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メロンパン競争曲

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メロンパン競争曲

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序章 兵は詭道なり
――――兵者、詭道也。:『魏武帝註孫子』始計第一

  「おい、聞いたか? 『至高のメロンパン襲撃事件』!」

  「配送トラックが謎の武装集団に襲撃されて至高のメロンパンを強奪していったってやつだろう?」
  「運転手はシュークリームを連射されて襲われたって」
  「え? 武装集団はフランスパンで運転手に殴りかかったって聞いたけど?」
  「――武装集団はパン屋と競合するケーキ屋に雇われたんじゃないかって説が」
  「パンの配送トラック? 襲われたのは”材料を積んだトラック”じゃなかったか?」
  「『至高のメロンパン』を焼いてるパン工房が襲撃されたって聞いたけれど……」
  「そうそう! 犯人が職人さんに絹ごし豆腐をいっぱい投げつけて工房がむちゃくちゃになったって!」
  「――パン屋さんも豆腐屋さんも朝が早いからねぇ」
  「うそ? 職人さんが材料の配合に失敗して『こんなの至高のメロンパンじゃない』って泣き崩れたって……」
  「『至高のメロンパン』の焼き上がりが気に入らなくて、50個全部床に叩きつけて割ったって聞いたぞ?」
  「――陶芸家じゃないの、それ?」
  「購買に走る意味ねーよなー」
  「『至高のメロンパン』がないんじゃなぁ」
  「食堂にでも食いに行くか」

 ――今日は『至高のメロンパン』が来ないらしい――
 蒼空学園は朝からこの話題でもちきりだ。
しかし、その理由とされる話しはばらばらで、憶測が憶測を呼んでいる状態だった。

 『至高のメロンパン』(1日限定50個)の販売に伴う学生達、購入希望者の混乱に備え、
蒼空学園風紀委員は助っ人を頼んで増員し、昼休みには特別警戒態勢で臨んでいる。
 加能 シズル(かのう・しずる)も助っ人として風紀委員の手伝いをしている一人だ。

 シズルは教室内に飛び交う『至高のメロンパン販売中止』情報を聞きながらも、
学園や購買からの正式連絡が流れてこないことに疑問を持っていた。

  「もし……『至高のメロンパン』が来ないなら、最低限、風紀委員にはアナウンスが来るはずよね?」


第一章 共闘


 図書館には『至高のメロンパン』をゲットしようとやってきた他校生が集まっていた。

 ――今日は『至高のメロンパン』が来ないらしい――

 他校からわざわざやってきた生徒も蒼空学園内に広がる『至高のメロンパン襲撃事件』の噂に戦意喪失気味であった。

 ルカルカ・ルー(るかるか・るー)は携帯端末のメールを再確認していた。
 龍騎士のキロス・コンモドゥス(きろす・こんもどぅす)、スポーツでも鍛えている高円寺 海(こうえんじ・かい)
この二人は強敵だ。ならば仲間にして彼等に共闘を申し込もうとルカルカは考えた。

 前日にキロスと海に「自分達が買えたら分ける。そっちが買えたら一個でいいから分けて」とメールしていたのだ。
こちらはコード・イレブンナイン(こーど・いれぶんないん)との2人で参加する。うまくいけば8つ買えるとの情報を添えて。

 高円寺 海(こうえんじ・かい)からはこう返事があった。
 「オレは杜守 柚(ともり・ゆず)杜守 三月(ともり・みつき)の2人と協力する約束をしている。
  実際に購買で『至高のメロンパン』を買うのはオレ1人だ。
  オレが無事に4つ買えた場合、渡せるのは1つだけになってしまう。
  ルカルカとコードがメロンパンを買えなかった場合、この1つをそちらに渡そう。
  キロスは蒼空学園の生徒なんだし『別の機会に頑張ってくれ』ということで、
  キロスとの共闘はできないと伝えてほしい」

キロス・コンモドゥス(きろす・こんもどぅす)からの返事はこうだ。
 「オレはすでにドクター・ハデス(どくたー・はです)アルテミス・カリスト(あるてみす・かりすと)との共同戦線に同意している。
  オレたちが『至高のメロンパン』を買えなかった場合、1個でもかまわない。
  メロンパンをわけてほしい。

  オレとアルテミスが購買に行く。
  ハデスは足止め役をする。

  以下にメロンパンをそちらに渡す個数の条件を書く。
   オレたちが買えた数:渡す個数
    3以下:0
    4以上7以下:1
    8:2
  こうなるがかまわないか?」

 キロスと海を共闘させることはできなかったが、ルカルカ達はキロスと海の2人とそれぞれ別の共闘を結ぶことになった。