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古来の訓練の遺跡

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古来の訓練の遺跡

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第九章 勇者を癒す調べ

 集まったデータをレティーシア・クロカス(れてぃーしあ・くろかす)が取りまとめる。
 戦闘を目的とした部屋、飛行能力を目的とした部屋、メンタルを目的とした部屋など、特色が分かれている。効果的に訓練すれば、それぞれの能力は飛躍的に伸びるだろう。

 遺跡から出てきた泉 美緒(いずみ・みお)は、シリウス・バイナリスタ(しりうす・ばいなりすた)崩城 亜璃珠(くずしろ・ありす)に挟まれていた。
「美緒、立派に成長しているようね」
「当ったり前だろ、オレが一緒だったんだぜ!」
「そう、私の美緒をありがとう」
「なんだよ、その‘私の’ってのは!」
「あら、小学生でも分かる、そのままの意味ですわ」
 6つの揺れ如月 正悟(きさらぎ・しょうご)は、少し離れたところでうらやましそうに眺めていた。

「結局、単なる訓練施設ってことですか」
 一応の目的は達したものの、どこか歯ごたえのない成果に、レティーシアを始め落胆した者も少なくない。
 また天井に開けられた穴も報告されたが、今のところ空気穴以上の存在とは考えにくかった。
「皆さん、お疲れ様でした」
 調査がまとめられ、それぞれが帰路に着こうとする。その中でも遺跡の前から動こうとしない生徒が何人かいた。
「もう少し待ちましょう」
 エルシア・リュシュベル(えるしあ・りゅしゅべる)高務 野々(たかつかさ・のの)を留まらせる。
「そろそろです」
 シルフィスティ・ロスヴァイセ(しるふぃすてぃ・ろすう゛ぁいせ)リカイン・フェルマータ(りかいん・ふぇるまーた)に話しかける。
「何か……思い出しそう」
 水無月 零(みなずき・れい)神崎 優(かんざき・ゆう)を呼び止めた。
 一陣の風が生徒の間を通り抜ける。遺跡の扉が大きく開かれると、どこからともかく優美な音色が流れてくる。
「こいつは癒しの調べだな」
 閃崎 静麻(せんざき・しずま)がつぶやいた。傍らのレイナ・ライトフィード(れいな・らいとふぃーど)が尋ねると「体も気分も楽になってるだろ」と答える。
「言われてみれば、そうですね」
 ゴーレムを片付けた疲労感が、少しずつ薄れていく。それはレイナだけではない。周りの誰もが同じようなことを感じていた。
 九条 風天(くじょう・ふうてん)らが、遺跡上部を調べて、天井に開いた穴から空気がリズムを伴って出入りしていることを確認する。
「楽器ってことか」
 誰言うとも無く、皆が納得する。リカインは報告書に一文付け加える。
「せっかくだから、歌ってみようかしら」
 ベルフェンティータ・フォン・ミストリカ(べるふぇんてぃーた・ふぉんみすとりか)が立ち上がると、ミンストレル(吟遊詩人)の本領を発揮。流れる調べに合わせて、即興で歌を作る。
 歌い終わって深く礼をすると、一斉に拍手が起こった。
「僕も……良いかな」
「おう、やってみろ」
 高柳 陣(たかやなぎ・じん)に背中を押されて、ティエン・シア(てぃえん・しあ)が立ち上がる。タンバリンを鳴らしながら、こちらも見事な歌声を聞かせた。
「では、次は私が」
 葉月 可憐(はづき・かれん)は2人の歌を巧みにアレンジする。ディーヴァ(歌姫)の名に恥じない、見事な歌いっぷりを披露した。
「ねぇねぇ、あなたも魔法少女でしょ。こんなのできるー?」
 如月 日奈々(きさらぎ・ひなな)シリウス・バイナリスタ(しりうす・ばいなりすた)に誘いかける。
「へぇ、面白いな。やってみようよ」
 並んで呪文を唱えて、両手を広げる。たちまち花吹雪が舞い散った。
「もしよかったら、ご一緒していただけませんか?」
 普段と異なる丁寧な口調でラナ・リゼット(らな・りぜっと)に合唱を申し出たのは、クリストファー・モーガン(くりすとふぁー・もーがん)クリスティー・モーガン(くりすてぃー・もーがん)。ラナは悠然と微笑んで了解する。
 ラナ、クリストファー、クリスの3人によるソフラノとアルトの合唱が、一同を包み込んだ。
 続いてソプラノ・レコーダー(そぷらの・れこーだー)宇都宮 祥子(うつのみや・さちこ)セレンス・ウェスト(せれんす・うぇすと)など、歌が得意な者、声に自信のある者、音楽が好きな者が次々に歌っていく。さながら即席の音楽会のように。

 癒しの調べが流れる中、セレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)は、パートナーのセレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)に肩を抱かれていた。
「そろそろ泣くのを辞めないと、キスしてあげないよ」
「セレアナがキスしてくれないなら、泣くのはやめない」
 セレアナは「仕方ないわね」と優しく口づける。
 2人の大胆な行動に、軽い口笛で冷やかす者、真っ赤になりながらも目をそらさない者、「子供は禁止」とパートナーの目を塞ぐ者塞がれる者と様々だった。

