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ブラッドレイ海賊団3~海賊船長と、その右腕~

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ブラッドレイ海賊団3~海賊船長と、その右腕~

リアクション

 ブラッドレイ海賊団の船が何かしらの衝撃を受けるなど、騒ぎ始めている中、“黒髭”海賊団の船は、それらに近付いていた。
 甲板に立つ冬山 小夜子(ふゆやま・さよこ)は、構えた魔銃モービッド・エンジェルの射程圏内に、相手の船の甲板に立つ海賊たちが入ったのを確認すると、引鉄にかけた指先へと力を込め、強力な魔力の籠もった弾――大魔弾『コキュートス』を撃ち出した。
 海賊たちに、闇黒と氷結の魔法による痛みが与えられ、相手方の騒ぎは益々大きくなる。
 その隙に、小夜子は背中に装着したミルキーウェイのウィングを広げ、相手の船に向かった。
(ランスロットって……あのランスロットなんでしょうかね。まあ、好き好んで本人以外が名乗るのも難しい名前でしょうけど……)
 “黒髭”が現在捕らえているブラッドレイ海賊団の一味の名前を思い出し、安芸宮 和輝(あきみや・かずき)は考える。
「一先ずは散開、シルフィーと稔は味方の支援に徹してください。私は相手の行動把握に努めますから」
「了解ですわ」
「和輝もお気をつけて」
 パートナーであるクレア・シルフィアミッド(くれあ・しるふぃあみっど)安芸宮 稔(あきみや・みのる)はそれぞれ一言残して、他の味方と共に相手の船へと乗り込んでいく。
 和輝も相手の様子が窺えそうな場所へと、気付かれないように乗り込んだ。
 優れた視力を得て、相手の船員の数を確認した亜璃珠は、魔獣――海上の船の上というだけあって海獣や鳥たちが一斉にその甲板を駆け抜けていくよう、仕掛けた。
「う、うわあっ!?」
「こいつら、何処から来たんだ!?」
 驚き、上げられた声を開戦の合図とばかりに、一見ブレスレッドにしか見えない戦乙女の心から盾を展開させ、パートナーのマリカ・メリュジーヌ(まりか・めりゅじーぬ)と、そして“黒髭”たちと共に、相手の船へと乗り込んでいく。

「そちらが魔獣を仕掛けてくるなら、こちらはアンデッドだよ。行け!」
 旗艦から様子を見ていたゲドーが、リビングアーマーやレイス、ゾンビにグールを放った。
 彼らは旗艦を始めとして、他の船にも乗り込んで、海賊たちと共に、“黒髭”海賊団の協力者たちを迎え撃ち始める。

 小夜子は妖刀金色夜叉を抜き放つと、その刃に禍々しい負のオーラを纏わせ、海賊たちへと斬りかかる。
(大魔弾を撃つには乱戦しすぎてますし、消耗も激しいですし……今は撃つべき時ではありませんね)
 辺りの様子を窺いながら、海賊たちを斬り伏せていく。
 逆に向こうからの攻撃に、傷を負うこともあるけれど、ある程度の傷は気にせず、刃を振るう。
(数を減らせば美緒さんも危ない目に遭わずに済みますから……ってあれは何ですの!?)
 後に続く美緒と“黒髭”のために、少しでも多くの海賊を蹴散らしておこうと考える小夜子は、海賊に交じって向かってくるアンデッドたちに驚きながらも、再び刃に禍々しいオーラを纏わせて、それらを薙ぎ払う。
(電撃で船がおかしくなっては困りますから、ここは1つ……)
 乗り込んだ後、物陰に隠れて様子を窺っていたクレアは、1人の海賊に狙いを定めると、炎術と氷術を同時に操り、凍てつく炎を撃ち出した。
「熱っ! いや、冷たっ!!」
 熱がればいいのか、冷たがればいいのか。
 惑う海賊の周りへと追い討ちをかけるように酸の霧を呼び出して、更なる痛みを与える。
「そちらから仕掛けてくるというのであれば仕方ないです」
 呟いて、稔は素早く蛇矛を振るうと、雷電を纏わせた一撃を突き出した。2回も繰り出された突き技に、先のクレアによる魔法の攻撃もあったため、海賊1人が前のめりに倒れていく。
 一方、海賊たちの行動把握に努めていた和輝は、彼らの騒いでいる理由が、船底の大穴にあると聞きつけた。
 何者かが水中から攻撃を仕掛け、旗艦含む相手の船の底に大穴を開け、入り込んだ水によって沈みつつあるのだと話し合っている。
(これは時間をかけられませんね)
 手間取ってしまえば、こちらも沈没の際に巻き込まれてしまう。
 そう考えた和輝が、仲間たちにも伝えておくべきだと、引き返そうと踵を返したところで、そっと近付いてきていた海賊と目が合った。
「盗み聞きなんて、良くねえなぁ!?」
「そちらこそ不意打ちですか? 気付いてしまわれては残念ですね」
 腰に佩いた長剣で、抜き様に攻撃を繰り出す海賊に対し、光条兵器の巨大剣を片手で軽々と振り回しながら和輝は応戦する。
 船そのものは斬らないように、海賊だけを斬り、不意打ちしようとしたそれを退けた和輝は、物陰に身を隠しつつも、来た道を戻る。
「見つけました! あまり時間がないようです、お気をつけください!」
 そして、甲板を渡り、次の船へと向かおうとしていた“黒髭”たちを見つけると、声を掛けた。
「時間がないだと?」
「各船の底に穴が開けられ、徐々に浸水、何れ沈没してしまう恐れがあるそうです」
 繰り返し訊ねる“黒髭”に和輝は答える。
「分かった。この辺りは任せる、親玉んとこ、行くぞ!」
 頷いた“黒髭”は、一際大きな船――彼らの旗艦へと、向かった。



 “黒髭”海賊団の船より、出撃していく彼らを見送った幸祐は、船の上でも高いところに位置する展望台で、パートナーのローデリヒが用意したコーヒーを優雅に啜っていた。
「ここまで、有効的な戦略を与えたんだ、雅羅を救出してくれないと困る。それにランチの約束も果たせていないしね……」
「恐らく、お腹を空かして帰ってくると思いますし、粗食ながら、残った材料で何か作っておきますよ」
 ローデリヒも頷いて、船の厨房を借りて調理する旨を告げる。