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古代兵器の作り方

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古代兵器の作り方

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     ◆

 その穴から現れたのは――何とも悲惨な姿のラナロック、その人だった。故に臨戦態勢を取っていた彼等にしてみれば、それはお驚きだった事だろう。
「そんな……………ラナさん、が――」
 最前列が内の一人、託はただただ呆然としながら、その様子を見詰めている。と、ルイの言葉で、彼はふと意識を戻す。
「来ますよ託さん!」
「うわっ!」
 慌てて飛び退いた彼のいた場所が、地面が、抉れる。抉れて捲れ上がっているのだ。それはラナロックの攻撃。ただただ跳躍し、着地をする、というだけのフットスタンプ。
「あの男は――どこ?」
 小さく呟かれた言葉に、ぼんやりとした、先程のそれとは違った笑みが灯った。真司が首を傾げてから彼女に尋ねたのは、即ち彼だけが聞こえていたからである。
「あの男、とは誰の事だ」
「なぁんだ、居るじゃない……………うっふふ、フッフフフフ、いたいたいたいたいたいたいたいたいたいたぁぁあああ!!!!」
 飛び退いていただけの、構えを取りきれていなかった体勢の二人を押し退けて、彼女は全速力で奥に倒れているウォウルを目指す。と、前のめりの姿勢で走っていた彼女の頭が恐ろしい速度で地面に叩きつけられる。
「ふぅ…………一定の速度、コースならなんとかなるな。演習用のゴム弾頭を持っていて正解だったな」
 カーマインを構えたままに、小さくため息をつくライオルドは、二階から彼女を狙っていたのだ。
「………………痛いじゃない」
 すっくと立ち上がった彼女はホルスターから銃を引き抜くや、それを二階で狙撃するライオルドへ向けた。
「我等も居るんだがな」
 彼女が伸ばす腕を勢いよく弾き下ろすゴルガイスが呟き、彼女の残った腕に蹴りを放ち、銃を弾きおとした。そこに――
「貰ったぁ!!!!!」
 騒ぎを聞きつけ、駆けつけていた猪川 勇平(いがわ・ゆうへい)が低くした体勢のままにパンチを入れる。ゴルガイスが立っている方と反対側、既に腕のない右の脇腹へとパンチを放ったのだ。滑走から体重を乗せ、あえてのオーバースイングによる渾身のジョルトパンチをうち放った。ラナロックの体がくの字に曲がり、彼女はそのまま横の壁へと強かに体を打ち付ける。
「へっへ、ちょっとやり過ぎちまったかなっ!」
「気を抜いたら駄目なのですよぅ」
 壁に衝突しながら、しかしもう一方の銃を引き抜き、自分を殴り飛ばした勇平に弾丸を撃ち込むラナロックは、しかし何処からともなくふんわりと着地したルーシェリア・クレセント(るーしぇりあ・くれせんと)によってその弾丸を弾かれる。彼女は手にするバックラーでそれを弾くと、横たわるラナロックへと疾走した。その間もラナロックの射撃は続くが、それを体左右に大きく降って交わし、バックラーで弾きながらに交わし、完全に距離を詰めた。
