リアクション
現在から数年後。 ◆ 現在から5年後。 パラミタ。 「月(るな)、今日は楽しみだねぇ」 清泉 北都(いずみ・ほくと)は手を繋いでいる少女に話しかけた。 現在北都はパートナーの吸血鬼の貴族の屋敷で執事として働き、恋人は要人警護の任についている。月とは北都と恋人の娘である。娘がいるのに地球、とりわけ日本で同性婚がまだ認め難い状況であるため籍を入れていなかったり。 「うん!」 3歳の空色セミロングの守護天使の少女は嬉しそうにうなずいた。 今日は屋敷暮らしが合わず、故郷の獣人村にいる白銀 アキラ(しろがね・あきら)に会いに向かっていた。 獣人の村、白銀宅前。 「おう、よく来たな。北都、月」 元気良く白銀は訪問してくれた北都と月を元気に迎えた。 しかし、 「……?」 現れた白銀に月は首を傾げ、深海の青色の瞳に疑問符を浮かべる。 その理由を知った白銀は 「こっちを所望か?」 狼姿になり、改めて月の訪問を迎えた。 「わぁ♪」 月は途端にきらきらと目を輝かせて白銀に抱き付き、家に入った。 白銀宅内。 「本当に月はお前そっくりでもふもふ好きだよな。人の時に気付かれないのがあれだけど」 白銀は月にもふもふされながら言った。何度も会っているのに獣人姿の時に首を傾げられるのが複雑だ。ちなみに北都も月に負けないほどもふもふ好き。 「……大きくなったら分かると思うよ」 娘を眺めて和んでいた北都は軽く笑いながら言った。 「で、なんでアイツと一緒に来なかったんだ? 言えば一緒に休む許可は貰えたはずだろう?」 白銀は改めて人数が足りない理由を訊ねた。 「一緒だと君がのんびり出来ないからさ」 北都は即答した。 「……のんびりって、今もそれほどのんびりしてはいねぇと思うけど」 白銀は微妙な感じで答えた。こうして話している時も月のもふもふへの愛を全力で受け止めている。 「そういう意味じゃなくてね。精神的にという事だよ。愛しい娘が自分以外の男に抱きついて喜んでるなんて!! って、不機嫌オーラを君に向ける事になるのは目に見えてるから」 北都は言葉にした情景を想像しながら言った。 「あぁ、そういう事か。昔からそれ受けてるぞ」 白銀は北都の答えに納得すると共に昔の事を口にした。月が生まれるずっと前の事。 「昔からというと……」 「そっ、お前がオレをもふってる時、アイツ同じような顔してた。好きなものを取られたって感じでな」 白銀は北都の言葉が終わらないうちに恋人がまだ北都の特別ではなかった時の事を話した。 「……今ならそれがよく分かるよ。当時は分からなかったけど」 北都は昔を思い出し、苦笑した。 「本当、お前らは昔も今も変わらねぇな。まぁ、それがいいんだろうけど……というか眠っちまったんだけど」 白銀はカラカラ笑った後、月が白銀に抱き付いたままいつの間にか眠っている事に気付いた。 「もうしばらく頼むよ」 「仕方ねぇな」 北都のお願いに白銀は月が目覚めるまでじっとその場に待機する事となった。 「みんなと幸せに過ごせたら同じでも構わないね」 北都は眠る我が子に優しい眼差しを向けた。 ■■■ 覚醒後。 「……あれが僕の明るい未来か」 北都は体験した未来を振り返っていた。自身の幸せを夢見る事が無いため、少し興味を抱き被験者となったのだ。 「……悪くは無かったな。それほど変わりなかったけど」 と白銀。立場は変われどもふもふされるのは変わらなかった。 |
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