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昼食黙示録

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昼食黙示録

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 橘 恭司(たちばな・きょうじ)フィアナ・アルバート(ふぃあな・あるばーと)の二人は食事する場所を探していた。
 もともと葦原地方にいる二人だが、仕事の都合によりツァンダ地方に帰ることになったのである。
 この機会だということで、この辺で食事でもしようと考えて外出したのだ。
 彼らがいるのは蒼空学園食堂の近く、しかし時間帯のためか混雑を極めていた。
「マスター、どうしますか?」
「そうだなぁ、でもこの混雑だ、例のカフェにでも行くか」
「そうですね、これじゃあ結構待つことになりそうですしね」
 食事するために席が空くまで待つということは誰も基本的にやりたくない。
 恭司もそうなのだろう、フィアナの言葉を聞いてからは行動早く、食堂から足早に出ていく。
「それではどうします? あのカフェにでも行きますか?」
「そうだな……?」
「どうかしましたか?」
 フィアナも恭司の後に続いてこれからどうするのかと尋ねる。
 一つの行き先を告げると、恭司は答えようとしたが何故か急に怪訝な顔つきを見せる。
 恭司の様子に何事かと思っちゃフィアナは彼が見ているであろう方向に顔を向ける。
 そこにはドラゴンと戦車の巨大なオブジェがあり、周りの生徒たちから奇異な目を向けられていた。
「……マスター、此処にあんなものありましたっけ?」
「気にするな、最近建ったんだろう」
「いや、どう見てもあれは……」
「それより、カフェに行こう。 腹も限界に近い、行くぞ」
 フィアナの方がどうやら気になってしまったらしく、恭司はすぐに興味が薄れてその場を離れていく。
 どうにも引っかかるのか、後ろ髪引かれながらもフィアナは恭司の後に続くのであった。

「……何だろう、あれ? 出待ち、とかそういうのなのかな?」
 藤林 エリス(ふじばやし・えりす)はたまにはと蒼空学園の食堂に足を運んでいた。
 ただ、何故だか人混みが一か所避けるようにして動いているので不審に思う。
 見ればそこには戦車とドラゴンの二つの巨大な影が人目を気にせずにいたのだ。
 他校の生徒なので、若干疑問には思いつつも今は食事の方が先だと結論付けて、食堂に入る。
 タイミングが良かったのか、券売機前に人混みはなくすぐにその前に立つことができた。
「う〜ん、どうしようかな……あれ? 札が貼られていないのに点灯している? 何だろうこれ」
 お金を入れて何にしようか考えていると、その中に食事の札が貼られていないボタンが一つ点灯していた。
 興味本位でついボタンを押してみると、清算処理がされて食券が排出される。
 手に取ってみると、そこには中央にマル秘定食と書かれているだけでどんなメニューなのか見当もつかなかった。
「へぇ、おもしろそう。 これにしよう」
 好奇心に駆られたのか、その食券を持って窓口へと向かう。
 蒼空学園食堂のマル秘定食、実は一部の生徒は知る人ぞ知るメニューなのだ。
 それを食べた者は一様に口をそろえる。
 まさに奇跡のコラボレーション、だと……。

 とある魔法少女が奇跡の定食に舌包みしている頃、中庭の大きめの樹の木陰の下で4人の男女が昼食をしていた。
 神崎 優(かんざき・ゆう)水無月 零(みなずき・れい)神代 聖夜(かみしろ・せいや)陰陽の書 刹那(いんようのしょ・せつな)の4人だ。
 このメンバーなら、二人いる女子が弁当を作って男に手渡すというのが定石だろう。
 しかしここではメンバーの主でもある優が全員分の食事を用意したのだ。
 3人は手渡された弁当の中身をみると、唐揚げ、卵焼き、野菜に果物と彩も完璧な料理だった。
「いただきます。 うん、今日も優の料理は完璧だね」
「確かに、本当に何でもそつ無くこなせるよな」
「大したことじゃない、それなりに勉強もしているからな。 その成果が生かせている、というだけだ」
「ということは、地球にいた時も料理していたの?」
「あぁ。 親があまり料理がうまくなかったから自然とな」
「美味しいと言えば、優の作る玉子がゆも美味しいよね」
「あれか。 風邪引いた時はあれは一番いいんだよね。 何も食べられないのにあれだけは胃に入っていく」
「あの優しい味はなかなか出せませんよね。 本当にすごいです」
 賞賛の嵐、という程の褒め言葉が優に降り注ぐ。
 パートナー達の言葉を聞いて嬉しそうにしている優。
 作ったものを褒められて嬉しくならないものはいないだろう。
 仲睦まじく4人は優の絶品料理を食べていく。
「そういえば神薙流の使い手は皆、あんな奇抜な動きをするのか? 忍者クラスの俺も顔負けの動きしているんだが……」
「いや、基本は攻撃を受け流したり、利用するくらいだ。あれは俺だけだ」
「そうなんだ」
「初めの頃は皆同じだったんだが俺だけが今の動きになっていた。 手合わせの時に皆からは嫌な顔をされたけどな」
「まぁ、あの動きについていける奴なんてそうそういないからな」
 聖夜の言葉に零と刹那は同時に頷く。
 三人の反応に若干苦笑の表情を浮かべながら唐揚げを口に運ぶ優。
 戦闘力はおろか、家事スキルも備えている優のことがただただ凄いとしか思えないパートナー達。
 自分たちが選んだ主はやっぱりトンデモ人間だということを実感したお昼だった。