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リアクション
多くの人で賑わう浜辺。
海の家の客たちは皆楽しそうにテーブルを囲み、わいわいと会話を楽しんでいる。
そして浜辺からはビーチバレーで盛り上がる歓声や、ビーチフラッグで負けたものの悔しそうな声、そして――
「うわあああああああああああ!!!!!」
悲鳴とともに爆発音が響いていた。
「くくくくっ! まーた引っかかってやんの!」
トレイで口元を隠しながら葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)は笑いを堪えていた。
爆発のあった方角から煙が立ち上るのが見えて、自分の仕掛けたトラップにまた誰かが引っかかったのかと思うと笑いがこみ上げてくる。
せっかく海に来たのだからと朝早くから浜辺のあちこちにトラップを仕掛けていた。
幸せなカップルを驚きと恐怖のどん底に落としてやるのであります! なんてぶつぶつ言いながら仕掛けたトラップだったが、引っかかるのはむさくるしい男たちばかり。
海辺にうようよ生息しているリア充を狩りに来たというのに、捕まるのは非リア充ばかりだ。
さすがに殺傷力があるものなどは使わないが、引っかかるのが幸せ絶頂なカップル以外というのも嘆かわしい。
捕まえてごらんなさーい、なんてアホみたいな会話をしながら波打ち際を走るカップルが引っかかるようにと仕掛けたトラップも、非リアの連中がことごとく引っかかって潰してくれている。
トラップ自体は目に付きやすく、大変分かりやすい位置に仕掛けてあるので注意して歩いていればすぐによけられるものだ。だからこそ恋は盲目、周りが見えなくなっているほどのバカップルなリア充の連中を引っ掛けるために作ったというのに、朝からかかってくれるのは男たちだけ。
再びどかんという音とともに遠くで煙が上がったのを確認して吹雪は海に向かって声を上げた。
「リア充爆発しろー!」
「このいたずらっ子!!!」
不意に後ろから頭をスパーンと叩かれて、衝撃に口から痛いと声が漏れる。
「も〜、何をするのですか!」
相方のコルセア・レキシントン(こるせあ・れきしんとん)に涙目で訴えようと振り返るが、コルセアは『言わなくても分かるよな、仕事しろよ』という雰囲気をその笑顔で全て語っていた。
「……しかしこんな連中しかお客にいないんですか? もっとこう、海っていろいろな人が集まるところだと自分は思うのです。家族連れとか、女子大生とか、サーファーとか!」
「だからこそ海の家にワタシたちみたいな女子が配置されているんでしょうが。しかも海らしく水着で」
噂の雪女郎以外はほとんど姿を確認できない女子だが、海の家には水着姿で確かに存在している。
浜辺に集まった紳士たちはそのほとんどが雪女郎目当てで来ているようなので、海の家でバイトをしていてもナンパされたりなんていうイベントは全くおきていない。チャラチャラした連中に話しかけられて絡まれるのも困りものだが、普通の会話くらい出来る人間がもっと多くてもいいのではなかろうか。
「でもあいつら注文取りに行っても声が小さくて聞こえないんですよ! 目も合わせないし、コミュニケーションがなってませんよ!」
吹雪の言葉に客席の男たちがビクリと肩を震わせるのをコルセアは横目で見て溜息をつく。
「まぁ、確かに冴えない連中ばかりだと思うけど……単純に女性が苦手なだけなんじゃない? 最近そういう人増えてるって聞くし」
話している最中に再び上がる悲鳴と爆発音。そして吹雪の野次が海に向かって飛んでいくのを見て、今度は手に持っていたトレイを吹雪の頭に垂直に落とした。
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