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第二章 テロ前の学校
 

 学園が宿泊先として借りているホテルのロビー。
 「ダリルはずるい!教師として学校に入るなんてっ!」
「……まだ言っているのか」
 ダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)は眉間にできた皺を揉みほぐし、頬を膨らませるルカルカ・ルー(るかるか・るー)を見た。
「ルカ、この見た目で高校生に見えると思うのか?」
 ダリルに指摘され、ルカは改めて本人の全身を見直す。
「見えないけど……」
「コスプレと言われても、此方は反論出来ない。ならば教師の方がまだ言い訳が立つ」
「良いじゃん、コスプレで!」
 身も蓋もないことを言ってきた。
「だが――」
 困りきったダリルだったが、そこへ夏來 香菜(なつき・かな)がやって来た。
「おはようございます。どうかしましたか?」
「あ、おはよー、香菜。どう、似合ってる?」
 ルカはまだ糊のきいたセーラー服を香菜に見せる。動くたびにヒラヒラと小さくスカートが揺れた。
「すごく似合ってると思います!普段はスカートを履いてませんから、新鮮ですね」
「ふふん。どう、ダリル?」
「まあ……本人が良ければ此方から言うことはない」
「あ、すいません。美羽先輩達と待ち合わせしているので、失礼します」
「んにゃ、また学校でね。香菜」
 ロビーの時計を見ると、ホテルの外へと香菜は出て行った。

 「美羽先輩」
 ホテルの外で立っている小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)を呼び止める声があった。
「おはようございます」
「おはよう、香菜」
 香菜が自動ドアを通って美羽の所へやって来た。
「コハクさんもおはようございます」
「おはよう、香菜さん」
 コハク・ソーロッド(こはく・そーろっど)は穏やかに笑った。
「すいません、お待たせしてしまって」
「私たちも今来たところだよ。ね、コハク」
「はい」

 初夏の涼しい朝の人けの少ない道路を三人で歩いていく。
「今日からの授業、楽しみですね」
「そうね。ところで……キロスはどうしたの?」
 いつもは香菜の近くに居る『キロス』の姿が見えないことに、美羽は気づいた。
「えっと……朝から……ちょっと……」
 気まずそうに香菜は明後日の方を向いていた。
「?……また何かやらかしたのね」
「たぶん……」

 「起きてください、兄さん」
 高天原 咲耶(たかまがはら・さくや)ドクター・ハデス(どくたー・はです)の体を揺らしていた。
「な……何なのだ……俺は昨晩からのシミュレーション研究で疲れているのだ。もう少し寝かせて――」
「徹夜でゲームをしてただけじゃないですか!早く起きてください、アルテミス達も待っているんですから」
「むぅ……あと5分……」
 シーツを頭から被り、ハデスは僅かな睡眠に身を委ねようとする。
「ふう……アルテミスちゃん、ペルセポネちゃん。ちょっと手伝って」
「「はい、咲耶お姉ちゃん」」
 咲耶に言われるままにアルテミス・カリスト(あるてみす・かりすと)ペルセポネ・エレウシス(ぺるせぽね・えれうしす)がシーツの端を持つ。
「いっせーの、えい!」
 パジャマ姿の男が空を舞った。


 「古典……」
 ウンザリした顔でセレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)は本日の科目一覧を見ていた。
「地球まで来て、古典って……普通ないでしょ?」
 セレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)は本日の科目に不満がある訳でもなく、澄まし顔でシャーレットの隣を歩く。
「何を言ってるのか、良く分からないけど。普通の高校なんだから、あるに決まってるわよ」
 半眼でセレアナをシャーレットが睨む。
「私にそんな顔しても科目は変わらないわよ」
「う……分かってるわよ!」
「だと良いけど……」
 セレアナは一抹の不安を抱え、歩調の小さくなったシャーレットの手を取った。
「ほら、行くわよ。初日から遅刻なんて、恥ずかしいわよ」


 「おいで……、摩耶」
 暖かな日差しを受けない薄暗い女子更衣室。衣服が擦れる音と荒い息遣いが聞こえてくる。授業抜け出して女子更衣室で遊んでいるのは、神月 摩耶(こうづき・まや)ミム・キューブ(みむ・きゅーぶ)クリームヒルト・オッフェンバッハ(くりーむひると・おっふぇんばっは)だった。
 摩耶を抱き寄せ、クリームヒルトは首筋に舌を這わせる。
「ん……ちゅ……」
 味を楽しむ様にゆっくりと何度も舐めていく。
「あ……」
「んふ……本当に摩耶のは美味しいわ」
 耳たぶをクリームヒルトは軽く甘噛みする。
「んあ!」
「摩耶……」
 ミムが甘えた声を出す。ミムの小さな肢体を抱きながら、摩耶は細い指を動かした。
「ん……」
 ミムの小さな体が震えた。
「どうしたの……ミム……?」
 人差し指を咥え、ミムはおねだりをする。
「もっと……もっと……触ってぇ……」
「ええ……良いわよ」
 摩耶はミムを抱き、小さな胸へと手を伸ばした。

「……あぁあ。ダメです、アンネ様!」
  御用足しの為向かったトイレでリリンキッシュ・ヴィルチュア(りりんきっしゅ・びるちゅあ)が熱い声を出した。
 相手はアンネリース・オッフェンバッハ(あんねりーす・おっふぇんばっは)
 アンネリースが指を動かす度に、水音がトイレに響く。
「ん……くっ……」
「ふふっ……どうされたのですか?リリン様」
 愛おしそうにリリンキッシュにアンネリースは口づけする。
「ちゅ……ん……ちゅ……」
「ああ……私は……私は摩耶様だけのものですのに。そんなにされては……が、我慢がぁぁぁ……っ♪」
 リリンキッシュの目の色が変わり、今度はアンネリースが声を上げた。