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【リレー企画】客寄せパンダは誰が胸に その3

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【リレー企画】客寄せパンダは誰が胸に その3

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「もう、どうやったら、あのパンダを破壊できるのでござるか。ニンニン」
 ほとんどの攻撃を撥ね返して未だに無傷の客寄せパンダ様を見て、秦野 菫(はだの・すみれ)が悔しげに言った。
「いったい、どこが弱点でござるのか。ニンニン」
「とにかく攻撃するしかないのでは?」
 悩む秦野菫に、これといっていい案が浮かばない梅小路 仁美(うめこうじ・ひとみ)が言った。
「葦原に伝わる古文書にも、巨大化したという記述はなかったようですから。でも、勝てないのであれば、負けてもらうしかないでしょう」
「どういうことでござるか? ニンニン」
 秦野菫が李 広(り・こう)に聞き返した。
「雲海におびきだして、そのまま地上に落とすとか。パラミタ内海に沈めてしまうとか。アトラス山の火口に落とすとか……」
 つらつらと李広が思いついたことを口にした。地上に落とせば、さすがにあの質量であればかなりのダメージは受けるだろうし、海京の近くなら天御柱学院のイコン部隊に処理を押しつけることもできる。海に沈んでそのままになればそれでもいいし、さすがに溶岩の中でなら溶けるか燃え尽きるだろう。ただ、問題は……。
「どうやって、そこまで誘導するかですね」
 何度か進路を変えそうになりつつも、客寄せパンダ様はふらふらと動き回っている。ザンスカールへむかっているのも、たまたまでしかないだろう。
「なら、あの肩にいる黒幕みたいな者を挑発してこちらにむかわせればいいのではないのでござらぬか。ニンニン」
「やってみましょうよ」
 意見をまとめると、秦野菫たちは、日堂真宵にむかって大声で罵詈雑言を投げかけ始めた。
「ばーか、ばーか」
「かっこわるいでござるよ。ニンニン」
「やーい、ぺったんこー」
 この一言が、日堂真宵の怒りに火をつけた。
「むきーっ。行け、ジャイアントパンダ。あそこのたっゆんを踏みつぶすのよ!」
 怒髪天を突くといった状態で、地団駄を踏みながら日堂真宵が叫んだ。
 当然、客寄せパンダ様は無視である。
「だめですぅ。みんな、パンダさんの怒りをあおるようなことをしてはいけないのですぅ」
 騒ぎ立てる秦野菫たちを静かにさせようと、咲夜 由宇(さくや・ゆう)が間に割り込んだ。
「そうだよ、いけないんだもん!」
 ハリセンを持った小鳥遊美羽が走ってきて、秦野菫たちの頭をすぱぱぱーんと叩いて黙らせていった。
「パンダさん、怒っているのならごめん……なさいですぅ。どうか、怒りを静める方法を教えてほしいのですぅ」(V)
 客寄せパンダ様の方をむきなおった咲夜由宇が叫んだが、この状況では声がかき消されて客寄せパンダ様まで届きそうにない。
「もっと近づかなくっちゃだめですぅ」
「ええっ、あの暴れてるパンダの所に行くの? やだなぁ……」
 果敢に接近しようとする咲夜由宇に、アレン・フェリクス(あれん・ふぇりくす)が参ったなあという顔をした。
 
