First Previous |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
12 |
13 |
14 |
Next Last
リアクション
にっこりと理は笑うと、霜月に向かい合う。
「おや、さっきの悪魔くんと顔は一緒なんだね。でも君は誠実を絵に書いたような人とお見受けするよ」
「自分は、…普通に真珠さんと赫夜さんの復学と山葉の就任を祝いたかったのだが、弓削さんと戦うことに…なってしまいまして。まあ、あそこにいる気の強そうな娘がけしかけたせいもありますが。よろしくお願いします」
(まあ、自分の力試しも兼ねてやってみますか。本音を言ってしまえば弓削さんと戦うよりも爺やさんともう一度手合わせしたかったですね。ですが弓削さんの人間性をもっと理解出来るかもしれない)
すっと居合の構えをとると、理と剣を交える。
(なんですか、この「軽さ」は?)
理の剣は力を正面からは受けとめない。霜月の居合でさえも流してしまう。
(だから疲労が溜まらないのですね…)
「赤嶺さんと言ったね。あなたの真剣な太刀筋、僕は嫌いじゃない。赫夜さんと稽古をしていた時のことを思い出すよ」
理は霜月に心を許したのか、赫夜のことを語り始める。
「僕と赫夜さんは幼なじみなんだ。僕の伯父、弓削光政の家に預けられていたのが、封印を解かれたばかりの赫夜さんだった。彼女は最初、とても野性的でね。でも徐々に彼女本来の優しさや真っ直ぐさが見えてきた。剣の稽古も一生懸命頑張っていた…僕は彼女の姿を見るだけで、力がわいてくるのを感じた。彼女は僕に生命力を与えてくれる」
「だから、彼女を『運命の人』と?」
「終了! 両者引き分け!」
最後の方はほぼ、理が霜月に語るばかりであったが、霜月は理を少し見直した。
次にシルフィスティ・ロスヴァイセ(しるふぃすてぃ・ろすう゛ぁいせ)が名乗りを上げた。
(うわぁ…こういう理みたいな、過剰な美形て完全にアウトなんだけど、好きな娘多いみたいね。ここは一肌脱いじゃおうっかな。あの弓削って子と勝負する→わざとボロ負けする→目ハートマーク(笑)にして他の娘に「フィスの屍を越えてゆけ!」(男は譲れないものがあるだろうからスルー)、こっちは全力で跳ね除けて争奪戦騒動を最小限に押さえ込む。これで少しは鏖殺寺院も動きにくくなると思うし!)
「えい!」
とかかっていくが、理は
「女性には手出しができません…それに女性が相手では赫夜さんを奪われることもないでしょうし」
とアッサリと不戦敗を申し出る。
「んーもう! なんなのよー!! せっかくの作戦が無駄になるじゃないのー」
シルフィスティはポカポカと理を殴るが、理は苦笑するのみであった。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
一方、パーティ会場では楽団が音楽を演奏し、和やかなムードが漂っている。
赫夜は剣戟試合の会場に行っていたが、真珠はみんなと談笑するなかで、どうやって真言に話しかけるべきかを考えていたのだ。
「真珠、ひとりですか?」
「真人さん! 白さん!」
御凪 真人(みなぎ・まこと)と名も無き 白き詩篇(なもなき・しろきしへん)が真珠に声をかけた。二人はせっかくのパーティや真珠と祖父の和解のチャンスをテロで潰されるわけにはいかないと、ディテクトエビルによる警戒と自身の超感覚で周囲を警戒していたのだ。
同じ「まこと」と言う名前のせいか、真珠は真人に敬愛の念のようなものを抱いていた。
「どうしたのです。お爺さんに会いにはいかないのですか?」
「今はまだ、試合をご覧になってる最中なんです。ただ、私もどうしていいのか分からなくて、ドキドキしてしまって。…毎日顔をつきあわせているなら、距離も縮まるでしょうけれど、普段あってないとなるとこんなに怖いものなのですね…お爺さまにどう思われているかってことばかり、考えています」
