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昼食黙示録

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昼食黙示録

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 同じ頃、蒼空学園大学部の食堂ではまたパートナー関係にある四人組が食事をしていた。
 キリエ・エレイソン(きりえ・えれいそん)セラータ・エルシディオン(せらーた・えるしでぃおん)ラサーシャ・ローゼンフェルト(らさーしゃ・ろーぜんふぇると)メーデルワード・レインフォルス(めーでるわーど・れいんふぉるす)の男四人組だ。
 だが、中には中性的な雰囲気を持つ者もいるため、むさいという表現とは著しく遠いだろ。
 どうやら昼食を始めようとしているようで、キリエが開口一番に言葉を紡いだ。
「おっほん。 今日は豆腐ハンバーグに挑戦してみました。 色々試行錯誤していますが、中々良い出来じゃないだろうかと思っています」
「どれどれ……試行錯誤したとは思えない出来ではないですか」
「それじゃあさっそく、いっただきまーす!! ……美味しいよキリエ! 豆腐じゃなくてお肉なんじゃないの、これ?」
「さすがはキリエだ。 我々三人は料理に関してはめっきり才能はないからな。」
「そうだね、特にメーデルワードは! お肉焼くだけなのに消し炭にしちゃうんだからね!!」
「……悪かったな、料理の才能マイナスで」
「まぁまぁ、それと今夜はラサーシャのリクエストでロールキャベツを作りますね」
「えっやったぁ! キリエの作るロールキャベツは大好きなんだよね! 実家のシェフたちにも劣らない味しているもんね!」
「何であろうと、キリエの作るものは全て美味しい。 それに、君の作るものなら私は何だって食べますよ」
「ありがとうございます、セラータ」
 セラータ、ラサーシャ、メーデルワードの順で次々感想を述べていく。
 いつもと変わらない風景にキリエは微笑ましくなっていく。
 始まったばかりの昼食に、すでに晩御飯の献立の事を話すあたり主夫の感覚が染み付いているようだ。
 そんなキリエにセラータは無自覚の殺し文句を放つ。
 それを聞いたラサーシャとメーデルワードは、思う。
 この無自覚野郎、と……。

 仲睦まじい光景を引き継ぐように、蒼空学園高等部の中庭。
 ここにもパートナー同士で食事をする生徒がいた。
「何だよ、翔が弁当作ってくるなんて。 さてはようやく俺の魅力に気づいたんだな? 全く、この後が大変じゃないか」
「こらこら、何を企んでいらっしゃるのやら。 大体、あなたはこういう時間になると、誰かれ構わず声を掛けては誘惑紛いの行動を起こすではありませんか? これはその予防策です」
「なるほど、それほど俺の事を思ってくれているんだな?」
「人の話を聞いていますかあなたは? それに執事としての修行も兼ねての事なのです。 あまり勘違いしないように」
 タキシード服姿の男子生徒二人が話している。
 本郷 翔(ほんごう・かける)ソール・アンヴィル(そーる・あんう゛ぃる)の二人はいつもこのような調子だ。
 ソールは放っておくと誰かれ構わず口説きはじめ、弁当を分けてもらうと言ったことをしてしまう。
 人様の迷惑にならないように翔は弁当を用意してその予防策を張る。
 もちろん彼の修行も兼ねている。
 だが内心は、風紀を守ることもあるが別の意味もあるのを彼は自覚していた。
「さて、それでは今から温めますので待っていてください」
「あんまり熱くしないでくれよ。 そうだ、これを入れたらもっとうまくなるんだぜ」
「待ちなさい。 砂糖など入れられたら私が食べられません。 甘いの苦手だと知っていての嫌がらせですか?」
「冗談だよ冗談。 慌てる姿も可愛いな、翔は」
「おちょくるのもいい加減にしてください」
 あれをすればこれをする、こうしたらああされてしまう、というような展開が続く。
 傍から見れば、はしゃいでいるソールに振り回されている翔、という風に見えるだろう。
 でもそこに本気の怒りは見えない。
「あ、そうそう。 これ、作ってきたんだ」
「? ……クッキー、ですか?」
「ちゃんと甘さ控えめにしてあるぜ。 食事の後に食べような」
「ーーありがとうございます」
 ソールが差し出した紙袋に入っていたクッキーを見て翔から笑みがこぼれる。
 代々執事の一族ということもあり、人に尽くす事こそ自らの信念と考えている翔。
 だがたまにはこうして自分たちのために、腕をふるうのも悪くないと思うのであった。