波羅蜜多実業高等学校へ

葦原明倫館

校長室

空京大学へ

囚われし調査隊、オベリスクの魔殻

リアクション公開中!

囚われし調査隊、オベリスクの魔殻

リアクション



6章 「脱出、迫る崩壊の時」


 〜遺跡内部〜


 脱出する調査隊の後方にて、モンスターやゴーレムの迎撃を行っていたレグルス・レオンハート(れぐるす・れおんはーと)
 金色の髪に、超感覚による影響の金色の耳と尻尾を生やした姿は、金狼と呼ぶにふさわしい。
 迫るゴーレム吹き飛ばし、一か所に集めた上で凍てつく炎にて一網打尽とする。
 たった一人で大群を薙ぎ倒すその様は、見ている者がいれば異名でも付きそうなほどであった。

 モンスターの出現が止み、彼は迫る轟音を聞いた。

「ん? モンスターの出現が止んだ……それにこの音……なんだ?」

 彼の目の前の通路から、涙目の詩穂と、少々走り疲れた様子のエースと、やはり表情を変えていない
 微笑を湛えたメシエが走ってきた。

「逃げてッ! 逃げてぇーーーッ!!」

 詩穂がレグルスに向かって叫ぶ。他の二人も逃げろというので、合流し出口に向かって走り出すレグルス。

「おい、一体何が……」

 直後、後方から通路を粉砕しながら人型の触手の化け物が現れた。

「おいおいおい! なんだあれは……あんなもの捕まったらシャレにならんぞ」
「……あれでも、元ゴーレムだよ」
「とてもそうは見えないんだが……」

 逃げる四人を追いかける触手の化け物は通路や壁などという物を完全に無視し、爆進してくる。
 柱なども破壊しているためか、徐々に遺跡全体が崩れ始めているようだった。

「このままでは出口に付く前に追いつかれる……攻撃して足止めを!」

 攻撃しようとするレグルスを詩穂が止める。

「あっ! 攻撃しちゃダメッ!」
「なぜだッ!?」

 メシエがすかさず説明に入る。

「どうやら、あの触手はすぐに再生してしまうようでね。成す術もなかったよ」
「……ってことは逃げるしかないってことだな」
「そうだね……物わかりが早くて助かるよ」

 出口が見えた時四人は誰かとすれ違う。
 それは……隊長のグルナであった。

「隊長さん、何をッ!?」

 グルナは振り向かず、触手の化け物に突進しながら話す。

「調査隊の不始末は、ちゃんと隊長の俺がつけないとだからな!」

 グルナは触手の化け物の前に立ちはだかると、息を大きく吸い込んだ。

「アルエットォッ!! これが貴様の求めた力かっ! こんな異形が貴様の望みなのか!」

 地面を強く蹴り、高く跳躍する。触手の化け物は触手を無数にグルナ目掛けて放つ。
 彼は大剣を高速で振り、全ての触手を斬り裂いた。
 そのままの勢いで、触手の化け物の右腕を両断する。

 右腕は地面に落ち、しばらく蠢いた後、その活動を停止した。
 メシエはすかさず説明に入る。

「ふむ。完全に本体から切り離されると、再生能力は発動しないようだな。
 実に興味深い……」

 グルナは咆哮を上げると、走りながら怒りの煙火を発動させる。
 地面が割れ、触手の化け物を吹き出した紅蓮の炎が包み込んだ。
 火の勢いに押されたのか、触手の化け物の動きが鈍る。

「いいかッ! アルエットッ!! 短い時間だったがお前は調査隊の一員だった!
 ならば、守るべき隊員に変わりはない!! 勝手に死ぬことは許さんぞッ!」

 大剣の深い一撃が大きく触手の化け物の頭から胴体を裂いた。
 触手が切り開かれ、先ほどのゴーレムの装甲……その胴体部分が露出した。

 グルナはもがく触手の化け物の胴体に飛び乗ると、露出しているゴーレムの胴体部分を大剣で破壊する。
 中には気を失い、ぐったりとしたアルエットがいた。
 繋がったコードや触手ごと引き千切ると、アルエットを抱えて跳躍する。
 
 触手の化け物は苦しむように左腕を天に伸ばすと、白く変色していき、石のようになった全身にひびが入る。
 数秒の後に粉々に砕け散った。

「契約者の方々、今回は調査隊の不始末の対処……本当に助かった。
 心から礼を言わせてくれ」

 グルナはアルエットを抱えながら、深々と頭を下げた。

 エースは紳士的に答える。
「いえ、そんなに頭を下げないでください。俺達は当然の事をしたまでなのですから」

 メシエはやはり表情を変えずに、
「興味深いものも見せてもらったし、こちらが礼を言いたいぐらいだね」

 詩穂が泣いて赤くなった目をこすりながら、
「皆さん無事で、本当によかったです!」

 レグルスが豪快に、
「はっはっはっは! 終わりよければすべて良し!
 まあ、皆とりあえずここから出ようか。いつ崩れるか、わからないからな」

 一同は脱出のため、その場を後にした。

 後日、アルエットは法的な裁きを受ける事が決定され、
 あらためて契約者達全員がグルナから感謝の言葉をもらったのであった。