「……………ヘッドスリップだぁ!? くっそー、なんなんだ? あのねーちゃん、すっげー…………」
「感心している場合ではないぞ。いつまた攻撃が来ても良いように構えておれ」
 ルーシェリアの回避行動に声をあげる勇平の横、魔導書 『複韻魔書』(まどうしょ・ふくいんましょ)が彼にツッコミを入れながら構えをとった。
「あやつ――まだ何も諦めてなどおらぬ。用心に越したことはなかろう」
 二人が見やると、ルーシェリアはラナロックのもとへ到着し、彼女の銃を押さえていた。銃の上部をスライドさせた状態で押さえているためにラナロックが引き金を引いても銃弾は出てこない。そのまま彼女はグリップのマガジンキャッチを平手で叩くと、グリップから銃弾の詰まっているマガジンが地面へと転がった。鈍い音ともに。
「もう、やめにしましょう。ラナロックさん」
「……………………無理よ?」
 相変わらずの薄ら笑みを浮かべている彼女は、ルーシェリアの腹部に蹴りを放つ。
「ルーシェリア殿!!」
 ルーシェリアの腹部に到達する前に、とアルトリア・セイバー(あるとりあ・せいばー)がラナロックの足へ剣を降り下ろした。が、それをルーシェリアがバックラーで止めている為、彼女は腹部に強烈な痛みを感じる。
「潮時だな、ねーちゃん。悪いが引いてもらうぜ」
 複韻魔書がルーシェリアの腰を抱いて後ろに退き、残ったアルトリア、勇平がラナロックの前へと立ち塞がる。
「二人で私を止めるの? 二人で私を止められるの?」
「止めます。止めてみせましょう」
「あんまり舐めて貰っちゃ困るぜ!」
 二人が構えを取ると、ラナロックが体を起こして二人に近寄る。
「でやぁ!!」
 間合いに入ったからか、アルトリアが先制攻撃をしかけ剣を振り上げる。と、ラナロックが降り下ろしたその手を受け止め、アルトリアが持っていた剣を奪い取った。
「っ!?」
「これが『亡霊』と言われた由縁――」
 アルトリアを前へと放り、手首を押さえながら体勢を立て直す彼女を暫く見詰めると、今度は隣で構えを取っていた勇平へと向き直る。
「格闘技、ね。私のいた時代にもあったみたいだけれど、あなたのそれとはちょっと違うわ」
 そういいながら、ラナロックは握った剣の柄で勇平に打撃を加えた。彼は両腕をクロスさせてガードをするが、相手は金属、重みのあるその攻撃に思わず後ずさる。
「目標を確認しました、攻撃します!」
 と、広場の中――彼女たちと対角に位置する場所からシグルーンがミサイルポットを構えて言った。
「援護に入る。しっかりやれよ…………」
「はい、マスター。ご無事で」
 七緒が走ってくのを見送ったところで、言い終わった彼女がミサイルを発射した。あくまでも牽制のための射撃――。
「アニマ!」
「支援、行きます!」
 アレーティアの声に反応し、アニマが動きを見せ、走ってラナロックへと近づいていく七緒と並走する。
「目的は――」
「あの機晶姫の攻撃を無視、先制で畳み掛けて制圧だ………」
「はい!」
 二人は簡単に言葉を交わすと左右に別れてラナロックを挟み撃つ。


