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【リレー企画】客寄せパンダは誰が胸に その3

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【リレー企画】客寄せパンダは誰が胸に その3

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    ★    ★    ★
 
「みなさん、やはり、歌と踊り、そして祈りが有効のようです! 鎮めを!」
 佐々木弥十郎たちと共になんとか立ちあがったアルディミアク・ミトゥナが、彼女と一緒に客寄せパンダ様のそばへと駆けつけた者たちにむかって叫んだ。
「任せてください。変身! 魔法少女ストレイ☆ソア」
 ソア・ウェンボリスが、両手を高く突きあげて叫んだ。合わせた手を開いて作った花の形が彼女の頭上で大輪のピンクの花となって開く。その花がゆっくりと下に降りてくると、ソア・ウェンボリスの素肌をふわりとつつみ込んで白とピンクの魔法少女の衣装に変化した。頭と胸には大きなリボン、ジレの上にハーフジャケットを羽織り、重ねたミニスカートに、白いストッキング、ピンクのブーツという姿だ。
「あたしだって負けてないんだもん! いくよ、マカロンちゃん。変身だよ」
 秋月 葵(あきづき・あおい)が言うと、マスコットのマカロンがキュッと鳴いた。
「変身!」
 元気いっぱいのかけ声と共に、秋月葵が大きくジャンプした。空中に集まってくる光の中で伸身の後転をする。逆光の中、胸と腰の所で光が弾けた。白とブルーのミニスカートと、マイクロベストが秋月葵の素肌をつつむ。流れるように左右に広がった髪を、青いリボンがしゅるんと結んでいった。
「突撃魔法少女リリカルあおい、来ちゃったんだもん♪」
 しゅたっと綺麗に着地した秋月葵が、おきまりのポーズをとった。その前で、ぴょんとマカロンが飛び跳ねる。
「マジカルステージ♪ オープン♪」
 ソア・ウェンボリスが、マジカルステッキを高く掲げて叫んだ。彼女の足許から、大地に大きな花が広がっていく。その花の模様そのままに、円形のステージが現れた。
「リリカルソング♪ ららら〜♪ パンダ様〜ごめんなさい〜♪ 怒りを〜静めてください〜♪」
 ソア・ウェンボリスが歌いだした。
「私の歌も聞いて〜♪」
 負けじと、秋月葵も歌いだす。
「涙よりも優しい歌を、悲しみよりも温もりを……」
 ノア・セイブレムも、大地を震わせながらゆっくりと迫ってくる客寄せパンダ様にむかって両手を差しのばしながら歌を歌った。
「パンダさん、聞いてください。これが私の歌ですぅ。ら〜らる〜る♪」(V)
 ステージに駆けつけてきた咲夜由宇も、歌い手に加わった。
「それじゃだめ、バラバラに歌ったのでは……」
 それぞれが勝手に別の歌を歌いだすのを聞いて、アルディミアク・ミトゥナが叫んだ。
「こば〜♪ こ〜ば〜、こ〜ここば〜♪」
 突然、小さいけれどはっきりした歌声が、バラバラの歌の中に割り込んできた。
「えっ? 小ババ様?」
 ソア・ウェンボリスが驚いて振り返った。
「こっ〜ば〜♪ こばばこばばこば〜ば♪」
 カレン・クレスティアにだかれた小ババ様が、ゆっくりと客寄せパンダ様の前に進み出る。
 けれども、客寄せパンダ様の歩みは緩まない。
「こ〜ば〜♪」
 なおも歌い続ける小ババ様の澄んだ歌声に、別の歌声が重なった。一つ、そして、また一つ。いつしか、五人の歌姫の歌が一つに合わさり、一つの旋律を作りだしていた。
「頑張れ、小ババ様」
 神代明日香が、声援を送る。
 客寄せパンダ様の歩みがわずかに緩やかになった。地響きが、かなり静かになる。
「歌は届いています。踊りと、そして祈りを」
 魯粛子敬が、すっと兎歩の歩法で舞いを踊った。
「いい舞いです」(V)
 同じようにして、空京稲荷狐樹廊が扇子を返して踊る。
「古来から、神に捧げられる歌や踊りは、神々の不興や無聊を慰めるためのもの。今、パンダ様はお怒りになっている。みんな、自分たちの思いのたけ、祈りのたけを、ダンスに込めて踊るんだ!」
 トマス・ファーニナル(とます・ふぁーになる)が大声で呼びかけた。
「ううっ、みんなで踊れば恥ずかしくはない、恥ずかしくはない……」
 呪文のように繰り返しながら、テノーリオ・メイベア(てのーりお・めいべあ)がトマス・ファーニナルに続く。
「うーん、ここで巫女さんの団体がほしいところだけれど……。とにかく、みんな、踊るのよ。パンダ様の怒りを鎮めるの」
 ミカエラ・ウォーレンシュタット(みかえら・うぉーれんしゅたっと)が、周囲にいる者たちの手をとって、どんどん踊りの輪に引き入れていった。
「さあ、あなたも」
 そばでソア・ウェンボリスを見守っていた雪国ベアも引っぱる。
「よし、踊るぜ、ディカップパンダ共。見てろよ、俺様の大活躍」(V)
 雪国ベアが、ペットたちに言って踊り始めた。
 だんだんと、その場はパンダ祭り、パンダ盆踊りのような雰囲気になっていった。ここで戦いが行われていたのが嘘のような陽気さだ。
「もう、あなたを壊そうとする者など誰もいませんよ。怒りをお鎮めください、パンダ様。俺たちはこのパラミタの地に集まった者たちなのです。そう、俺たちはすでに到着しているのですよ。ですから、乙女の祈りを聞き入れて、この大地を壊さないでください」
