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リアクション
別の一角。セイニィが無作為に仮面を増殖し、配りまくったために貧乳強盗団の勢力はツァンダ中に広がっている。
「きゃあーっ!」
ここでも襲撃される巨乳の悲鳴が!
「助けに行くわよ!」
と、路地から駆け出そうとするルカルカ・ルー(るかるか・るー)に、弥涼 総司(いすず・そうじ)が手を伸ばして引き留める。不思議なことに、その顔には仮面が取り付けられている。
「待て!」
「でも……」
「奴らの手口を観察し、確実に捕らえるタイミングを探るんだ。針を飲み込んでから一気に釣り上げなければ、魚は逃げる」
「……仮面を着けているとは言え、理性を保っているようだな」
と、ダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)。苦しげにルカルカは頷いた。彼女らは、貧乳強盗団を壊滅させると息巻く総司の援護に来たのである。
「……そう」
そして、彼らが見守る前で強盗団は女性の胸元を切り裂き……
下着を奪い……
サラシを縛り上げて……
「って、ほとんど終わってる! 逃がしちゃうわよ!」
「いや……来るぞ!」
ルカルカを再び静止する総司。その視線の先で、くるりとトンボを切りながら着地するセイニィ・アルギエバ。なぜかバスタオルをかぶって体を拭いている。
「……一網打尽だ」
総司が力を解き放つ。催眠術を受けて、強盗団の女子がぱたぱたと倒れた。
「誰!?」
なんとかこらえきったセイニィが振り返り、叫ぶ。仮面の奥の目を怪しく光らせ、進み出る総司。
「巨乳狩り狩り……だ。貧乳は人にあらず。その所行を見過ごすわけにはいかない」
「ルカたちは別に、そこまで言うつもりじゃないんだけど」
仮面の悪意で過激な発言をする総司に、つうっと頬に汗を垂らしながら、ルカ。
「貧乳は人にあらずですって!? あんたみたいなのがいるから! 巨乳は消えてしまえばいいんだ!」
「戦争じみてきたな」
セイニィの反論にぼつりと呟くダリル。
「巨乳狩り狩り? なんてことを……」
はっと、新しい声があがった。通りがかりなのか、路地から姿を現すその姿を見て、にやりとセイニィが笑みを作った。
「……ここはまかせたわよ! あいつに痛い目、見せてあげなさい!」
得意のみのこなしで接近するなり、どこからか取り出した仮面を、その女性……レイナ・ミルトリア(れいな・みるとりあ)の顔にかぶせたのだ!
「あっ!」
声を上げるルカルカの目前で、レイナの体がざわとうごめく。その唇が告白な三日月を描いた。
「ぺったんは正義、無駄乳狩りは正義……その邪魔をするなんて、人間としてあるまじきことだわ……」
「ふん、セイニィを逃したのは惜しいが、お前もこいつらと同じにしてやる」
と、総司が示すのは、倒れた強盗団員……その胸にマシュマロや胸パットを詰め込んで増量された姿である。
「逃したのはこんなことをしてるからじゃないかしら」
彼女らの仮面を外しながら、ぽつりとルカルカ。
「さあ、どこからそぎ落として欲しいか言ってごらんなさい!」
「自分の体に出っ張りがないからといって、見苦しいぞ!」
レイナの大鎌を、総司がその身で受ける。がきん! がきん! と硬質な音があたりに響いた。
「差し詰め、巨乳狩り狩り狩り……ややこしくなってきたな」
「これ以上、ややこしくならなければいいんだけど」
ダリルと共に頭を押さえるルカルカ。
「ご期待通りに現れましょう……」
ふらりと、闇夜に紛れるように現れるものが居た。求道者エリザベータ・ブリュメールである。
「……いつの間に後ろに……!」
「いただくわ!」
エリザベータが素早く駆け抜ける。その間に、ルカルカは巨大な剣を抜き、交差するように打ち合った。
