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THE 合戦 ~ハイナが鎧に着替えたら~

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THE 合戦 ~ハイナが鎧に着替えたら~

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6ターン目:『三国志演技』 〜〜 ゴリ押し編 〜〜

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 呂布奉先。その名を知らぬ者はいないであろう。
 三国志においては、まがうことなく最強とされる男である。人間的に欠点は多いもののそれを補って余りある魅力を秘めており、人気も非常に高い。
『三国志演義』によると、身長は一丈(2.4m)。名馬赤兎馬にまたがり、方天画戟を愛用の武器とし、きらびやかな鎧をまとうという豪壮な武者である。彼の驍勇無双ぶりを最もよく表す描写としては、虎牢関の戦いにおいて張飛と互角の打ち合いをし、関羽、劉備が加わってもなお持ちこたえる「三英戦呂布」が特に有名である。
 暴君、董卓仲穎を女にそそのかされて暗殺し、中原を彷徨した後は曹操に討たれるまで、武勇伝には事欠かない。
 そして……。
 呂布は平原にいた。このバグゲームが始ってからずっと同じ場所で。獰猛な瞳で迫り来るシャンバラ軍の部隊を見つめている。
「……来たな。誰から死にたいのかは知らんが、全部あの世へ送ってやろう」
 大方の予想通り屈強な大男で、やたらと強そうな馬にまたがっている。こいつがかの有名な赤兎馬のようだった。率いているのは歩兵だが、本人だけが騎乗しているという部隊らしい。
 呂布のことだ。兵士などあって無きが如し。彼一人のほうが、3000の歩兵軍団より強いのではなかろうか、ということで機動力やバランスなど全く無視した構成になっていた。
 バグ信長の居城へと続く進路のちょうど真ん中。こいつを倒さないと敵の城へは辿り着けない。そんな場所で待ち構えている。
 実際のところ、先ほどからハイナが平原をうろうろしているのだって、何も敵を挑発していたわけでも作戦があったわけでもない。
 呂布がいたから通れなかったのだ。あまりお相手したくない気持ちはよくわかる。
 だから、そのまま放置されていたのだ。
 もちろん、呂布は一人である。孤高の最強男に仲間など不要なのであった。連れ立っている武将もいない。
 いや――。
「陳宮……」
 呂布は、かつての軍師の名を口にした。共に戦い共に死んだ無二の存在だった。
 視線の見つめる先、彼は見つけた。こちらに軍を進めてくる敵軍の中に、かつての懐かしいオーラを。じっと見ていると、一瞬目があったような気がした。
「陳宮……!」
 呂布はは楽しそうな笑顔を浮かべると赤兎馬を操り、兵士たちと共にゆっくりと近付いてくる……。
「また天下で遊ぼうぜ……」



