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第三章 テロへの制裁

 エクリィールはいきなり後ろに手を引かれた。
「私達の後ろに……」
 小さな子供を庇うように、エクリィールは後ろに押し込められる。
「そこ!何してる?!」
「ひっ……」
 銃を持ったテロリストが天井に銃弾を数発撃ち込んだ。悲鳴が生徒達から上がる。
「舐めたマネしたら、お前らの体に同じことをする。手間を掛けさせるな!」

 「ワシに何か用か?」
 小柄な少女が声を上げた。
「……だめ」
 隣の生徒がエクリィールの肩を掴んで止めようとするがスルリと抜ける。これ以上生徒達を巻き込むつもりも無かった。
「ワシに何か用かと聞いている」
 エクリィールの前にあった人垣が割れる。
「何だお前は?コッチに来い!」
「言われなくても、其方に行くのじゃ」

 「……解除」
「あ?」
 エクリィールは駆け出しテロリスト達へと飛び込む。
「『パンプキンヘッド』ォ!」
 欠片が炸裂し、テロリスト達を襲う。一部欠片が窓ガラスに当たり、ガラスが割れた。
 幸い欠片が生徒達に当たる事は無かった。
「逃げるぞ!」

 「くくっ……フハハハ!」
  突如、ハデスが立ち上がり、テロリストをビッと指を指した。
 「リミッター解除!」
 顔には邪悪な笑みが浮かんでいる。
「フハハハ!我が名は世界征服を企む悪の秘密結社オリュンポスの大幹部、天才科学者ドクターハデス!
 ククク、この俺が教育実習で来ているこの学校を襲うとは、愚かなテロリストどもめ!
 リミッターを解除したこの俺が、お前たちを返り討ちにしてやろう!」
 純白の白衣が閃く。
 バジンと腕から雷光が弾けた。雷光は近くのテキストを焼く。それを見て、テロリストは一歩後ろへ下がる。
「な、何者だ?」

 「ククク、テロリストどもよ、我が『放電実験』を食らうがいい!巻き込まれたくない者どもは下がっておれ!」
 腕に力を込めるハデス。パチンと小さな電気が見えたような気がした。
「……って、おや、おかしいな?」
 不思議そうに自分の腕を眺めるハデス。特に変化があったようには、見えない。
 ただ、たっぷり10秒という貴重な時間を使っただけだ。
「ふむ。よいか……テロリスト諸君。話せば分かるから……お互い……じっくりとだな、話しあおうではないか」
「……」
 ハデスに無言で銃が突きつけられる。

「リミッター解除!」
 先ほどまで大人しくしていた咲耶が席を立った。弾みで後ろに椅子が倒れる。
「なっ……」
 慌ててテロリストが銃を向ける。そんな事はお構いなしに、ハデスへと近づいていく。
「もう!なにしてるんですかっ、兄さんっ!貴重なリミッター解除時間なんですから、
 前口上とかそんなどうでもいい事を言ってないで、とっとと敵を倒してくださいっ!」
 『レックスレイジ』がオートで発動。『ツッコミ用スリッパ』で全力でハデスの頭を叩いた。
「兄さんの馬鹿ー!」
 プンと空気の壁を突破する音が聞こえ、盛大な打撃音が響いた。
「……ぅう」
 助ける手を求めるハデスの手が上がるが、力尽き地面にパタリと落ちた。
「……って、はっ!」
 恥ずかしそうに咲耶は顔に手を当てた。
「つい、いつもの癖で、兄さんに全力ツッコミしてしまいましたっ!早くテロリストたちに『召喚獣』を……」

「『召喚獣:バハムート』!えいっ、えいっ!」
 一生懸命手を翳すが、何かがやって来る気配はない。
「……」
 咲耶に無言で銃が突きつけられた。
「大人しくしろ」
「……えーと、ペルセポネちゃん、アルテミスちゃん、あとお願いね」

「任せてください、咲耶お姉ちゃん!」
 アルテミスが自信満々に立ち上がる。
「キロスさん!一緒に戦いましょう!」
「? 何で俺が……あほらしい」
 アルテミスは少し離れた位置に座るキロス・コンモドゥス(きろす・こんもどぅす)を見た。
 面倒臭そうな顔でキロスはアルテミスを見返す。机に肘を着き、明らかにやる気がない。

「リミッター解除!さあ、キロスさん!
 どっちが多くのテロリストを倒せるか、勝負です!」
「めんどくせえ……」
「何ですか?怖いんですか?」
 薄く桃色に頬を染めたアルテミスが、キロスを挑発する。
「何?……リミッター解除。上等だ、勝負してやる!」
 キロスが立ち上がる。
「ふふん、そうでなくてはいけません」
 背中へと手をアルテミスは手を伸ばす。
「さあ、テロリストたちは、この剣のサビに……」
 背中から愛用の大剣を取り出そうとするアルテミスだが、その手は何度も空を切る。
 当然、学校にそんな物騒なものを持って来れる訳がない。
「あれ?ちょっと待ってください」
「……何してやがる?」
 キロスは呆れ顔でアルテミスを見ていた。
「……」
 テロリストがアルテミスに銃を突きつける。
「きゃ、きゃっ!離してくださいっ!」
 ジタバタするが非力な少女に対抗する術は無い。
「馬鹿め!俺が全部頂きだ!」
 キロスのターンと思いきや、同じようにテロリストが無言で銃を突きつけた。
「あ?」
「こっちの女と一緒に縛っておけ」
 突っ立っていただけでリミッターの時間を終えたキロスも同様にテロリストに捕まるのでした。
「く、屈辱です。キロスさんと一緒に捕まってしまうなんて……」
 ムムムッとアルテミスが唸る。
「そりゃ、こっちのセリフだっ!」

 「真打登場ですね!機晶変身っ!」
 ペルセポネが起動コマンドを叫ぶ。
『ペルセポネ専用変身ブレスレット』から『ペルセポネ専用パワードスーツ』が展開される。
「何、撃て!」
 テロリストがマシンガンを撃つが重厚な装甲には効果がない。弾丸は小さく火花を散らし、弾かれた。
 ペルセポネが変身に要する時間は、わずか0.05秒。一切の隙がない。
「無駄です!私の装甲に、通常兵器は効きません!」
「くそっ!どうする?」
 慌てるテロリストとは対照的にペルセポネは余裕顔。
「さあ、テロリストをやっつけますよ!」

 「『エネルギー供給にエラーが発生。装備を緊急パージします』」
 異常を検知したAIが、パワードスーツを自動的に解除する。10秒が経過し、再びリミッターが作動たのだ。
「……へっ?」
 ペルセポネは自分の胸元を見た。
 頼りがいのあった装甲がガシャガシャと足元に落下していく。
 残されたのは、パワードスーツが外れて全裸になったペルセポネでした。
「きゃああっ」
 慌ててペルセポネはしゃがみこんだ。