    ★    ★    ★
 
「ふふふふふふふ、その完膚無きまでに攻撃をボケで躱す体質、突っ込みの相方待ちと見ました。華麗なるお笑いナンバーワン、クロセル・ラインツァート(くろせる・らいんつぁーと)、登板!」
 キラキラと光り輝く箒を縦にした上に立ちながら、クロセル・ラインツァートが名乗りをあげた。
「客寄せを名乗っておきながら、暴力で人々を追い払うなんて……、なんでやねん!!」
 とうっと華麗にジャンプしたクロセル・ラインツァートが、思いっきりハリセンで客寄せパンダ様の額を叩いた。
 パシーンっと小気味いい音が響き渡る。
 思わず、客寄せパンダ様が頭をのけぞらせた。
「いけます」
 客寄せパンダ様の顎を蹴ってひらりと光る箒の上に戻ったクロセル・ラインツァートがほくそ笑んだ。
「ちっちゃかったのに、いきなり巨大化するなんて……、なんでや……うぼあっ!」
 今一度突っ込み攻撃をしようとしたクロセル・ラインツァートが、ハリセンで逆に張り倒された。
「なんでハリセンもってんねえーーーーーーん……」
 凄まじい突っ込みの勢いに、遙か彼方へと吹っ飛ばされていく。
「あれっ? 私のハリセンがないんだもん!?」
 そのころ、ひょいと客寄せパンダ様にハリセンをつまみ取られた小鳥遊美羽が、本郷 涼介(ほんごう・りょうすけ)を叩こうとしてスカって転んだ。
「邪魔をしないでくれ。イルミンスールに害をなす物は、呪いのアイテム確定だ。行くぞ」
「うん」
「はい、兄さま」
 本郷涼介にうながされて、クレア・ワイズマン(くれあ・わいずまん)エイボン著 『エイボンの書』(えいぼんちょ・えいぼんのしょ)が空飛ぶ箒で空に舞いあがる。
「そうか、目には目を、ギャグにはギャグが効果があるんだ」
 クロセル・ラインツァートの戦いを見て、何を勘違いしたのか鬼崎朔が叫んだ。
「ふはは! 愛と情熱のダークヒーロー! 月光蝶仮面参上!」
 おもむろに銀色の仮面を被ると、鬼崎朔が性格チェンジして叫んだ。
「ああ! あれは月光蝶仮面様……こうしてはおれないのであります!」
 それを見たスカサハ・オイフェウスが、あわててアゲハ柄のマスクを取り出して装着した。
「装着! 揚羽蝶仮面! 推参であります! 月光蝶仮面様の邪魔はさせないのでありますよ!」
 ちゃんとポーズをとって、スカサハ・オイフェウスが叫ぶ。
「おっ、面白くなってきましたな」
 尼崎里也が、カメラを月光蝶仮面にあわせた。
「あっ……」
「うっ……」
 椎堂紗月と椎堂アヤメが、呆然とそれを見つめる。
「さあ、紗月、二人で一緒にラブラブアタックを!」
「さあ、アヤメ様、二人で一緒にルンルンアタックであります!」
 鬼崎朔とスカサハ・オイフェウスが、揃って椎堂紗月たちに手をさしのべた。その手をつかんだ椎堂紗月と椎堂アヤメが、ぐるんと大きく二人を振り回して投げ飛ばす。
「二人で行ってきなさーい!!」
「歯、食いしばれー」(V)
「あーれー」
 空中でぶつけられ、だきあったまま鬼崎朔とスカサハ・オイフェウスが客寄せパンダ様にむかって飛んでいった。
 ぺちっ。
 あっけなくハリセンで叩き落とされる。
「朔!」
 ステージに開いた穴から奈落に落とされるような結末に、椎堂紗月たちがあわてて二人を回収に走った。
「お前たち、少しは頭を冷やせ!」
 予想外の成り行きにちょっとあっけにとられていた本郷涼介が、気をとりなおして客寄せパンダ様にむかっていった。
「万物の根源たるマナよ、彼の者を凍てつかせよ!!」(V)
 本郷涼介がブリザードで、エイボン著『エイボンの書』が氷術で、客寄せパンダ様の頭を凍らせる。これで、文字通り頭を冷やそうというのである。
「おとなしく、ちっちゃい像に戻りなさい!」
 突っ込んでいったクレア・ワイズマンが、ライトニングランスを凍りついた客寄せパンダ様の額に打ち込んだ。こちらはショック療法である。
 さすがに、客寄せパンダ様が少しおとなしくなった。
 ぱりぱりと、顔についた氷を剥がすことに専念している。
「よし、このままおとなしくさせて……」
 本郷涼介が次の手を考えていたとき、客寄せパンダ様の足許にちょろちょろと近づく影があった。
「いっけー、スペシャルデローン丼!!」
 鏡 氷雨(かがみ・ひさめ)が、客寄せパンダ様の足許に謎の丼飯をバシャンとぶっかけた。
 氷を剥がしていた客寄せパンダ様の手がピタリと止まる。
 下を見た。
「パパパパパパ!!」
 怒った。
「わぁー、パンダ様お怒りだー」
 両手を挙げて叫んだ鏡氷雨が、客寄せパンダ様に蹴り飛ばされる。
「あー、あれ最後の一杯だったんだよぉ〜」
 吹っ飛んでいく鏡氷雨の最後の言葉に、さらに客寄せパンダ様が怒った。だが、よほど気持ち悪かったのか、ザッザッと土を蹴って、足についたデローン丼をこそぎ落とし始めた。