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狂乱せし騎士と魔女を救え!

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狂乱せし騎士と魔女を救え!

リアクション

「カエ、セ……」
「カ、エ、セ……」
 一人の騎士と一人の魔女のうめき声がイルミンスールの森に響き渡る。
 イルミンスール魔法学校を目指して森を蹂躙しつつ歩く巨人。
 たった一つ、指輪を探して。

「あらあら、こんなに大きく育っているなんて思いもしませんでしたわぁ」
 巨人の進行を許すはずもない。イルミンスール魔法学校校長、エリザベート・ワルプルギス(えりざべーと・わるぷるぎす)
 幼き出で立ちからは想像もつかないほどの魔力を有している。
「ここから先は私の領地、あなたは土くれにでもなるがいいのですぅ」
 まったりとした口調とは裏腹に、その手からあふれ出る魔力たるや、絶大の二文字に尽きる。
 彼女は馬場 正子(ばんば・しょうこ)と二手に別れ行動をしていた。
 そして現在、巨人の体を駆け上っている最中だった。

「校長、お怪我はありませんか」
「ええ。この程度の相手に負ける気はしませんもの。まあ、あなたの不滅兵団もそこそこに役に立っていますわぁ」
「恐悦至極……む、あれは」
 【召喚獣:不滅兵団】を駆使し数に数で対抗するアルツール・ライヘンベルガー(あるつーる・らいへんべるがー)
 彼が見たものは巨人の一部が赤く光り輝いている部位。
「なんと、これほどわかりやすいとは。親切なものだ」
「これだから古代の魔女さんは、やり方が古すぎますわぁ」
 二人は一瞬で看破する。赤く光る部位、それが巨人の足を止める弱点だということ。
「一気に攻める。この勢いを一度でもそげば困難は必死だ、行くぞ!」
 不滅兵団と共に前進し、無防備な弱点へありったけの攻撃を突き立てる。
 その攻撃に反応するがごとく、巨人が空気を振動させる慟哭を喚き散らした。
「やはり弱点、だが何もないわけは、ないだろうな!」
 瞬間、アルツールの横を灼熱の炎が抜ける。
 その流れ弾がエリザベートに向う。
 否、初めからエリザベートを狙っていた。
「味なまねをっ!」
「あら、中々の魔力ですねぇ。ちょっと本気を……」
「それには及ばないわ!」
「ここは任せてもらおう」
 エリザベートの前に現れ、業火の塊に余りあるほどの銃弾を撃ちこみ瓦解させる荒業を見せたのはダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)
 そしてダリルの契約者であるルカルカ・ルー(るかるか・るー)は既に弱点部位へと踏みこんでいた。
「でてきなさい! 苦しいからって、暴れていい理由にはならないよ!」
 ルカルカの声に反応してかしないかはわからない。
 弱点部位から魔女を模ったようなシルエットがいくつも現れた。
 これが業火の塊を放った正体。
「数で勝負、基本中の基本の兵法だね。でもこっちだってアルツールさんの不滅兵団で負けてない。何より!」
 【ジュニアメーカー】を使い分身を10人分展開。
「私がいる!」
 これで圧倒的にエリザベートが優位に立ったかと思われた。しかし。
「……来ますねぇ。怖気、悔恨、増悪、よくもこれだけ溜め込んだものですぅ」
「二人とも、奴の体表からモンスターが来るぞ」
 エリザベートに『献身』をかけつつ、モンスターの気配を感じ取ったダリルが指示を出す。
 それとほぼ同時、巨人のドス黒い体表から濃霧のような瘴気が噴出。
 その瘴気は瞬く間にモンスターを量産していった。
「これほどの数をいとも容易く。これは、骨が折れるな」
「いくら来ようとエリザベートには触れさせない!」
「それには同意であろう!」
 ルカルカとアルツールを先頭に、数と数とのせめぎあいが始まろうとした、その刹那。
 多数で襲い掛かってきたモンスターたちの大半が消し飛んだ。
 先ほどの業火の塊の更にその上、業炎の塊がモンスターたちを焼き払ったのだ。
「守る守ると、私は子供ではありませんよぅ? この程度の相手に負けるわけないじゃないですかぁ」
 業炎は、ふてぶてしく笑う(実際イタズラをこなした子供のような笑顔にしか見えないが)エリザベートから放たれたのだ。
「さっすが! その調子でばんばん魔法よろしくねー!」
「見事なお手前です」
 圧倒的な力の前に歓喜の声を上げる二人。
「……そこかっ」
 ダリルの眼光があるものを見つけ、その一点を正確に射抜く。
 途端、巨人の動きが著しく鈍る。
 彼が射抜いた場所、そこには黒光りする魔方陣が描かれていた。
「成る程、一見しただけでは見抜けんな」
 巨人の本当の弱点は黒光りする魔方陣。赤く光る場所はフェイクだったのだ。
 魔方陣が消えると、辺りを漂っていた瘴気もなくなり、魔女のシルエットも全て消え去った。
「よく当てられましたねぇ?」
「見つけるのは苦労したが、なに。この距離なら外さんよ」
「さすがダリルだね」
「巨人の動きが鈍っている今のうちに頭頂部を目指そう」
 アルツールの言う通り、動きが鈍っている今がチャンス。
 五人は頭頂部へと向う。