リアクション
「よろしかったら、記念撮影しませんか?」
「お、なんかそれいいな。一期一会ってやつか」
竜斗が何やら嬉しそうに、衿栖の発案に賛同する。他の面々もワイワイと集まり、蛙を中心に並び始めた。
「それじゃあ、行きますよっ」
「ってちょっと待って…ウォウルさんは?」
結と直樹がきょろきょろ辺りを見回してみるが、そこにはウォウルの姿がない。
「あれ、また消えたの!? あの人…しょっちゅう姿が見えなくなるねぇ」
鳳明が「困った困った」と言った表情で呟く。
「まぁ良いじゃない。いない人をどうこう言っても仕方ないわ。早く撮っちゃいましょうよ」
セルファが言うと、一同も納得したらしく、写真を取る。
「プリントアウトしておきますので、後日お届けしますね!」
衿栖はそう言って、カメラをバッグにしまった。その顔は何処か、誇らしげである。
「蛙さんにも…あげたいんですけどね。写真…」
少し残念そうに呟く彼女を元気づける様に、蛙が笑った。
「良いんですよ。皆さんと過ごせた僅かな時間ですが、私はきっと忘れないでしょう」
すると、蛙が全員に向かって言葉を発する。
「皆さん、先程あのお方がご挨拶していましたが、私からも御礼申し上げます。皆様のおかげで、私も、そして妻も、大勢の生き物が、助かったはずです。ありがとうございました。
このご恩は一生忘れません!」
「何言ってんのさ」
「こたも、みんなも、おともらち。おともらちは、だいじ、こた、そうおもうろ」
樹とコタローがにんまり笑って蛙に言った。
「ありがとう。友達、ですか」
「おう、皆だってそう思ってるさ。また困ったら、いつでも言うと良い」
そう言うと、樹は人差し指を蛙に向けた。
「本当に、ありがとうございます」
「おう」
「では…私はそろそろ失礼します。妻の体調も気になりますので。では――」
それが、最後の言葉となった。以降、結和の手から飛び降りた蛙は叢に消えて行く。当然、蛙の声は聞こえない。
「行っちゃったねぇ…」
どこか寂しそうに託が呟いた。と、今度は彼らの元に、少し不安そうな表情をしたラナロックがやってくる。
「あの、頼んでおいてまことに申し訳ないのですが…」
その神妙さに違和感を覚えたルクセンが、眉を顰めて尋ねる。
「何…?もしかして私ら、なんか不味い事、しちゃったかな?」
「いえ。そうではなく…皆様?午後の授業は…」
「……………!」
一同は瞬間的に固まる。完全に動かず数秒――。
「やばい!学校!」
「今日平日ですわ!」
「ちょっとやばいよ、今何時? 誰か教えて!」
「まだ十二時半だ! 急げばいけんだろ!」
「あぁ! 私バッグどこやったっけ!」
雨が降り注ぐ中、一同は猛然と走り出した。学校へと向かう為に。
今までの『非日常』から――
学校と言う名の『日常』に向かう為に。
皆様、お久しぶりの方、初めましての方。この度は『蛙の代わりに雨乞いを……?』にご参加いただき、まことにありがとうございます。
まだまだ拙い文章ですが、如何でしたでしょうか。このお話、私の三作目のシナリオとなりますが、相変わらず文章が長く感じるかもしれません。
ごめんなさい…。
今回は、バトルものから離れたシナリオ、となり、コメディ色を前面に押し出してみたつもりです。
やはり見せ場、の判定が難しい気がしたのですが、如何でしたか……?
次回は更に話を上手にまとめられる様に精進いたしますので、次回ご参加を心よりお待ちしております。長々とした文章でしたが、此処までお付き合い頂き
誠にありがとうございました! それではまた、会う日まで――。