「……くっ、私がしくじるなんて!」
「この街は変態しかいないわけ!?」
理由は伏せるが、スカートを押さえながら叫ぶルカルカ。
「乳を巡って争う連中と言い、俺の理解を超えた世界だな……ともかく、仮面は外させてもらうぞ」
「エリザベータ、やっと見付けた! 加勢するわよ!」
「なんだか知らない間に状況がますます悪化してるなあ……」
セフィー・グローリィア&オルフィナ・ランディ(おるふぃな・らんでぃ)が到着。
「感じるわ……同じ仮面を着けた仲間ね?」
「ええ……私のコレクションのため、協力してちょうだい」
斬り甲斐のない総司から離れて、レイナが声をかける。その視線は、ルカルカに注がれていた。
「……ええ。ちょうど、スイカくさくてうざったいと思ってたのよね」
「ああもう、こうなったらやけよ!」
「問答無用!」
すっかり強盗団の標的となってしまったルカルカに迫る二人。一瞬の後には、ダリルのフラワシがエリザベータを、レイナの大鎌をセフィーとオルフィナが食い止めていた(総司は観察に戻っていた)。
「……邪魔よ。無駄乳を狩り尽くしてやるわ」
細身のレイナが力を込めると、ぐっと二人の武器を押し返す。鎌の柄が、ぐに、と乳房を押しつぶしていた。
「お前な……っ、そうは言うけど、先に狩るべき相手がいるんじゃないか? 強盗団の仲間面してるやつとか、よ!」
押されながら、苦しげに言うオルフィナ。はっと、レイナが隣を見た。
「……その胸! 仲間の振りをして私を騙していたのね……!」
悪意の仮面によって増幅された疑心暗鬼が、一瞬で怒りの矛先をかえる。レイナの鎌がひらめいたと思った瞬間、エリザベータの仮面が切り払われていた。
「……守ってくれてありがとう!」
すかさず、その体を横から突き飛ばすルカルカ。跳ね飛ばされたレイナの体が壁際に打ち付けられた。
「……ぐっ!?」
「コンプレックスに感じることなんてないわ。……ほら、素敵な胸よ」
「や……っ、やめ……! 私は、無駄乳になんて……」
ルカルカの手がレイナの胸に伸びる。単純な筋力で大きく上回る相手に、レイナは抵抗することができない。
「そうは言っても、体は正直よ……」
「ああっ!」
中略。
エリザベータがセフィーによって縛り上げられる頃には、すっかりレイナは抵抗する力を失っていた。
「仮面……外す、よ?」
ルカルカの言葉に、こくん、と頷いた。そっと、その仮面が外される。
「これでよし、ね。この子には、私がお仕置きしておくわ」
「もう一枚で前回の記録を超えられたのに……」
「反省してないな、こりゃ」
縛られたエリザベータを囲んで、セフィーとオルフィナがため息をついている。
「うん……やはり、貧乳は巨乳によって駆逐されるべしということだな。自然な結末だ」
と、その様子を腕を組んで最後まで見守っていた総司が頷く。
「……ああ。忘れる所だった」
ひょいとダリルが手を振り上げた。その手に握られた光条兵器が、総司の仮面を両断していた。
「……はっ、俺は何を。貧乳をいじめてえもいわれぬ気持ちになってしまったことしか覚えていない」
「……なぜか私もたゆん至上主義者に制裁を加えないとって使命感しか覚えてないわ」
総司が頭を押さえて呟いたことに、レイナ……まだ人格が戻っていないらしい……が、ぎゅっと鎌を握り直した。
「仮面のせいでやったことだ。お互い、恨み合うのはなしにしてくれ。これ以上ややこしくなっても困る」
と、ダリルが仲裁に入る。
「……やっぱり、悪意の仮面を着けた人の味方についても、場がむやみに混乱するだけだった気もするね」
「そんな対策を考えずに済むように、こんなくだらないこと、もう二度と起きて欲しくないわ」
ルカルカとセフィーが、一様に頭を押さえた。
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