「……誰かが私の噂でもしておるのですかな?」
 平原の戦場で、陳宮 公台(ちんきゅう・こうだい)は、一瞬走った悪寒にぶるりと身を震わせた。
 呂布の頭脳として最後まで支え続けた軍師の英霊が彼であった。三国志において様々な名軍師が登場するが、陳宮でなければ呂布の軍師は務まらなかったであろう。せっかくの上策を呂布が全然言うことを聞かずに憤懣するところなど素敵であった。
 その点においては陳宮というのは稀有な存在なのであった。
 だが、今回この世界にやってきた陳宮はシャンバラ軍として参戦している。
 パラミタに召還され英霊として過ごしているうちに、彼にも……もっと大切なものが出来たからであった。
 天下の呂布と戦いたいマスターのために、陳宮はその智謀をもってかつて仕えた呂布と対決することになったのだ。
 だから、付き合ってこの世界にやってきただけだからね、別に呂布なんて興味なんてなかったんだからね、誤解しないでよね、といわんばかりにそ知らぬ顔をする陳宮。
「呂布が……、こっちへ来たな……。お前のことガン睨みしながら迫って来るんだが」
 一生懸命他人のフリをしようとしている陳宮に、マスターの龍滅鬼 廉(りゅうめき・れん)が呼びかける。
 彼女は、敵本陣への道を切り開くために、シャンバラ軍として参戦していた。
 戦国時代の武将村上義清 としてこの世界に現れた廉は、自身も和風の鎧を身に纏い、刀で武装した歩兵を連れていた。
 平原で呂布が猛威を振るっている。ならば是非戦ってみたい、と兵を率いてやってきたのだが、いざ目の前にすると凄い迫力に気おされそうだった。思わず、ゴクリと唾を飲み込んでしまう。
「陳……当然、あの怪物と戦う策は考えてあるんだろうな? お前が一番彼をよく知る男だろう……」
「呂布の性格は、一言で言うと粗にして野にして卑ですな。主に凶暴ですが、エサを与えておくとたまに大人しいこともあります。とりあえずバカなので肉でも放ってやるとすぐにかじりついて騙されるかと思いますな」
「お前……、本当にかつて呂布と一緒に戦っていたのか?」
 あまりの言いように村上義清はため息をつく。あまりあてになりそうになかった。
 そこへ、3000の兵士を引き連れた呂布が方天画戟を振り上げて襲い掛かってくる。
「陳宮〜〜〜!」
「こ、怖っ!? 笑顔だよ。呂布とても嬉しそうに笑ってるぞ!?」
「肉をもらえるのが相当喜ばしいようですな」
「違う! アレは俺たちを殺すのを楽しみしている笑いだ」
 いずれにしろこのままほうっておくわけにはいかない、と村上義清が迎え撃つ。
「我こそは村上義清! いざ尋常に勝負せよ!」
「……誰だお前? そんな奴、名前聞いたこともないぞ」
「いや、わかってるんだが、そんなこと言わないで欲しい。地味に傷つくから……」 
 村上義清は一瞬落ち込んだが、すぐ気にを取り直した。一度はあの武田信玄の軍勢も敗走させたことのある武勇を持って、呂布と激突する。
 呂布軍3000と村上義清軍の1000もいきなりぶつかり合った。戦いを始める。
 大和武士である。三国武将なにするものぞ! 裂帛の気合と渾身の膂力をもって、攻撃を繰り出した。
 特殊武器、【妖刀紅桜・魁】が、方天画戟とぶつかり合う。
 ギリギリギリ……。【妖刀紅桜・魁】がギシギシと軋む。強烈な圧力。恐るべし方天画戟。さすが呂布が愛用する最強武器であった。
「くっ……」
 画面が暗転し、一騎打ちモードへ移行する。

呂布奉先VS村上義清

LIFE◇LIFE

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「いい度胸だ、村上とやら。準備運動がてらに遊んでやろう」
「こいつが言うと本当にそれっぽいよな。まだ全力の30%くらいしか出していないような」
 舐められてたまるか、と村上義清は呂布を正面から睨みつける。
「……」
 呂布もにらみ返してきた。
「怖っ! 眼力だけで人殺せるだろ、こいつ。俺、もうちょっとで目を逸らせそうなんだが。別にビビってないぞ、ビビってないからな!」
「お任せください。少し手伝ってあげましょう」
 陳宮は一騎打ちには参加しないものの、二人の戦闘フィールドに割ってはいる。
「呂布!」
「陳宮!」
「……あれ、何だ!?」
「……!」
 陳宮の指差した方向を呂布は見た。
「さあ、今の内ですな!」
「陳……、お前、呂布ディスってるだろ?」
 とにかく、今がチャンスと村上義清は攻撃を仕掛ける。
 ガガガガガ……! とお互いに凄まじい攻撃を交し合う。