「真珠とあのじじいは結局のところ和解したとはいえ相手が自分のことを本心でどう思っておるのか分からない、そこから来る不安が原因のようじゃの。年寄りとはもとよりそう言うものじゃし、真珠も本心をポンポン言えるようなタイプではなかろう。相手がどう思っておるのか自分自身の本音をぶつけるのが一番なのじゃが…、難しいようじゃのう。だがのう、おぬし自身の気持ちは誰かが察してくれる、代弁してくれると思うでないぞ。それは他人と言うフィルターを通したものじゃ。おぬしの意思を正確に伝えるのはおぬし自身にしか出来ぬ。おぬしが行動し、伝えようと思わぬ限りそれは相手には伝わらぬのじゃ」
と、白き詩篇がズバリ指摘すると
「どうするか…いえ、どうしたいかを決めるのは真珠自身ですから。こればっかりは他人が決めることなんて出来ませんから。ですがこれだけは忘れないで欲しいです。悩んでも良い、迷っても良い。ですが諦めるのだけはダメだと思いますよ。諦めるとそこで終わってしまいます。何も変わりません。諦めずに行動し続ければおのずと道は開けるものです」
心情としては真珠を放っては置けない真人だが、
(あまり世話を焼きすぎるのは真珠が成長する事の妨げになる)と思い、冬の蔵で作られた日本酒のような淡麗辛口の悟し方をしてみた。
「まあ、後悔しないようにがんばれ、じゃ。しかし、こっちの『まこと』も難儀な性格じゃの」
と白き詩篇はため息をつくが、それでも真珠のこころに二人の優しさはしみた。
「ふたりとも、優しいんですね」
「え!?」
真人と白き詩篇は二人で声を上げる。
「厳しいようでも、お二人が私のことを考えてくれるの、凄く伝わります。私、お爺さまに自分がドキドキしていることと、不安に思っていること、でも今の私を観て欲しいことも伝えます」
「よい心構えじゃ」
白き詩篇がいうと、真人も安心したような笑顔を浮かべた。
【第3章】
場所は、試合会場に戻る。
ルルーゼ・ルファインド(るるーぜ・るふぁいんど)が理に挑む。
ルルーゼは最初【スウェー】を用い、攻めには転じず、受けに回った。だがそれを悟られまいと、【実力行使】によって本来護衛に使用する体術を用い、これを剣術と組み合わせ、自分の力をアピールしている。
(これは剣術ではなく、あくまで体術の域です。理の油断を誘います…!)
しかし、理はなかなか乗ってこなかった。どうやら理はあまり女性に対して深手を負わせたり、本気になるつもりがないようだった。それは彼の奢りでもあり、赫夜を奪われる心配がないからだろう。
クド・ストレイフ(くど・すとれいふ)はそれを悟る。そして観戦している赫夜の側にそっと寄っていく。
「こんちわ、赫夜さん。俺、クドって言います」
「こんにちは。クド殿はルルーゼさんのパートナーなのか?」
「最初、ルルが弓削 理さんに会ってみたいとか言い出したので『おおぅ、お兄さんの教育にご執心なルルにも遂に春が…!』とか思ったんですけどもね、なんか現在の自分の実力を把握したいから手合わせしたい――ってニュアンスだったみたいっすよ、ええ。彼の実力以外には微塵も興味ないんですって。参ったもんです」
「なるほど。ルルーゼさんはなかなかの美人だからもてるだろうに」
「さて、本人にその気がなければね…それにしても、いやはや、べらぼうにイケメンですな、弓削理って御仁。しかしまあ、来て良かったとは思いますわ。赫夜さんはえらく別嬪ですし、よく見りゃあキレイどころも揃ってらっしゃる。いやはや、眼福眼福」
「…クド殿は面白い人だな」
First Previous |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
12 |
13 |
14 |
Next Last