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酔いどれバトル IN イルミンスール大浴場!

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酔いどれバトル IN イルミンスール大浴場!

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第3章 酔っぱらい暴走中
「えっ、日本酒ですか!? 私、ワインの方が……」
「言い訳はなしです。無理にでも連れていきます」
 宇都宮 祥子(うつのみや・さちこ)は顔を少し赤くしながらワインを飲んでいた、泉 美緒(いずみ・みお)の手を引っ張って日本酒風呂へと連れていく。
「だいたい、日本の名家のお嬢様が日本酒の味がわからなくてどうしますか
「はあ……って、私未成年なのですけど……」
「今の【お酒のようなもの】なら、未成年でも問題ないですから。さあ、いきますよ」
 ぴしゃりと言われ、半強制的に手をひかれ日本風呂酒へと連れて行かれていった。

 一方、一足先の日本酒風呂。
「いーえ、枯れたら薬品をすぐ使うなんてだめですよ〜、虫のせいだってあるんですよ〜」
「ほ、ほう」
 多比良 幽那(たひら・ゆうな)はお酒によって饒舌になっていた。
 しかも、一人ではない。幽那が二人いた。
 別にお酒による幻覚などではなく、ミラーイメージによるものだった。
 二人いることでステレオ状態で話を聞かされていたのは、同じく日本酒風呂につかっていた林田 樹(はやしだ・いつき)だった。
 が、あまりその話の内容がわからないためにただ相づちを返すことしかできなかった。
「つまりは虫は取り除けばいいんだな」
「そうです、虫は――」
「違います! 虫はがいちゅ〜だけじゃなくてえきちゅ〜だって――」
「うー、二人で一斉に話すな一人ずつ話せ。 あ! 女史、こちらで一緒に飲まないか?」
 日本風呂に入ってきた祥子の姿を見つけると、すかさず声をかけた。

 数分後。
「そうなのよー、もー独り寝は寂しいし、どこか可愛い子いないかしら〜かっこいい子もいいわよねー」
 祥子は笑いながら樹に話していた。
「宇都宮くん聞いてふれない〜?」
 かとおもっていたら、反対側から緒方 章(おがた・あきら)がのしかかってきた。
「僕さー樹ちゃんとふーふになれたのねー、なんかもーあんまり人前れ甘えれくれないんんだよね〜」
「ほほう?」
「もう、ツンデレおくさんらよね〜。樹ちゃんのツンデレ〜!」
「う、うるさい、ツンデレって言うな、ばか! って、ちょおまやめろー!?」
「うへへ〜……うおっ」
 完全に酔ったまま章は、樹の背中にのしかかると耳を何度も甘噛みした。
 が、突然章の頭には白い巨大ハリセンが降り注いできた。
「ったく、油断も隙もありやがりませんです。この馬鹿餅は!」
 ジーナ・フロイライン(じいな・ふろいらいん)が腰に手を当ててたっていた。
 そのころ、別の影が祥子の後ろから忍び寄っていた。
「えいっ」
「きゃ!?」
 後ろから胸を揉むように抱きつく新谷 衛(しんたに・まもる)だったが、突然目の前にハリセンが飛んできた。
「あだ〜っ!??? な、なにすんだよ、じなぽん」
「まったく、油断も隙もないです」
「よくやったわ、衛、椅子に座りな……ってないから、そこに正座しなさい!」
「え〜」
「文句言うと、ハリセンよ?」
 しばらく祥子は衛を説教していた。
 その説教内容は「日本酒とはお米100%よ」など、少々迷走しているようだった。

「飲む?」
 幽那が日本酒のはいった升をジーナに渡す。
「わたし、ちょっとお酒は苦手で……」
「ちょっとだけ、ちょっとだけなら大丈夫よ〜」
「え、はい。それならちょっとだけ」
「そこのひと、まて! ジーナは酔うと――」
「あ〜あ、飲んじゃった……上着脱がされるまえに私は逃げるよ〜」
 慌てふためく、樹の忠告もむなしくジーナはお酒を飲んだ。
 衛はあきらめ顔で、颯爽と日本酒風呂を出て行った。
「にゃは? にゃははは〜なんか体がかるいですよ〜まてえ〜」

 そういうと、ジーナはわら……あっ――。
 ざーざざっ。

『そういうと、ジーナさんは笑いながら日本酒風呂の中央へ走っていきました』
『あ、ちなみに私、キャロル著 不思議の国のアリス(きゃろるちょ・ふしぎのくにのありす)って言います。担当MS(マスター)に変わって地の文を占領してみたよ!』

「きゃ〜っ!?」
「やーめーてー」

『次々とアラウネ達が脱がされていく〜怖いねお酒〜。うーん、脱いでみるとますますぺったんこだね、あの子』

「すまん、被害が出る前にジーナを止めてくれ!」

『樹さんは次々と脱がし回るジーナを追いかけるので精一杯のよう。
 このままだと、ジーナさんはワイン風呂にいる人たちまで脱がしていきそうな勢いだよ!』

「まかせて〜ほら、ジーナさん止まって。ねっ?」


『すごい勢いで向かってくるジーナさんに幽那ちゃんが待ち伏せしたよ〜』

「えへへ〜あなたもべろーん〜っ」

『が、見えぬスピードで幽那の上半身があらわに!?』
 ならなかった。危機一髪のところで、幽那のアルラウネであるヴィスカシアが守ってくれていた。
『そのかわりヴィスカシアが上半身裸だけどね〜』

「止まれ〜!」
 樹が持っているエアガンでジーナを狙って乱射する。
「あはは〜べろ〜っ。べろ〜んっ!」
「あたたたたっ!? いたたた……」
「すまない! 大丈夫か?」
「いまだ〜べろーんっ!」
 
『っと、誤射されちゃった幽那ちゃん。そんな幽那ちゃんにものすごい勢いでジーナさんが近づいて』
『いや〜問答無用だね〜。幽那ちゃん大丈夫かな』

「今だ!」
「あふぅうっ!」

『樹はジーナの暴走を止めることに成功したよ〜。殺気看破で気配を感じ取って、おでこにチョップしたみたい』
『けど、もうあとの祭りだよね。日本酒風呂はみんな半裸になったりならなかったりで地獄絵図状態』
『よい子のみんな! お酒は二十歳からだよ! でも二十歳になっても、節度あるお酒をね!』

「見つけたヨ」
『げ、ハンナ』
 突然、アリスの地の文を邪魔するようにハンナ・ウルリーケ・ルーデル(はんなうるりーけ・るーでる)が声を上げた。
「ったく、酔ってるとおもったらこんなところで……お祖母ちゃんを止めなきゃいけないって時ニ」
 ハンナはため息をつきながら、アリスの腕をつかんだ。
『ま、待って。まだやることが』
「はいはい、このままだと話が進まなくなるからネ」
『いやああああああっ、食べられる〜』
「食べません、何を言ってるんですカ」
 アリスは悲鳴をあげながら、無残にもハンナに引き面れる形で連れて行かれた。
 こうして、無事地の文に平和(?)が取り戻された。

「どうして、みんなこうも酔いやすいのですカ……私のほうが酔わないなんテ……」
 ぽつりとハンナはそうため息をついていた。
 そして、どこかで酔って倒れて居るであろう幽那を探すためにハンナは歩き続けた。
 その後、自分も酔わされることを知らずに。