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あの時の選択をもう一度

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あの時の選択をもう一度
あの時の選択をもう一度 あの時の選択をもう一度

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 イルミンスールの町。

 フレンディスとベルク・ウェルナート(べるく・うぇるなーと)忍野 ポチの助(おしの・ぽちのすけ)はエリザベートの依頼を受け、今回の事件の情報収集をしていた。ベルクとしては例の魔術師や旅団が何か関わっているのかどうかを深く調べたいためそこを重点的に調査をする事にした。念のためベルクの『ディテクトエビル』で警戒はきちんとしている。
「随分と魔術師事件の頻度が上がってきやがったな。本格的に動いてきてるのか違う問題なのか。アーデルハイトは犯人は別人の可能性もあると言っていたらしいが、この様子だ十中八九間違いなくあいつだろうな」
 ベルクはアーデルハイト・ワルプルギス(あーでるはいと・わるぷるぎす)の言も分かるが、ほぼエリザベートと同意見だった。
「マスター、あの手記についてもう少し詳細が解れば何か謎の魔術師さんについて手掛かりを得る事が出来るような気がするのですが、手記をお渡ししたエリザベート校長先生の方で何か発見があったのでしょうか。たとえお力を借りれなくともせめて新たな発見があればお伺いできれば良いのですが……」
 とフレンディスは以前の古城幽霊少女の事件で手に入れた名も無き手記を思い出していた。
「それもそうだが、今回の事件について指示してるのがエリザベートとはいえそう易々と校長の力を借りる訳にはいかねぇさ。ある程度行き詰まってから訊ねるとしようぜ。調査は始めたばっかりだ」
 とベルク。
「はい、頑張りますね。ポチもお願いしますね」
「お任せ下さい。ご主人様のために必ずや手掛かりを見つけてみせますよ!」
 ポチの助はフレンディスに頼りにされ、胸を張って凛々しい可愛い顔で答えた。
 そして、情報収集が始まった。
 途中、昏睡する人に遭遇するとベルクが闇に囁く蝙蝠で軽く襲わせ、ポチの助は『ライトニングブラスト』を使った電気療法で起こした。フレンディスは起こされる人の肉体的ダメージを考え安全のために何もしなかった。

 情報収集を開始してしばらく、他の収集組からの情報が時々入ったりと忙しくなり始めた。
 突然、
「ご主人様!」
 先頭を歩いていた『捜索』を持つポチの助が向かい側の古本屋から出て来た被害に遭っていない人物を発見した。もしかしたら目撃情報を得られるかもしれないと。
「ポチ、ありがとうございます。マスター、あの方、目撃者かもしれません。聞き込みをしてみましょう」
 フレンディスはポチに礼を言ってから目撃者かもしれない人物を指し示しながらベルクに言った。
「……そうだな。しかし、人を外見で判断するものじゃねぇが、不審者っぽいな。万一の警戒はしておけよ」
 ベルクはフレンディスが聞き込みをしようとする人物に不審そうな顔をした。
 なぜならその人物は極寒の山にでも登山するかのような格好に防護マスクのような物で顔を隠しているなかなか怪しげな外見をしていたからだ。
「分かりました。でも、マスターとポチがいれば大丈夫です!」
 フレンディスは警戒のため気を引き締めるも仲間がいるからかどこかぽやぽやとした感じでポチの助と共に不審者っぽい人に聞き込みをしに行った。
「……とにかく警戒だけはしとけよ」
 ベルクが念のために繰り返した言葉はフレンディスには届かず空気中に消えてしまった。ベルクは疲れの溜息をつきながら急いでフレンディスを追いかけた。
 フレンディスが聞き込みをした所その不審者は首から掛けている“ユリス・カガツ”と書かれたネームプレートを見せながら名乗る安全な人であり貴重な情報をフレンディス達にもたらす人でもあった。
 ユリスは八十年前に今回と同じ事件が起きた事を知っていたのだ。
 その理由に関しては、
「事件を知ったのは、これだよ〜。でも 正体不明の魔術師については知らないよ〜。僕の世界ではそんな事聞いた事無いし、こっちはいろいろ大変だね〜。それで僕は住んでいた世界でこの人達の噂を耳にしてさ〜、面白そうで興味を持って、でも僕の住んでいた所には本が無くてさ〜、本を見たくてパラミタに来たんだよ〜。青いのは本屋で紫のは何か山奥の土の中に埋まってた。行けそうな所に行ったり本を探したり最初は大変だったよ〜」
 背負っているディバックから出てきた紫表紙と青表紙の本はフレンディス達が見覚えのある本だった。そう名も無き旅団の手記。そして話から察する通りユリスは未来人だったりする。
「僕さ〜、アクティブな読書家で今は面白い本の虜でその本に出て来た面白い場所を見て回るのがマイブームでさ〜。でもここに来たのは本屋で本を探すためなんだ。用事が終わって本屋から出たら外が騒がしくて何か事件が起きててさ〜。まぁ、巻き込まれても防護マスクも被っているし装備も万全だから心配ないんだけどね〜。始めの方は、軽装備ばっかしてて死にかけてさ〜、それも39回も。何かこの格好をしてたら不審者によく間違われてさ〜、ネームプレートを首から提げるようにしたんだ〜」
 だらだらとユリスは自分の話をするばかり。区切りが良さそうな所でベルクが本を貸してくれるように頼むも最初は渋られるが、もう一冊の手記の存在を知らせ、貸してくれたらその礼で閲覧出来ると言うと快く貸してくれた。実はベルクがユリスの会話中にユリスが閲覧出来るようにして欲しいとエリザベートに頼んでおいたのだ。交渉は何とか上手く行き、ユリスは自分が手に入れた本をベルクに貸して新たな本を見に行った。

