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イチゴの化け物!?

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イチゴの化け物!?

リアクション

 だが、歩いていると雅羅は、足下で何かを踏んだような感触に襲われる。
「どーしたのー?」
 佐々良 縁(ささら・よすが)が、様子がおかしい雅羅に聞いた。
「いや、なんか踏んだような気がして……」
 雅羅は首をかしげて足元を見るが、ただの土で特に何もない。
 気のせいかと思いながら、雅羅は聞いてきた縁を見る。すると今度は雅羅が不思議そうな顔をした。
「あの、重くないんですか?」
 縁の腕には、顔を少し赤らめた著者・編者不詳 『諸国百物語』(ちょしゃへんしゃふしょう・しょこくひゃくものがたり)がお姫様だっこで収まっていた。
「ぜーんぜん。だって、百ちゃん軽いもん」
 そう言ったとたん、茂みの奥からセレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)と、セレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)が飛び出してくる。
「ちぇっ、ライトニングブラストがなかなか効かないだなんて、嫌いだわイチゴ」
「あれ、セレンはイチゴ好きじゃなかった?」
「さすがにこいつは嫌いよ。食べれないし」
 セレアナはシーリングランスでイチゴモンスターの動きを止めながら、その隙にセレンフィリティは放電実験を放つ。
 そんな激しい攻撃を繰り返しながらも、イチゴの話を広げていた。
「これほどのイチゴなら、やりようによっては食べられないかなあ?」
「「えっ?」」
 突然の縁の言葉に、セレアナとセレンフィリティは同時に驚きの声を上げる。
 いつの間にかセレアナ達のそばには縁が立っていた。
「……まさか本当に食べたりしないよね、縁ちゃん?」
 縁の後ろから、諸国百物語はため息を吐くように声を出して聞いてみた。
「さあ、さあ、食べる……じゃなかった、倒すよ〜百ちゃん、それに雅羅さん」
「えっ……あ、はい!」
 不意に呼ばれた自分の名前に雅羅は、戦いの構えをとった。
「はあ……イチゴの事になったら、我を忘れるんだから、縁ちゃん……」
 諸国百物語を深いため息をつきながらも、縁の攻撃を魔法でサポートする。
「しかし、なかなか倒れないねーこのイチゴ。はやく食べたいのになあ」
「だから、縁ちゃん。食べたらおなか壊すからだめ……」
「うーん……どうしたものかしら」
「みんなー! こっちにそいつ連れてきてー」
 縁、諸国百物語、雅羅が戦いながらも考え込んでいるところを、数メートル先でセレンフィリティが叫んだ。
「ああ、一気に片付けるのね」
 セレアナは何かを分かったのか、ぽつりとつぶやくとイチゴモンスターを一方的に追い込んでいく。
 雅羅達もそれにならって追い込む。
 すると、爆発と同時にイチゴモンスターが燃える。
「あー! いちごさんが!!」
 縁ががっかりそうな声を上げる。
 だが、燃えさかっているイチゴモンスターはセレンフィリティの冷線銃で一気に凍る。
 つづけてセレアナが、それをライトニングランスで貫くと、イチゴモンスターは粉々に砕け散ってしまった。
「イチゴシャーベット、一丁あがりい!」
「イチゴシャーベットっていうより、これは、おなかを壊しそうなかき氷だわ……」
「まあ、だれも食べないでしょこんなの」
 セレンフィリティとセレアナがそんなことを言っているそばから、縁がゆっくりと崩れたイチゴモンスターのそばへと駆け寄ってきていた。
「わー、イチゴかき氷だ」
「ちょ、やめておきなさい。ほらセレアナ、ちょっと縁を止めてあげて」
 セレアナも焦った様子で、縁の手を捕まえた。
 すぐに、諸国百物語が駆けつけてくる。
「すみません……縁ちゃんがご迷惑を……」
 セレアナは首を横に振って、縁を諸国百物語に渡した。
「もー、せっかくの大きいイチゴだったのにー」
 縁は口をとがらせて言った。
「もうちょっと頑張れば普通のイチゴが食べれるから、ねっ?」
 まるで、母親が子供をなだめるかのように、諸国百物語は縁をなだめ、そのまま引っ張っていった。