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【ぷりかる】幽霊夫婦の探し物

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【ぷりかる】幽霊夫婦の探し物

リアクション

「お疲れ様です」
「大変だったねぇ」
 稲穂と木枯はホリイを労った。
「……ありがとうございます。でも心配を置いたままで」
 三人は約束通り一緒に親睦会を楽しんでいた。
「地下の少女の事ですね」
 稲穂はホリイの心配事を見抜いて言葉をかけた。
「はい。何も起きなければいいんですけど。何かをしてあげたいのに幽霊ですし、時間もなくて引っ越しも考えていないようで」
 ホリイはこくりとうなずいて胸の内を話した。
「そうだねぇ。それでも何とかなるよ」
 木枯はうなずきながら賑やかに親睦会を楽しむ仲間を眺めていた。何か起きたとしても目の前にいるこの人達がいれば何とかなると明るい。
「そうです。気を付けるように言ったのなら大丈夫ですよ。もし何か起きたら助けたらいいです」
 と稲穂。まだ来ない事を考えて今の楽しい親睦会を楽しまないのはつまらないから。
「……そうですね。これ、美味しいです」
 ホリイは明るくなり、幻覚中和作用クッキーを食べた。
「これで幻覚茶も大丈夫だよ。次は霊体になろうかなぁ」
 木枯も幻覚中和作用クッキーを口に放り込んだ。
 この後、木枯は好奇心で幽体離脱クッキーを食べて楽しんだ。ちなみに『鉄の胃袋』を持つ木枯は食べ過ぎても腹はこわしにくいので存分に料理を食べる事が出来た。

「まぁ、美味しそうですわ」
 グィネヴィアはローザマリアの用意したパイ達に感動し、ゆっくりと口に運ぶ。
「私の故郷アメリカの味よ、と言ってもよく分からないんだけどね。料理を作り始めたのも割とここ数年だし。でも味には自信があるつもりよ。どうかしら?」
 ローザマリアはグィネヴィアに味を聞く。
「……美味しいですわ」
 グィネヴィアはほっこりした顔で感想を言い、もう一切れ口に運んだ。
「飲み物もどうぞ」
 北都が用意したジャスミン&ライチのノンアルコールのお酒をグィネヴィアのグラスに注いだ。
「ありがとうございます」
 グィネヴィアは礼を言うなり一口。
「グィネヴィア様、今日は楽しかったですわね」
 麗は喉を潤してから一息を入れた。
「はい。皆様のおかげでとても良い日になりましたわ。捜索にお城探検、とても面白かったですわ」
 グィネヴィアは満足そうにしている。
「グィネヴィア様、幻覚茶を飲む際は幻覚中和作用クッキーをお忘れないように。しかし、無事に戻られて本当に安心しましたよ」
 アグラヴェインが念のためにとグィネヴィアに幻覚茶について注意した。これ以上に問題が起きては大変なので。麗とグィネヴィアが戻って来た時は本当に安心したものだ。
「ありがとうございます。でももう一度だけお花畑と海が見たいですわ」
 グィネヴィアは素直にアグラヴェインの注意を聞くも幻覚を思い出していた。
「それなら僕も付き合うよ。ちょうど、興味を持っていてねぇ」
 そう言って北都はグィネヴィアと一緒に幻覚茶を一口に飲み、感想を話し合った。素敵な花畑だったとか綺麗な海だったとかと。

「……この幻覚中和作用クッキー、なかなか上手に作っているな。効果も抜群じゃねぇか」
 白銀は幻覚中和作用クッキーを食べ、幻覚茶を飲んで楽しんでいた。

 調理スペース。

「……何で俺達が片付け係なんだよ」
「だよな。オレ達も頑張ったのによー」
 ぶつぶつと文句を言いながらロズフェル兄弟は次々と使用済みの食器を片付けていた。
「おー、真面目にやってるな」
「ご苦労様ですわ」
 シリウスが面白そうに様子を見に来た。一緒にいるリーブラは優しく二人を労う。