呂布VS義清

LIFE◇LIFE

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「たいしたことないな。高順でももう少しはやるぞ」
「な、なんだこいつ! ダメージ受けてないじゃないか」
 村上義清は戦慄する。異常な強さだった。おまけに高順とか関係ない武将名出されても困るんだが……。
「てこずってるみたいじゃねえか、リーダー。どうやら、“ライバル”のこの俺様の出番のようだな」
 自信ありげな笑みを浮かべて戦いに乱入してきたのは、廉のパートナーの張 宝(ちょう・ほう)だった。黄巾の乱の指導者である張角の次男で、事実上黄巾賊の指揮を取っていたのは彼である。
 三国志を彩る武将同士、張宝は負けん気をあらわにして呂布に挑む。後方待機のはずだったのだが、戦いが始ったのを見ていてもたってもいられずに、前線へ出てきたのだ。
「くくく……、俺様の魔法攻撃に耐えられるかな!」
「……誰だ、お前?」
 見たこともないぞ、こいつ……と呂布は首を傾げる。
「……ダメだろ、ライバル。全然覚えられていないみたいだぞ」
 村上義清の台詞に張宝はふっとカッコよく笑う。
「黄巾賊が敗れたのは、官軍の卑劣な罠に嵌っただけだ。だが、あんな幸運が何度も続くと思ってもらっては困るぜ」
 言うなり、彼はスキルを放つ。村上義清を連携して反撃に出た。

呂布VS義清

呂布VS張宝

LIFE◇LIFE

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「……なるほど、二対一だとライフゲージはこんな感じになるのか。呂布の下のゲージは、はみ出した分だな」
 頷く張宝に村上義清がすかさず突っ込んでくる。
「張……、お前、ダメージ受けた俺よりライフ少ないじゃないか」
「問題ない、魔法使いだからな。……後方から、スキル全力放射だぜ!」

呂布VS義清

呂布VS張宝

LIFE◇LIFE

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「むっ、妖術使いか……」 
「はははははっっ! 見たか、呂布! これが俺様の力だぜ! そのまま倒れちまいな!」
 呂布のライフゲージを削り、高笑いする張宝。
「いや、倒れるの張だから。しっかりライフゲージ見ろよ……。お前、凄いダメージ食らってるだろ……」
 ついうっかり鎌状の杖で攻撃も混ぜてしまったためにダメージを受けてしまった張宝。
「二対一でこの強さか……。化け物め」
 なんとでたらめな、と村上義清は想像以上の強敵に呆れるばかりだ。
「……」
 その呂布が興味を失ったように後ろを振り返った。
 ドドドドド! と、別の部隊が接近しているのに気付き、呂布は赤兎馬を翻す。新たな敵だ。奴らと遊ぼう……。明らかに背中を見せて去っていこうとする。
「……隙あり!」
「あっ、バカ。簡単に挑発に乗るな!」
 村上義清の制止も虚しく、張宝は鎌状の杖を手に呂布に飛び掛る。
「俺に隙などない」
「げふっ!」
 呂布の振り返りざまのパンチを綺麗に食らって張宝は宙を舞った。地面にバウンドしながら倒れる。これは痛そうだった。
「……呂布、強すぎるだろ……」
「おお、少しは男前になりましたな」
 ボコボコの張宝を見て、陳宮が塩を持ってやってきた。さっそく傷口に塗り込み始める。
「痛ててててて! 傷口に塩を塗るな! ってか、陳宮、これっぽっちも役に立ってないじゃねえか!」
「何を失敬な。私は、あなた方が一騎打ち(?)をやっている間、1000の兵で3000の呂布軍を相手にしてたのですよ。少しは減らせたと思いますが」
 ゴリゴリゴリゴリ……、陳宮は塩を塗り続ける。
 ギャアアアアアア! と悲鳴を上げて張宝は動かなくなった。
「おのれ呂布め! なんと言う非道な! ここまでするとはもう許して置けませぬ!」
 怒りを露にする陳宮。
「いや、止めさしたの陳だから……」
 村上義清は呆れ顔でため息をつく。
 呂布は、そんな彼女らに視線をやりながらも、追いかぶせで攻撃を繰り出してくることはない。じりじりと対峙しながらさらに迫り来る敵を待っているようだった。
 強敵は多ければ多いほうがいい。不適な笑みはそう言っている。
「変わっておりませんな、あの頃と……」
 悠然と構える呂布の姿を懐かしそうに見つめる陳宮の表情が印象的だった……。