リアクション
★ ★ ★ 「おや。どうした? リリ。そんな格好をして」 王子の眠る部屋の前で腕組みをして壁にもたれていたララが、よろよろと階段を上がってきたリリを見て身を起こした。 いばらの棘で引っかき傷だらけ、髪もぼさぼさ、所々に草や土をくっつけている。 「と、とんだ目にあったのだ…」 ――というか、ララさん本気で忘れ去っていたんですね。 「……ち。邪魔ですわね」 階段の曲がりかどから2人の様子を盗み見て、志方 綾乃(しかた・あやの)がつぶやいた。 「あれでは絶対いちごちゃんを通してはもらえませんわ」 それは困る。 王子の運命の相手は彼女の用意した者、仲良 いちご(なかよし・いちご)と決まっているのだ。 そこで綾乃は一計を案じた。 ここは童話らしく、白雪姫作戦だ! 「ところで、あそこにいるのはだれなのだ?」 続きの小部屋を覗き込んで、リリが訊いた。 「ん? ああ、変熊だ。私が来たときにはもうああしていたんだ」 「居眠りをしているのか」 「あれで王子を守っているつもりなんだからな。まったくあてにならないやつだ」 2人してあきれ返っていたら。 タッタッタ、と軽やかな足音が聞こえてきた。 「はーい、私、志方 綾乃っ。この塔で毎日ジョギングしてるのっ。階段の上がり下りってダイエットにも効果的でいいわよねっ。足腰の鍛錬にもなるしっ」 ふふっ。とっさのことながら、よく思いついたわね、綾乃! この設定ならスポーツドリンク渡しても全然違和感なし! 胸の中で自画自賛しつつ、綾乃は2人に自然に近づき、脇にあったダンボール(大)の上にしびれ粉の入ったスポーツドリンクをいくつか置いた。 「よかったらあなたたちもどうぞ。私、いつも余分に持ってきているから」 罠は手渡しでは駄目なのだ。 だから、2人に自らとらせるしかない。 安心させるように、綾乃はまぎれ込ませてあったしびれ粉の入っていないスポーツドリンクをさりげなく取って飲み干す。 リリもララも、綾乃が外見も性別も女性であることで、すっかり油断してしまった。 「ああ。これはすまない」 「半日飲まず食わずで、すっかりのどがカラカラだったのだ――うッ!?」 そして綾乃は、飲んでしびれた2人を、窓からいばらの森にポイポイした。 指1本動かせず落下していく2人に、下から伸びてきたいばらのツルがシュルシュルと巻きついて、引っ張り込んだ。 「これも、いちごちゃんのためですもの」 志方ないね。 肩をすくめて振り返った先、なぜか残りのスポーツドリンクごとダンボール(大)が消えていた…。 「まぁ、まだまだたくさんあるし。いっか」 |
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