「だって見張りがいるしよぉ」
「こっち、ずっと見てるし」
 双子は恨めしそうに監視役のイグナの方を見た。

「きちんと主催者として仕事を真っ当するのだ」
 イグナは最後まで監視役を務めていた。

「とか言うし。たまらねぇよな、キスミ」
「そうだそうだ。オレ達にも楽しむ権利はあるっていうのに」
 双子は肩をすくめてため息をつく。

「楽しむ権利か。二人共、十分楽しんだろ」
 シリウスは軽く説教的な匂いを含ませながら言った。表情は悪童を叱る教師のよう。
「楽しい親睦会が出来たのは二人のおかげです。片付けも出来ればもっと素敵な親睦会になると思いますわ。少しだけ息抜きを持って来ましたわ」
 リーブラは救いになればと優しい言葉とたっぷりのお菓子を持って来た。
「……はぁ~」
 双子は同時にため息をついてからお菓子を食べて息抜きをした。
「少し息抜きでもどうだ?」
 シリウスは北都が用意したジャスミン&ライチのノンアルコールのお酒をイグナに労いとして差し出した。
「あぁ、済まぬ」
 イグナは受け取り、少しだけ一息入れた。その間は、シリウスが監視役を務めていた。
 お菓子を食べ終わるなり、再び片付けに戻らされる双子。
「……二人共、頑張って下さい」
 リーブラは双子が洗い終わった食器の片付けを手伝い始めた。

「……ゆっくり食べて喉をつまらせないように」
 コルセアは吹雪とイングラハムの前に飲み物を置いた。
「美味しいでありますよ!」
「……悪くはない」
 吹雪とイングラハムはコルセアが用意した飲み物を流し込み、次々と料理を楽しんでいる。
「そうそう、おいしいアル。イリアの料理も最高ネ」
 近くにいたシルヴィアも食べながら吹雪とイングラハムに賛同していた。
「それは当然よ。ダーリンが手伝ってくれたんだから。ありがとう、ダーリン!」
 イリアはシルヴィアの褒め言葉に嬉しくなり礼と言わんばかりに隣に座るルファンの腕に絡みついた。
「力になれて何よりじゃ」
 ルファンは側にいるイリアに微笑んだ。
「賑やかですね」
 近くに座っていた舞花がルファンに声をかけた。
「そうじゃな。しかし、古城も大変な事になりそうだのぅ。ごみだけでなく幽霊も住んでいるとは、なかなかの古城じゃ」
 ルファンは舞花に古城の話題を振った。ルファンはイリアと古城の大清掃に参加した事があるのでなおさら気になるのだ。
「……はい。問題が掃除だけなら良かったですね。掃除でも大変ですけど」
 舞花は心の底からため息をついた。本当に掃除だけなら解決も容易かったのにと。
「そうじゃな。明確な原因でなく不明瞭なものしか無いのが不気味じゃ」
 ルファンは地下の少女について口にした。彼女が何か関わっている事は分かるが、それが確かな事かは分からない。当然、“魔法使いさん”が例の魔術師だという確証も無い。
「そうですね。何より、何かが起きるとまだ予測だけで確定した訳ではありませんからね」
 舞花は警告を発する以上の事が出来ない状況に危機感を抱いていた。何かが起きると決まった訳では無いが、どうにも悪い予感しか無いから。
「そうだよ。ほら、イリアの作ったお菓子を食べて楽しもう!」
 イリアは舞花に自分が作ったお菓子が載った大皿を差し出した。
「……ありがとうございます」
 舞花は大皿から一つ取り、甘くて美味しい味を楽しんだ。

「これが幻覚茶なのですね。どのような幻覚か気になりますね」
 フレンディスはまだ味見をしていない幻覚茶に興味を抱いていた。すでに手持ちのカップに用意してしまっている。
「ちょっ、フレイ、飲む前にクッキーを食べろ!」
 ベルクは急いで幻覚中和作用クッキーを用意しようとするが、出来た時にはすでに幻覚の中だった。
「ご主人様! 大丈夫ですか!!」
 ポチの助はフレンディスの側で心配の声を上げている。

