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イルミンスール大図書室、その深層は!?

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イルミンスール大図書室、その深層は!?

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    ★    ★    ★

「それじゃあ、一応ゴチメイを捜しに出かけるわよ。一応……」
 毎度のメンバーを前にして、日堂 真宵(にちどう・まよい)が言いました。もちろん、真の目的は他にあります。
「ハーイ、準備満タンデース。カレー鍋も万端デース」
 カレーの香りがだだもれる大きな寸胴鍋を持ったアーサー・レイス(あーさー・れいす)が答えました。
「この特製カレーであれば、きっとリンちゃんも食べにやってくるのデース」
 絶対の自信を持って、アーサー・レイスが言います。
「まあ、何ごとも体験漫画のネタにはなるがな」
 愛用のスケッチブックをかかえた土方 歳三(ひじかた・としぞう)だけは、ちゃんとバイトをこなすつもりのようです。もちろん、事前に編集長と専属イラストレーター契約は結ぶ約束をしています。へたな写真よりも、臨場感あふれるイラストこそ、御当地マップにはふさわしいというものです。
「ここは、あまりいい感じが……ちょっと、何をしようとしているんですか!!」
 本棚に無茶苦茶分厚い本を戻そうとしている日堂真宵を見て、ベリート・エロヒム・ザ・テスタメント(べりーとえろひむ・ざてすためんと)が、死に物狂いでその本を奪い取りました。
「えっ? 何って、本の返却を……」
 しれっと日堂真宵が答えます。
「この本は私の本体じゃありませんか。まさか、私をこの禁書保管庫に封印しようなどと……」
「ま、まさか。そんなこと、これっぽっちも思ってみなかったわよ……」
 そっぽをむいて日堂真宵が言いました。
「テスタメントの目を見て言ってください、目を見て! こら、こっちむけ!」
「いたたたた……。土方さん、なんとかしてよ……」
 思いっきり掴まれた頭をひねられて、日堂真宵が悲鳴をあげました。
「じゃれてないで、さっさと仕事を済ますぞ」
 仕方のないと言う感じで、土方歳三が日堂真宵から、ベリート・エロヒム・ザ・テスタメントを引き剥がしました。
「あれ? アーサーは?」
 一人足りないと、日堂真宵が周囲を見回しました。
「とっくの昔に、一人で先に飛び込んでいったが」
 気づくのが遅いと、土方歳三が日堂真宵に言いました。
「あの馬鹿、お宝を独り占めにするつもり……、え、ええっと、二次遭難したら大変だわね。急いで後を追うわよ。しゅっぱーつ!」
 思わず本音を言いかけて、日堂真宵はあわててごまかしました。

    ★    ★    ★

「あれ? 親切そうな人、どこに行っちゃったんだろう? 困ったよー、このままじゃ迷子のままだよー。ぐすん」
 コウジン・メレの姿を見失った川村玲亜が、いつの間にか禁書保管庫に紛れ込んできてべそをかきました。
 人波と、なんだかカレーの匂いがした気がして、ふらふらとここへやってきてしまったのです。
 見れば、奥の方にぼんやりと光り輝く魔方陣が見えます。
「きっと、あれが出口だよね。お姉ちゃん、私はここだよー」
 そう決めつけると、川村玲亜は魔方陣の中に駆け込んでいきました。

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「どうやら、この先に遭難したゴチメイたちがいるらしいな」
 聞き込みの末に禁書保管庫にやってきたセリス・ファーランド(せりす・ふぁーらんど)が、魔方陣の描かれた巨大な本を前にして言いました。
「うむ、ゴチメイ戦隊と名乗っているからには、ぜひとも救出せねばならぬな。アワビ最高!」
「アワビ最高!」
 マネキ・ング(まねき・んぐ)の言葉に、あわてて粘土板原本 ルルイエ異本(ねんどばんげんぼん・るるいえいほん)が唱和しました。
 ゴチックメイド戦隊のことを、ゴチソウのアワビ大好きメイド戦隊だと勘違いしているマネキ・ングと、誘われてアワビの神の布教のためにやってきた粘土板原本ルルイエ異本はちょっと……いえ、かなりずれています。
「なんか、違和感をいだくが……。まあいいだろう。放っておくわけにはいかないからな。遭難者たちを探しに行くぞ」
よし、労働力の確保だ
「布教です」
 なんとも統一のとれないまま、セリス・ファーランドたちは魔方陣の中に進んでいきました。

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「クククク……。この先が、話に聞いた未踏破地域か。いいだろう、ここから先は、我がオリュンポスの領土とする。よって、マップの作成を許可されるのも、我らだけなのだ。もちろん、マップを載せる雑誌の広告欄も、全て我らオリュンポスの物となるのだあ!」
「最高DEATH、ハデス師匠」
 相変わらず意味不明の理論で高笑いをあげるドクター・ハデス(どくたー・はです)を前にして、怪人 デスストーカー(かいじん・ですすとーかー)が感銘して讃えました。
「だが、愚かにも、我らの領地を勝手にマッピングしようとしている者たちがいるらしい。怪人デスストーカーよ、そいつらを見つけだして排除するのだ」
「了解したDEATH。サーチ・アンド・デストロイDEATH」
「ゆくぞ!」
 白衣を翻すと、ドクター・ハデスは怪人デスストーカーを引き連れて、魔方陣のむこうの世界へと侵攻していきました。

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「ここが、遭難した人たちの入った入り口ですか」
 巨大な魔道書を前にして、非不未予異無亡病 近遠(ひふみよいむなや・このとお)が言いました。
「はい、依頼書には、そう書かれています」
 イルミンスール魔法学校の掲示板に貼られていた依頼書の写しを持ったイグナ・スプリント(いぐな・すぷりんと)がうなずきました。
「面白い魔方陣でございますね。今まで見たことがないパターンですわ」
 非不未予異無亡病近遠とともに魔道書のページに興味を持ったアルティア・シールアム(あるてぃあ・しーるあむ)が、そのパターンをメモに書き写しながら言いました。
「いずれにしても、未知の領域での捜索は、いい腕試しになるかと」
「そういうことにしておきましょうか」
 イグナ・スプリントの言葉に、非不未予異無亡病近遠が言いました。
 図書館であるのですから、館内配置図でどこになんの本があるのかは表示してほしいところですが、マップを作ることにはあまり意味を感じてはいません。だいたいにして、位置は常に変化するものであるのですから、どのような本がひとまとめにされているかの方が大切だと思っています。その方が、目的の本を発見しやすいではないですか。探すのは、本棚や部屋ではなく、本であるのですから。
 ただ、新しい区画というのがどのような物であるのかには多大な興味のある非不未予異無亡病近遠でした。
「では、探検と行きますか」