 ユリスと別れた後。
「確かに載っているな。紫表紙の年代は八十年前か。ただし、事件の内容だけが同じだ。他の人が解決したところを見たと書かれているな。この事はすぐに知らせておくか。フレイ、そっちはどうだ?」
 ベルクは紫表紙の八十年前の丁寧な字体で書かれた手記を確認した後、すぐに皆に知らせ推測の解決策は正しかったと伝えた。舞台は小さな村で事件は解決されたと噂で聞いたと書かれてあった。
「二番目に起きた事件と似た事件が載っていますよ。願い石ではなく命がけで作った指輪ですが。読み取るとこれを書いたのは12歳ぐらいの女の子でした」
 フレンディスは百年前の青表紙本を確認していた。中身も年相応の子供らしい元気な字体だった。『サイコメトリ』で記憶を読み取り書き手も確認したのだ。
「……役職ごとに表紙が違うのか。とりあえず、もう少し情報が欲しいな」
 ベルクは同じ年代でも表紙の色が違う事に気付き、筆者名の横に役職らしき物が書かれてあったり気になる事はあるがが、今調べるべきは魔術師の事なので旅団についてはひとまず置いておく事にした。
「ふふん♪ この僕の出番なのですよ! 超優秀なハイテク忍犬たるこの僕の犬力を持ってすればあらゆる情報を……」
 ポチの助は待っていましたとばかりにいつもの口上を胸を張りながら口にするも
「おいポチ偉そうな口叩いてる暇があるならさっさと始めろ。調べられる事は徹底的にな」
 ベルクが苛立ち、口上途中に割って入って来た。
「エロ吸血鬼、この超優秀なハイテク忍犬たるこの僕の力を借りたければ言葉遣いに気を付けるのですよ? しかしイルミンに渡した旅団の情報が欲しいですねー」
 ポチの助はこの時ばかりにと優越感を醸し出した後、獣人化してノートパソコン−POCHIで検索を始めた。
 魔術知識に乏しいポチの助の要望でフレンディスはエリザベートに頼んでみるとすぐに返答が戻って来た。
「魔法を使って本の復元中で現在出来ているのは、最優先で進めていた表紙と謎の魔術師さんの事件だけです。欠けた文章はまだ取り掛かっていないそうです。ポチの方に送るのでそれで調査して何か分かれば情報を送って欲しいそうです」
 フレンディスがエリザベートの言葉を伝えた。
「……あの欠けた文章はまだなのか。しかし、復元出来たんだな」
 ベルクは気になる答えを知る事が出来ず、残念に思っていたが、凄まじく酷い状態だった本が一部でも復元出来た事には感心していた。
「早速、データが来たのですよ! すぐにそれぞれの年代に似た事件が何か調べるのですよ!」
 フレンディスとベルクの話が終わるなりポチの助の元にデータが届いた。今回は二つの年代の中で事件の起きた月日を起点とし、付近にそれぞれ似た事件は無いかと検索するといくつか出てきた。調べる範囲が狭まった事と『コンピューター』を持つポチの助の手慣れた手さばきにより作業はスムーズだった。
「ポチ、ありがとうございます」
 フレンディスは仕事を終えて豆柴に戻ったポチの助の頭を撫でながら礼を言った。
「ご主人様のためならどんなものでもこの超優秀なハイテク忍犬たる僕の犬力で調べ上げるのですよ!」
 ポチの助はフレンディスに撫でられ嬉しそうに尻尾を振りなが言った。フレンディス達は速やかに検索結果を確認した。
「……今回の事件と似ている百年前の事件では町一つが犠牲になったのか。他にも連続で失敗してしまったものもあるな。しかし、全部ばらばらの場所だ。もしかしたら同じ場所で起きているのは今回だけかもしれねぇな」
 ベルクは事件の成功不成功に関わらず、繰り返し行われている事が気になっていた。調べ上げたのは二つの年代だけだが、もしかしたら他の年代でもあるかもしれない。
 ちなみにポチの助は二つの年代で重なっている魔術師の仕業と思われる他の怪しい事件もエリザベートの方に転送しておいた。
 他の怪しい事件以外は全て他の人達にも拡散した。
 この後、ユリスを捜していた甚五郎達に出会い、情報交換をした。

