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リアクション
果樹園入り口前では未だに、巨大イチゴモンスターが入り口をふさいでいた。
ヴェルデの仕掛けた罠にはまるイチゴ達を次々と、倒す勇刃の手も疲れでしびれ始めていた。
「魔方陣班はまだか!!」
そう思ったときだった。巨大イチゴモンスターは突如沈黙し、その場に崩れる。
他のイチゴモンスターも同じくして、静かになり、普通のイチゴとなって果樹園に散らばっていた。
魔方陣は、無事マビノギオンの手によって。止められたようだった。
「ふう……これでようやくおわりですのね……」
雅羅は深い安堵のため息をついた。周りの学生達の空気に包まれ、果樹園はイチゴを積もうとする人達であふれかえる。
だが、その安堵の雰囲気は悲鳴によって壊された。
「ひっ、人が!!」
想詠 夢悠(おもなが・ゆめちか)は段ボールを手に持ったまま、硬直していた。
夢悠の視線の先には、先ほどまで立っていた傷だらけの巨大イチゴ。
その傷の中から人間の手が伸びていた。
「なに……これ……」
雅羅もまた、驚き硬直する。
突然その埋まっていた手が動きだす。
「生きてる! まって、今たすける」
夢悠がイチゴを慎重に切り分ける。中から出てきたのは全裸姿の男……変熊だった。
「んんっ?」
変熊は意識が戻り、素早く立ち上がった。
「あ、あれイチゴモンスターは? 俺を食べたあいつはどうなった!?」
きょろきょろと変熊は周りを見回すが、見えるのはこちらを凝視する生徒達。
「もしかして、助かった!? ありがと〜、ありがとう〜……ぐすん」
起き上がるやいなや、すぐに変熊は泣き崩れる。
「あのー、無事なのか?」
夢悠がおそるおそる聞くと、変熊は手でグッドポーズを作ると、笑顔を浮かべた。
「この通り、俺様は強いからな! さっ、イチゴを集めるんだろう?」
変熊もイチゴを集めを始める。
「そういえば……力がみなぎるリンゴってどこにあるんだ」
「そうね。一応リンゴはあるんだけど……」
夢悠と雅羅があたりを見回し、リンゴを探す。
すると夢悠が一角のリンゴの木を見つける
「あ! これ『力のみなぎる木』って書いてる」
雅羅もそこに駆け寄ってくる。
そこにある木は、葉っぱは生い茂っているものの、肝心な果実がなかった。
「ううん、でもリンゴがついてないわね。てことは……時期がわるかったのかしら」
だが、一人この話に心臓を飛び上がらせている男が居た。
変熊だった。
「あ、わーはっは。そういえばそれ、俺様が来たときからリンゴなんてついてなかったのだよ!」
「本当に?」
夢悠が疑いの目を変熊に向ける。
「本当だって! 俺様が仮に嘘をついてたとしてどうする、リンゴを隠す場所なんて無い」
「……すみません。変熊さんがちょっと挙動不審に見えたから。気のせいだったみたいだ」
夢悠はそれ以上の追求は出来ずに、再びイチゴ狩りに戻っていった。
(あ、危なかった……)
変熊は夢悠とのやりとりに、心臓を高鳴らしながらも冷静さを見せつけていた。
再び変熊も疑われないように冷静さを見せながらイチゴ狩りを再開したのだった。
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