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ブラッドレイ海賊団3~海賊船長と、その右腕~

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ブラッドレイ海賊団3~海賊船長と、その右腕~

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●第2章 まずは周りから

 対イコン用爆弾弓から爆弾を取り外し、航空機用爆弾にまで加工するには、相応の設備、時間、予算などが足りず、ただ、取り外しただけの爆弾を用意して自分とパートナーたちが乗る小型飛空艇ヴォルケーノへと積み込んだローザマリア・クライツァール(ろーざまりあ・くらいつぁーる)は、島へと向かっていた。
「御方様、敵艦隊にございます! 合戦の御準備を!」
 島と、そしてその傍に停泊している幾つかの船を見つけた上杉 菊(うえすぎ・きく)が声を上げた。
「ええ、旗艦も確認したよ」
 ホークアイの力で優れた視力を得たローザマリアは、幾つかの船の中から一際大きいものを見つけた。その甲板に、雅羅の姿も見つける。
 旗艦の周りを囲うように他の船が停泊していることも確認すると、海面から10m前後ほどまで、高度を下げた。
 菊たちもそれに倣い、高度を下げ、縦列編隊を組む。そして、低空飛行のまま距離を縮めた後は、旗艦の周りの船へと高度を上げながらある程度の距離まで接近した。
「小型飛空艇!?」
 船に乗っていた海賊たちが近付いてくる4機の小型飛空艇に驚き、慌てて、甲板に集まって戦闘準備し始める。
 それより早く、ローザマリアたちはそれぞれの小型飛空艇から爆弾を海面に向けて投下した。
 爆弾が海面に反発し、それぞれが目標にした船へと水切り石の要領で近付いていく。
 そうしている間にもローザマリアたちの小型飛空艇は、敵船の上空を抜けていった。その際、小型飛空艇ヴォルケーノに標準装備されているミサイルポッドからミサイルを放つと、甲板に出た海賊たちは慌てふためく。
 海面を反発する爆弾は、目標の船の近くで沈んだかと思うと、爆発し、船へとダメージを与えた。
「うわあぁぁっ!!」
「喫水線への直撃弾――それも、イコンをも葬り去る爆弾に御座いますれば、如何な海賊船と云え大損害は免れますまい」
 爆発の様子に、菊がぽつりと呟く。
 4人は再び集結すると、旗艦に向けて飛行した。



 普通のマスクにしか見えないが、水中などでの呼吸を可能とするナノテクノロジーで作られたポータラカマスクを付けた紫月 唯斗(しづき・ゆいと)は、島から水中を泳ぎ、ブラッドレイ海賊団の船へと近付いていた。
(これですね……)
 船へと近付いた唯斗は、敵の弱点を見抜くのが得意となった自分の力を信じ、船底の中でも薄そうなところを探す。
 そうして見つけた船底に向かって、魔力を集中させた。
 集中させた魔力弾をぶつけると、甲板まで貫通しそうな程の勢いで船底に大穴を開ける。
 甲板まで届いていないにしても衝撃に気付かれてはいるだろう。
 唯斗は早々に、次の船へと穴を開けるべく、移動する。
 次々と開けていくと、乗船している海賊たちの方も異変に気付いたのか、穴の先に見える船室に海賊たちの姿が見えた。
(流石に気付かれましたか。残るはあの大きい船のみ……さっさと開けて入ってしまいましょう)
 唯斗自身に気付いた様子はなかったけれど、水中に何かが居るとは気付かれただろう。
 確認される前に、やるべきことをやって、潜入してしまおうと、唯斗は一際大きな船の底へと近付く。
 再び魔力を集中させると、それを底に向かって放った。
 開けた穴から唯斗は船へと潜入する。



 その頃、島から旗艦へと乗り込んだは、雅羅を探している途中で、海賊2人組に出会っていた。
 短剣と銃を構える彼らに、恵はバスタードソードを構える。
「1人潜り込むとは良い度胸した女だな」
「捕まえてキャプテンのところにつれてくか」
 海賊たちはそう話し合うと、短剣を手にした者は恵へと距離を詰め、銃を構えた者は引鉄を引いた。
 放たれた弾に掠められながら、短剣の刃をバスタードソードで受け止める。
「こんなところで足止めされるわけにはいかないんだもん!」
 声を上げながら、恵は受け止めていた短剣を弾き返すと、剣圧を纏った一撃を放った。
 一度に2回の斬撃を放つその攻撃は、それぞれの海賊たちへと襲い掛かり、痛みを与えていく。



 一方で、船の構造を把握しつつ、海賊の襲撃に備え、死角となった場所を使いつつ、旗艦の中を進むのは、セレンフィリティセレアナだ。
 時折、物陰に、リモコン操作で爆破可能な機晶爆弾を仕掛けていく。
 そうして通路を進んでいると、行く手を阻むように立つ海賊2人組を見つけて、立ち止まった。
 暫く窺ってみるけれど、去っていく様子はない。
「仕方ない……行くわよ、セレアナ」
「ええ」
 擲弾銃バルバロスを手にしたセレンフィリティと、幻槍モノケロスを構えたセレアナは通路へと海賊たちの前に躍り出た。
 戦闘開始と共に、雷撃が海賊たちを襲う。
 いきなりの痛みに、怯んだ海賊たちに向けて、セレンフィリティは擲弾銃バルバロスを帯電させると引鉄を引いた。
「あんたらのせいであの島をリゾート化する話が台無しになったわよ。せっかくもらった宣伝PVのモデルの話、どうしてくれるのよ!」
「いつの間にそんな契約を……まさか、私もじゃないでしょうね」
 驚き訊ねるセレアナに、セレンフィリティは「もちろん」と頷く。
「……はぁ、やっぱり」
 聞くまでもなく、返された言葉に、セレアナはため息を零しながら、閃光弾代わりに光術を一瞬強く光らせた。
 光に目が眩み、怯んだ海賊に向けて、幻槍モノケロスの切っ先で刺し突く。
 短剣を持つそれぞれの海賊は、2人にそれぞれ斬りかかってくるけれど、どちらもセレアナの振るう槍の長さで一定の間合いから踏み込めず、斬ることが出来ない。
 セレアナが止めている隙に、再び、セレンフィリティは帯電させた銃を構える。