 甚五郎達と合流後。
「発生する事件の間隔は違うが順番は同じ。気になる発生場所は二つの年代ともあちこち違うのだな」
「あぁ、気になるのは全く同じ事を繰り返している事だ。普通一度失敗したら次は失敗しないようにするものだが、それを気に掛けた様子がどこにも感じられない」
 甚五郎とベルクはひたすら同じ事を何の改良もなく繰り返している事に疑問を抱いていた。
「確かにのぅ。まるで自分の意思が無いようじゃ。しかし、会話をしたという者がおるから全く意思が無いわけでは無いかもしれぬが」
 と羽純。
「昔も今も同じ事件を起こしていると言う事はそこに何か惹かれるものがあるんでしょうか」
 フレンディスが首を傾げていた。
「今まで明確な姿を読み取れなかった姿が読み取れた事を考えたら、もしかしたら他の奴らの聞き込みで何か分かるも知れねぇな」
 ベルクはこれまでの様子と違う今回の事件で何かしら役に立つ情報が手に入るだろうと期待していた。
「そうだな。ただ、最後のページの欠けた部分が気になるが、今は仕方が無いか。ひょっとして五人組は精神体かゴーストの集合体みたいなものなのかもしれないな」
 甚五郎は欠けた部分はひとまず置いて旅団について自分の見解を述べた。
「ワタシも思いつきました。何か五人組で旅をしないといけない呪いがかけられたり何かに取り憑かれていて五人組でなくなったら解けしまうとのではと。これ以外にも何かあればどれが正解か分かりませんね」
 甚五郎に続いてホリイも首を傾げながら思いついた事を次々と挙げた。
「俺も欠けた部分は気になっているが、復元は続けているらしいからすぐに正体について何かしら分かるだろ」
 甚五郎と同じように欠けた部分が気になるベルクが言葉を挟んだ。
「そうじゃな。今はとりあえず、この事件を解決してからじゃ」
 羽純はここで話し合いを打ち切った。
 これによりフレンディス達、甚五郎達はそれぞれの仕事に戻った。
 後ほどみのりが収集した情報が皆に伝えられた。