「お姉ちゃん、大丈夫?」
 ユピリア・クォーレ(ゆぴりあ・くぉーれ)ティエン・シア(てぃえん・しあ)の頭をなでる。
「ええ、もうすっかり」
 これも癒しの調べの効果のようだった。
「ぼおっとしてて壁にでもぶつかったのか? 気をつけろよ」
 高柳 陣(たかやなぎ・じん)の声を聞きながら、ユピリアは遺跡の中のことを思い出していた。
 頬を真っ赤に染めて、ちょっとクネクネと……。

 遺跡から少し離れた小高い場所。
「ゲドーさん、なんか聞こえます」
「お、ジェンドちゃん、目が覚めたか」
 ゲドー・ジャドウ(げどー・じゃどう)ジェンド・レイノート(じぇんど・れいのーと)を見下ろした。
「どうやらあの遺跡全体が楽器みたいに作動するらしい。ひと儲けするチャンスだったのにな」
「ごめんなさい。ボクがもっと強ければ……」
「気にすんな。また行けば良いさ」
 流れてくる調べや歌声が耳に届く。ジェンドが起き上がる。遠目に音楽と歌を楽しむ生徒達が見える。
「ゲドーさん、みんな楽しそうですね」
「そうだな」
「いつも楽しそうな人を見るとムカムカするんです」
「おう、俺様もだ」
「でも今は……ボクも楽しいんです」
「たまには、そう言うこともあるさ」
「たまに……ですか? 次はいつかな」
「さぁなぁ、良いから、もうちょっと休んでろ」

 遺跡から聞こえる音色が、次第に小さくなる。生徒達の疲労は、すっかり消し飛んでいた。
「そろそろ終わりかしら、じゃあ最後は私が」
 立ち上がったのは、こちらもディーヴァ(歌姫)のリカイン・フェルマータ(りかいん・ふぇるまーた)。朗々とした歌声で、集まった生徒達を魅了した。そしてリカインが歌い終わると同時に、遺跡の調べも聞こえなくなった。
「リカ、最後に決めましたね」
 シルフィスティ・ロスヴァイセ(しるふぃすてぃ・ろすう゛ぁいせ)の言葉に、リカインがウインクする。
「なんたって、フェルマータですもの」

                         《終わり》

担当マスターより

▼担当マスター

県田 静

▼マスターコメント

2度目のゲームマスターを務めました県田静です。多くの参加、ありがとうございまし…………

うわぁぁぁぁっ! どうしたら良いんだぁっ! 

困ったことが起こりました。


2から7までの部屋は「一人一部屋」のみ調査できます。

「1と8の部屋を調査できない、とは書いてないな。よし、私(or俺orあたし)は、1(or8)を調べよう!」
こう判断されたであろう方が、少なからずいらっしゃいました。

まぁ、そうですよね。明確に選んじゃいけないと書いてない限り、選択する人が出ても当然です。
「ガイド掲載前に、内容を一回でもチェックさせてもらえてれば……」と、じたばたしても後の祭り。
チェックしても気付かない可能性だってありますしねぇ。

そこで選択肢。

1、上手く誘導して他の部屋に振り分ける
2、そのまま1(or8)の選択を活かす
3、その他の手

さてどれだと思いますか?

考えた末に8の部屋の設定を変更しました。つまり答えは「2」です。
8のD.C.(ダ・カーポ)について、選択された方がアクションでいろいろ推測されていました。
それを台無しにしてしまうのは、さすがにもったいないと思ったのが理由です。

でもって1の部屋を選択した方(って、読めば一目瞭然ですが)は、8の部屋に誘導しました。
ですから「1」も正解です(オイ

そんでもって根本的に遺跡の構造も変更しました。
となるので「3」も正解です(オイオイ


さてリアクションです。楽しんでいただけたら幸いです。春のパン祭りならぬ、春のおっ○い祭りです。

なんだか胸を使った場面が増えてしまいました。なぜかと言えば、アクションに胸のことを書かれた方が少なからずいたので。
あらためて見ると外見設定に「胸が大きい」としている方が多いですね(反対に「胸が小さい」もチラホラ)。
それに合わせて、魅力的なイラストを設定されている方も。ともあれ楽しんで書かせていただきました。

前作「伝説の焼きそばパン」に比べて、NPCとの絡みをアクションに書かれていた方がグンと増えました。
ただNPCも探検できる部屋は一つなので、さすがに分身させるわけにはいきません。同じ部屋なら良かったんですけど。
悩んだ末に、他の人ともある程度交流させつつ、希望者の内の一人に付いていかせました。
『このNPCであれば、この部屋を選ぶのではないだろうか』と考えた結果です。
NPCとの交流を期待しながら、外れてしまった方には申し訳ありませんでした。

また前作に比べて、LCの参加が増えていました。こちらも感謝の極みです。
せっかく参加していただいたのですから、よりLC同士やLCと他MCの絡みを増やしてみようと心がけました。
しかしなかなかに難しかったです。自分の力不足を感じました。

ただ‘LCは、そのMCと絡ませるのが最善’かもしれません。
無理に他と絡ませるよりは、MCと自LCとの自然な交流をもっと増やした方が喜んでもらえそうです(と、ちょっと逃げてみます)。
でも面白そうな組み合わせが見つかれば、今後も挑戦したいと思います。

遺跡について完璧な考察をされた方はいませんでしたが、「うーむ、鋭い」「これはなかなか」と思った方には、称号を贈らせていただきました。
また部屋の攻略で活躍された中から数人の方にも、称号を贈らせていただきました。ご確認ください。

それではこの次のシナリオがありましたら、どうぞよろしくお願い致します。