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リアクション
■幕間:バトルアリーナ
空から降り注ぐ砲撃を避けてはいるものの、アルテミスと奇稲田、二人の猛攻を凌ぐのは厳しいらしく、桐ケ谷の身体の所々には切り傷が出来ていた。
「我らを相手にいつまで耐えられるか見物だなあっ!」
ハデスは戦闘員に砲撃の継続を指示すると高らかに笑った。
「神奈さん!必殺技で決めましょう!」
「そうじゃな。わらわたちの新必殺技を披露するとするかの!」
二人は桐ケ谷を前に交差する軌道をとった。
「「必殺!オリュンポス・クロス!」」
声が重なりX字に剣が奔った。
桐ケ谷はその一撃を剣と光の分身によって防ぐ。
(ふぅ……さすがに防ぎ切るのは厳しかったか……)
(当り前よ。一対三なのよ? 格下の戦闘員たちだけならまだしもこの子たち相手だと……)
リーゼロッテが桐ケ谷を気遣う。
だがその必要性はすぐになくなった。
「遅かったじゃないか」
桐ケ谷は振り向かずに言った。
彼の背後、会場の方からこちらに近づく人の姿がある。
「待たせたのう」
「悪いな。まあ来たからには仕事はするからよ」
現れたのは草薙と柊 恭也(ひいらぎ・きょうや)の二人だ。
柊はハデスを見やると口を開いた。
「おーいハデスー。そういうことだからちょいと今から派手に行くぞー」
軽い口調であった。その顔には笑みが浮かんでいる。
仕切り直しとばかりに桐ケ谷も口の端をもちあげた。
「良い連携だったが……次はこっちの番だ」
彼は足で地面を叩いた。
タンッという音が鳴ると吹雪が巻き起こり、視界が白に染まる。
■
画面の中、鎧に身を包んだ巨人が姿を現した。
武者のようなそれは恭也に従うように頭を垂れている。
エキシビジョン中継と銘打たれた映像を眺めながら、佐野 和輝(さの・かずき)はレシーバーを片手に会話を続けた。
「――そうか。こっちに回す余裕があるならロビーの方に手配を頼む。オリュンポスの構成員が侵入しないとも限らない。……ああ、こちらに異常はない」
ちらりと周囲を見回す。
一般客が中継映像に意識を向けている。
慌てたり騒ぐ様子は見受けられなかった。
「騒ぎにもなりそうにない。引き続き警備にあたる。何かあったら連絡をくれ」
定時連絡を終える。
和輝は今一度テレビを見た。
巨人に襲われ踏み倒されている戦闘員や、逃げ回っているハデスの姿があった。
「あっちも大丈夫そうだな」
心配事がなくなったのだろう。
ほぅ、と息を吐くと思い出したように呟いた。
「ルーノとクウの二人を招待したのは正解だったな。アニスたちも手持無沙汰にならずに済んだし、喜んでたし……まさかとは思うがあの二人、大会に参加したりしないだろうな……大丈夫だよな?」
ふと思い浮かんだ想像に和輝は焦りの表情を見せた。
その様子はさながら娘の身を案じる父親のようである。
「あー……とりあえず警備を続けるか」
じっとしていると悪いことばかり頭に思い浮かんでしまいそうなのか、彼はいつもより足早に歩きだした。
■
「それで……なぜ皆さんはここに集まっているのですか?」
ルーノにクウ、アニス・パラス(あにす・ぱらす)とルナ・クリスタリア(るな・くりすたりあ)の四人は控室と書かれている部屋の中でお茶会を楽しんでいた。どこから持ってきたのか、お揃いのティーカップにティーポットがテーブルに置かれている。
花柄というのが女の子らしさを感じさせてくれていた。
「特にアニスクンとルナクンの二人は警備の仕事じゃありませんでしたっけ?」
久瀬はため息交じりに言った。
「お仕事って言ったけど、今回はあんまり仕事が無いんだよねぇ〜……。和輝にも自由に行動してて良いって言われちゃったし……」
「なのですよぉ〜」
マフィンを口にしながら二人は応える。
お茶を淹れながらルーノとクウが各々口を開く。
「あたい達は和輝に誘われたから来てやったんだぜい」
「ミギに同じ」
「右にいるのは私です」
「なんとっ、これはキョウガクの事実」
「何というか。クウクンはだいぶ人間染みて来ましたねえ……ルーノクンは話し方がおかしいですし。何か見ました?」
久瀬の言葉にルーノは仁王立ちすると告げた。
「春の新作アニメ!」
いえーい、とルーノはアニスとハイタッチする。
子供ならではのノリなのだろう。何が楽しいのか理解不能であった。
「――こっちはこっちで奇妙奇天烈な画になってますが」
今度はルナの方を向いた。
そこには巨体な猟犬の頭に乗ったルナと狼、ペンギン、イルカ、イノシシ、そして変な声で鳴くカボチャが自由気ままに動き回っているという、わけのわからない光景が広がっていた。
「この部屋はですね――」
久瀬が何かを言おうとした時であった。
彼の言葉を遮ってアニスが声を上げた。
「誰かいるっ!」
同時、何かがその場から逃げ出す気配がした。
部屋の外。タッタッタッ……という足音が響く。
「行くよルナ!」
「はいですぅ〜」
二人は足音を追いかけて部屋を後にした。
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