 御凪真人が、まだ歩みを止めてはいない客寄せパンダ様にむかって語りかけた。
「はい、ここで巫女、祈る。早く早く」
 誰が巫女なのか分からず、御凪真人が適当に周囲に手招きした。もう、客寄せパンダ様はみんなのすぐそばまで迫ってきている。
「つまり、みんなで祈ればいいんだな」
 御凪真人の言葉に、すぐに反応したのはラルク・クローディス(らるく・くろーでぃす)だった。
「みんな! パンダ像の怒りを静めるためにも協力してくれ!」
「この中で一番純粋な存在と言ったら、小ババ様でしょう」
 すっとラルク・クローディスの横に来たアルディミアク・ミトゥナが言った。他の者のような邪念を持たない分、小ババ様なら純粋だと言える。
「えっ、私が前に出るの!?」
 小ババ様をだきかかえていたカレン・クレスティアがちょっと焦る。周囲の期待の目を一身に集められては、これは逃げだせない。本当なら、「世界樹対客寄せパンダ様、樹林の大決闘」を期待していたのに、まさか自分が最前線に押し出されるとは予想外であった。
「大丈夫なんでしょうねえ……」
 恐る恐る、小ババ様と一緒にカレン・クレスティアが客寄せパンダ様の前に進み出ていった。だが、まだ、客寄せパンダ様は止まらない。
 ずう〜ん、ずう〜んと、巨大な足が近づいてくる。
「こばあ」
 小ババ様が、小さな手を開いて客寄せパンダ様に手を差しのばした。
 客寄せパンダ様の足が上がる。
 ずん!
 振り下ろされた足が、あっけなく小ババ様とカレン・クレスティアを踏みつぶした。
「パパパパパパ!!」
 客寄せパンダ様が、勝利の雄叫びをあげる。
「おい、ちょっと待て。祈れば助かるんじゃなかったのか!? 踏みつぶされちまったぞ!」
 あまりにも予想外の結末に、ラルク・クローディスが御凪真人の胸倉をつかんで詰め寄った。
「い、いや、さすがにこれは……」
 ひきつりながら、御凪真人も言葉に詰まる。
「見てください!」
 アルディミアク・ミトゥナの声に、もめ合う二人が振り返った。
「パパパパパパ……」
 動きを止めた客寄せパンダ様の様子が変だ。
 風が吹く。
 なんとなく、客寄せパンダ様の頭のあたりがうっすらと赤い。いや、薄紅色と言った方が正しいだろうか。そして、その輪郭がゆっくりと崩れ始めた。
 風が吹きつける。そして、客寄せパンダ様から薄紅色の花弁が舞いあがった。
「綺麗……」
 ずっとカメラを回していた毒島大佐が、思わずファインダから目を離して、肉眼でその様子を見た。
 客寄せパンダ様の身体が、無数の花弁に変わって風に舞い上げられていく。
 花吹雪。本当に花吹雪としか言いようのない光景が、すべての者たちの周りに広がっていた。まるで、花弁を通して降り注ぐ薄紅の光に世界中がつつまれてしまったかのようだ。
 風にのって、花弁が空高く舞いあがり、バラミタ中に散っていく。
「きっと、パンダはパラミタの大地に還っていったんだ」
 御凪真人がつぶやいた。
「これからは、パラミタ全体に人を呼び寄せるってわけか? ふっ、今と変わらねえなあ」
 ますますパラミタという大地は、人を引き寄せるのだろうかとラルク・クローディスは思った。
「い、生きてる……」
 客寄せパンダ様の身体がすべて花弁に変わって舞いあがった後、小ババ様をだきしめて丸くなっていたカレン・クレスティアは惚けたようにつぶやいた。踏まれた瞬間に、客寄せパンダ様が花弁に変わったのだろう。彼女の身体は、薄紅の花弁まみれだ。それも、吹く風にさらわれて、バラミタの大地に散っていった。
「終わったのかしら?」
 ぽそりと、ソア・ウェンボリスがつぶやいた。
「で、これからどうするんだよ、みんな」
 雪国ベアが困ったように周囲を見回しながら意見を求めた。
「踊るか?」
 苦笑混じりにラルク・クローディスが言う。
「そうですな。それもいいかもしれません」
 魯粛子敬が、それにうなずいた。
 その日、その場に再度集まった者たちは、気のすむまで歌って踊って騒いだという。これが、後のパンダ祭りの発祥であった……。
 

担当マスターより

▼担当マスター

篠崎砂美

▼マスターコメント

 
 お疲れ様でした。これにて客寄せパンダ様のお話の完結です。
 第1回担当の桜月マスターと第2回担当の識上マスターもお疲れ様でしたー。
 ホラー風味から、だんだんとスラップスティックに変容していったお話でしたが、おおよその謎解きはされたかなという感じですね。
 まだいくつか曖昧な謎も残っていますが、それはそれ、伝承の彼方の物語ということで。
 設定的にはきっちりと作ってありますが、すべてを明かしてしまっても興ざめでしょうからこのぐらいがちょうどいいところでしょう。
 シリアスバトルとギャグバトルがめまぐるしく混在しましたが、お星様になった人も、格好良く決めたのにコメディ修正に負けた人たちも、楽しい戦闘でした。戦闘したら負けと分かっていて戦う、その心意気やよしです。
 マスター同士のコラボ企画というのはやりたくてもなかなか調整が大変なので、今回も手放しでうまくいったとは言い難いですが、また何か、もっと上手な方法で複数マスターが同じストーリーを扱うというのはやってみたいですね。何かいいアイディアが浮かんだり、要望があったらまた考えてみましょう。