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イルミンスール大図書室、その深層は!?

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イルミンスール大図書室、その深層は!?

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    ★    ★    ★

「こんな所に変なポスターが……」
 迷子になっていたマネキ・ングが、本の葉が広がる木の幹に貼りつけられたポスターを見て顔を顰めました。
 そこには、『世界カレー化計画。カレーは最高!』と書かれています。
「最高はアワビに決まっているというのに……」
 そう言って、マネキ・ングがポスターを破り捨てようとしました。が、何か思いついたのか、いったん手を止めます。
「待てよ……。ただのカレーではなく、アワビカレーと言うことにしてしまえば、これはこれで……。ふふふふふふふ……」
 なんだかどす黒い笑いを浮かべると、マネキ・ングはポスターにアワビカレーと書き込みました。
「おお、あっちにも貼ってある。よし、全てアワビカレーにしてしまうのだ。アワビ最高!」
 掲げた右手をクイクイとさせると、マネキ・ングはアーサー・レイスが貼っていったポスターの跡を辿っていきました。

    ★    ★    ★

「ふう、やっとキャンプが修復できたであります」
 ダンボールハウスを修復した葛城吹雪が、満足そうに額の汗を拭いました。すでに、コルセア・レキシントンは諦めています。
 ひゅるひゅるひゅる〜。
「なんの音であります……うぽあっ!」
 突然、何かが上の方から落ちてきて、ダンボールハウスをぶっ壊しました。
「大丈夫?」
 コルセア・レキシントンがあわててダンボールを取り除くと、その下から葛城吹雪と怪人デスストーカーが現れました。
「ううっ、はっ、ここは……。ハデス師匠、どこDEATHかあ!」
 そう叫ぶと、怪人デスストーカーはあわてて逃げだしていきました。

    ★    ★    ★

「やっと見つけた。やっぱり、ココさんとは見えない糸で繋がれているんだね」
 首尾よく最初にゴチメイたちを見つけた風森巽が、持ってきた食料を広げながら言いました。とりあえず、お腹を空かせているゴチメイたちにおむすびを配ってから、持ってきた調理器具と食材で温かい料理を作ります。
「いやあ、助かったよ。もう、お腹空いてお腹空いて、餓死するかと思ってたんだ。やっぱり、持つべき物は、その、あの……まあ、あれだよなあ」
 ちょっと乙女のはにかみを見せながら、ココ・カンパーニュが言いました。
「リンちゃんも、もう少し待っていればよかったのにい。せっかちさんですねえ」
 もう我慢できないから、何か食べ物探してくると言って飛び出していったリン・ダージのことを思って、チャイ・セイロン(ちゃい・せいろん)が言いました。
「そのうち帰ってくるだろう。なんとはなれば、飛んで探しに行くとしよう」
 問題ないと言いながら、人の姿をとったジャワ・ディンブラ(じゃわ・でぃんぶら)がおむすびにかぶりつきました。
「まあ、なんにしても便利ですね」
 風森巽から、温かい煮物の腕を受け取りながらペコ・フラワリー(ぺこ・ふらわりー)が言いました。完全に、風森巽をココ・カンパーニュの従者扱いにしています。もはや、アイテム?
「はい、ココさんもどうぞ」
「おっ、ありがと」
「じー……」
 風森巽がココ・カンパーニュに差し出したお椀を、アルディミアク・ミトゥナがジーッと睨みつけました。
「お芋が少し大きいですね」
「えっ!?」
 何を言われたのか瞬間分からなくて、風森巽が戸惑いました。
「お芋が少し大きいですね!」
「そ、そんなことはないと思う」
「そんな姑息な手段で気を引こうだなんて……」
 ダメです。完全に小姑状態です。
「まあまあ。大して変わらないって。ほしかったんなら、あたしのをあげるから」
 ココ・カンパーニュの方は、まったく気づいていません。
「と、とりあえず、受け取って……」
 いたたまれなくなって、風森巽がお椀を突き出しました。
「あっ、ごめんなさい」
 そう言うと、あらためて気づいたという感じで、ココ・カンパーニュがお椀を受け取りました。指先が、ちょっとだけ触れ合いました。
「どうどうどう!」
 あわてて、マサラ・アッサム(まさら・あっさむ)とチャイ・セイロンがアルディミアク・ミトゥナを押さえ込みます。ここで風森巽を吹っ飛ばされては、せっかくの料理もただではすみません。
「こっちへ……」
 そう言って、ココ・カンパーニュが風森巽の手を引っぱりました。
 とりあえず、アルディミアク・ミトゥナから直接見えない本棚の樹の陰に隠れます。
「はあはあ、まったくシェリルの奴ったら」
 地面に両手をついて、ココ・カンパーニュが面白そうに言いました。
「あっ、しまった。おむすび忘れた……」
 ごたごたしていておむすびを忘れてしまったと、ココ・カンパーニュが顔を顰めました。
「大丈夫、ちゃんと持ってきています」
 その点はぬかりないと、風森巽が手に持っていたおむすびを出しました。してやったりです。
「トレビアン!」
 嬉しそうにココ・カンパーニュが叫びます。
「あっ、そういえば、ココさんってパリジェンヌだったんですよね」
 今さら思い出したように、風森巽が言いました。
「いや、フランスのド田舎だけど……」
 やってもうた……。風森巽が、失言したと引きつります。
「と、とりあえずおむすびを……」
 風森巽が差し出すおむすびを受け取ろうとして、ココ・カンパーニュが汚れた手をはたいて土を落としました。
「あ、ハンカチは……ないですね。ええっと、あーん」
「えっ……。メルシー。モンシェリー」
 ちょっと戸惑いを見せた後、ココ・カンパーニュがちょっと頬を染めながらパクリとおむすびにかぶりつきました。
「うん、美味しい」
「よーし、リア充を爆発させて道を切り開くわよ!」
「へっ!?」
 突然の声に、ココ・カンパーニュと風森巽が振り返りました。
 見れば、ララ・サーズデイから奪い取った機晶爆弾を持ったリリ・スノーウォーカーが叫んでいます。行く先々で、本に邪魔をされてきたので、ブチギレて何もかも吹っ飛ばす気満々です。そこで、ココ・カンパーニュと風森巽のリア充らしき物を見たものですから、もう無茶苦茶なのでした。
「ちょっ、何考えてる。そこまでだ!
 そう叫ぶなり、風森巽がリリ・スノーウォーカーにキックを放ちました。
「あーあたしがいない間に、おしいそうなもの食べて、楽しそうなことしてる!」
 そこへ戻ってきたのは、リン・ダージでした。
 コンちゃんやアーサー・レイスや小鳥遊美羽たち、それと、途中で一緒になった秋月葵とリカイン・フェルマータ、マネキ・ングを探していたセリス・ファーランドたちも一緒です。
「やっと、ゴチメイたちを見つけたあ。なのに黒子ちゃんったら、どこ行っちゃったんだか……」
 まったくもうと、秋月葵が溜め息をつきました。