイアストームでつつみ込んだ。
 炎の嵐の中を通り抜けた霧雨透乃が、全身火だるまになる。
「ようし、行くよー、やっちゃうよー!!(あちちちちっ……)」(V)
 霧雨泰宏にかけてもらったファイアプロテクトと自身の心頭滅却でかろうじて炎に耐えながら、霧雨透乃は客寄せパンダ様に突っ込んでいった。みごとに客寄せパンダ様の腹に命中し、一気に盛夏の骨気を纏わせた拳を叩き込み……へこんだ客寄せパンダ様のお腹が元に戻る反動であっけなくボーンっと弾き飛ばされた。
「おっと、透乃ちゃんったら、お茶目なやられ方だわ」
 しっかりと霧雨透乃のやられパターンを撮影しながら、月美芽美が言った。
 霧雨透乃が、丸焦げになったチューブトップとミニスカートの灰を撒き散らしながらすっ飛んでいく。
 当然こうなることを予測していた霧雨泰宏が下で待ち構えていて、落ちてきた霧雨透乃を受けとめた。
「うわっ、ちょっとこれは……」
 受けとめたはいいが、服が燃えてほとんどすっぽんぽんな霧雨透乃をだきかかえたまま霧雨泰宏があわてた。
「何してるんです、早く予備の服に着替えさせないと!」
 霧雨透乃が事前に用意しておいた服を持ってくると、緋柱陽子が霧雨泰宏から彼女をひったくるようにして着替えさせた。
「大丈夫ですかあ」
 霧雨透乃が撃退されるのを見て、ネージュ・フロゥ(ねーじゅ・ふろう)が駆け寄ってきた。さすがに、あれだけ派手な攻撃をすれば、嫌でも他の者の目につく。
「凄く焦げてるんだもん」
 ちょっと驚きながらも、ネージュ・フロゥがヒールで霧雨透乃を応急手当していった。そこへ、客寄せパンダ様がズンズンと近づいてくる。
「はははは、すべて踏みつぶしておしまい!」
 肩の上で、日堂真宵が叫んでいた。
「きゃあ、ここじゃ潰されちゃうよー」
「とりあえず、離れようよ」
 悲鳴をあげるネージュ・フロゥに、月美芽美が言った。
「そうだな」
 再び霧雨透乃を受け取ってお姫様だっこすると、霧雨泰宏はその場から走りだした。ネージュ・フロゥたちも、バタバタと後に続いて撤退していく。