 しばらくして
「……素敵なお花畑と海が見えました。薫さんもどうですか?」
 幻覚から戻って来たフレンディスはほんわりと楽しそうに感想を口にし、薫にも勧める。楽しい事を共有したいという純粋な心からの言葉。
「……我も飲んでみようか」
 薫はフレンディスに誘われ、少しだけ飲んでみようかと思い始める。
「面白そうだな。せっかくだから飲んでみるか」
 又兵衛は幻覚茶をぐいっと飲み干した。
「……もう一杯」
 フレンディスはもう一度体験しようと二杯目をカップに注ぎ始める。
「一杯で十分だ。他の料理を食べろ」
「マスター、大丈夫ですよ」
 ベルクの警告もフレンディスは好奇心に満ち溢れる言葉で払い、二杯目を飲み干した。
「……二人共、幻覚茶を飲んでるのだ。フレンディスさんに誘われたし我も」
 薫はフレンディスに勧められた事もあって幻覚茶を飲んだ。
「ぴきゅうぴゅ(おいしいのだ)」
 ピカは他の料理を自分なり堪能していた。
「……何というか」
 仲間七人の内三人が揃って幻覚満喫中という何とも言えない光景に孝高が言葉を濁した。
「とりあえず、今の内にこれを片付けておくか。飲み物は他にもあるんだからな」
 ベルクは『行動予測』から三杯目を飲むだろうと予測し、フレンディスの前に興味を引きそうなお菓子を置いてからポットと幻覚中和作用クッキーを手に他のテーブルに運びに行った。
「……大変みたいだね」
 陽一が孝高に言葉をかけた。
「そちらもご苦労だったな。無事に二人が古城に行けるようになって良かったが、不安は残るな」
 孝高は陽一に古城について話を切り出した。
「……古城の変死だね。地下の少女が何かするか起きるかする前にハナエさんとヴァルドーさんがあそこにいる幽霊達を説得してくれたらいいんだけどね」
 陽一はウルバス夫妻が古城にうずくまる問題を解決に導く存在になればいいと考えているが、どうにも嫌な予感しか無い。
「……そう上手く行けば良いが、現実はそう上手く事は運ばないからな」
「そうだね。まぁ、救済措置はしているというから取り返しがつかなくなる前に何とかなるはず」
 孝高と陽一は互いに雲行きは薄暗いが、何とかなるだろうと雲の僅かから見える太陽を信じている。
「さて、俺も何か食べるか」
 陽一は意識を親睦会に戻し、料理の物色を始めた。

「みんなと食べると本当に楽しいわねぇ」
 セリーナは賢狼・レラと一緒に食べながら言った。とても楽しそうだ。
「……そ、そうですね。本当に美味しいです」
 リースはカップを手にこくりとうなずいた。
「まともな料理だからな。というか普通に作ると二人の料理も悪くないよな。最初からそう作りゃいいのによ」
 ナディムはキスミ作のカップケーキを口にし、呆れていた。わざわざ騒ぎを起こす方向に持って行く必要は無いというのに。
「……でも幽体離脱クッキーは役に立ったと思いますよ」
 近遠が優しい言葉を発した。残念なのは双子が聞いていない事だけ。
「それだけでございますわ」
 アルティアも料理を楽しでいる。何せ後の仕事は双子が担当するという事なので給仕はお役御免となったのだ。
「……あ、あの二人が片付け係ですけど大丈夫でしょうか」
 リースは心配そうに調理スペースの方を見た。
「大丈夫ですわ。しっかり監視役がついていますもの」
 ユーリカが厳しい監視役のイグナの方に顔を向けた。
「すげぇ、沈んだ顔してやってるな」
 ナディムは面白そうに浮かない顔で黙々と片付けをする双子を見ていた。
「今日は楽しい親睦会になったわねぇ、レラちゃん」
 セリーナは優しく賢狼・レラの頭を撫でていた。

「ロゼ、リクエストの肉じゃがだ」
 シンはローズが座っているテーブルに希望の肉じゃがを置いた。
「待ってたよ。もう、見た目から美味しそう」
 ローズは待ってましたとばかりに手を叩いて置かれる肉じゃがを迎えた。

 そして、一口。
「うん、あまりの美味しさで一瞬で昇天するよ。おかわりはある?」
 味が良くしに込み、ほくほくじゃがいもに感動。二口三口と箸を進め、あっという間に無くなってしまう。
「……ったく、大げさな事言いやがって」
 大げさなローズの褒め言葉に少しだけ言葉をどもらせながら空になった皿を回収するシン。