「うぅ…………まだ、生きていましたか…………」
 ウォウルが目を開けたのは、ラナロックとの戦闘が始まってから間もなくの事だった。
「大丈夫か、クラウン」
「和輝君…………でしたっけねぇ……………」
「ウォウルさん、喋っちゃ駄目だよ!」
「和輝さん、今は――」
 北都、リオンがそれぞれ二人を制止するが、和輝は二人に「すまないな」とだけ返し、ウォウルに告げる。
「どうするつもりだ、クラウン…………『あれ』は――」
「僕のパートナーの……………不始末ですから、ね。本当は僕がやらなければならないんですが…………ね」
「……………………お前、知っているんだな? あれの事を」
「えぇ。………………少しは、ね………………」
 周りが話に着いていけず首を傾げている一同を他所に、ウォウルはざっと周囲を見回すと近くにいた綾瀬を呼んだ。
「…………何がご所望ですの?」
「――――――――――、頼みましたよ………………」
 小さな声で話したため、綾瀬にしか聞こえなかった彼の声。綾瀬は一瞬だけ息を呑むが、ウォウルの言伝てを受ける。ただ一度――
「本当によろしいのですね?」
 と呟きながら。


 七緒、アニマはラナロックへととたつするや、彼女に向けて攻撃を放った。放ちはしたが――
「待ってください!!!」
「駄目だよ、まだ駄目なんだ!」
 それを衿栖、鳳明が受け止めていた。
「何故邪魔をする…………!!」
「まだやめてあげて、傷付けるよりも先に、やらなきゃいけないことが――あるんだ、よっ!」
 七緒を押し退けて、鳳明が後ろを振り返る。
「ラナさん、駄目だよ。もうよしなよ、こんな事」
「そうです。貴女はそんな事をする人じゃないはず…………」
 衿栖もそれにならって言葉を放った。
「戻ってきてください、優しい貴女に………」
「こんな姿、誰も見たくなかった筈だよ! それにウォウルさんだって……………ちゃんとみんなに謝って、もう終わりにしようよ!」
 懸命な投げ掛け。二人の言葉。が、二人の前に現れた朱里は手にする剣を構えて言った。
「駄目だ、この子聞いてない!! 二人とも下がって!!!」
 返事を返さないままにラナロックは奪い取った剣を振り払う。
「何で――なんでそんな酷いことをするの?」
「鳳明さん、まだです、私たちが諦めてしまったら………ラナさんはきっと――」
「もぅ! 焦れったいなぁ! 衿栖! 攻撃しちゃうよ!?」
「駄目よ…………なんとか、なんとか…………」
 ラナロックの攻撃を受けているだけの朱里は、牽制の意をもって剣を振り抜き、ラナロックはそれを横に移動して回避した。足元には、先程のゴルガイスが彼女の腕から弾き落とした銃が転がっている。それを拾い上げる為に、と、朱里たちに向かい、アルトリアあら奪った剣を思いきり投擲する。
「事情は聞きましたよ。ちょっとだけならキョーリョクしてあげてもいいですかねー、暴漢さんたち」
 アルコリアの式がその剣を受け止め、地面へと払い落とした。
「要はそのラリっ娘を動けないようにしてしまばいーんでしょー?」
「…………………………下がって」
「あれー? 誰ですか? ってか暗っ! 空気重っ!? 何でですか?」
 今現れたアルコリアたちの横を託が歩みを進めた。隣を歩く真司は心配そうな顔で彼に声をかける。
「……………大丈夫か? なんなら俺一人で――」
「良いんだ……………わかってた。誰かがやらなきゃいけない事なんだって。もう、逃げないよ。これで、これが最善で、全てが終わるなら――」
 重苦しい空気の中、更に衿栖、鳳明、天樹、朱音の横を通過する二人に彼女たちは声をかけた。
「ねぇ、ちょっと待ちなさい! あなたたちこれから何をする気!?」
「止まってください二人とも。話によってはあなたたちを力付くでも止めなければ――」
 託は手にする真っ青なチャクラムを、力一杯に握りしめて振り返る。
「ごめんね、二人とも。ウォウルさんの指示、なんだよ」
「行くぞ、託」
「…………うん」
「そんな――そんな……………。だって私たち、懸命に探したんだよ!? こんなに探し回って、やっと見つけて……………止めなきゃと思って…………」
「鳳明さん…………」
「衿栖、鳳明…………私!! 今から二人を止めてみる!!!」
 朱里は突然、託と真司を止めに走り始めた。
「ひどいよ……………あんまりだ!!!! ウォウルさん、あんまりだよ!」
 と、朱里とは反対側、鳳明はウォウルの元へと駆け寄っていった。
「何々? 何が起こってるのー?」
「リコ………多分私ら、口を出さないほうが懸命かもしれん…………何て言うかその――」
 ラナロックとウォウルをきょろきょろ交互に見て首を傾げるアルコリアに、シーマは口ごもりながらも言った。
 その場の殆どが、真司と託に目を集める中、突然の叫び声に、全員がそちらを向いた。
「何で!!! 私たち、頑張って止めようとして必死だったのに!!! なんでさっ!!!」
 ウォウルの襟首に掴みかかったている鳳明を、懸命に天樹が押さえ、彼から引き離す。
「これじゃああんまりだ!! みんなも、ラナさんも、ウォウルさん、貴方も!!!!!」
 ウォウルは目を背け、下を俯くばかりだった。