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イルミンスール大図書室、その深層は!?

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イルミンスール大図書室、その深層は!?

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「今、我々葛城探検隊はパラミタに残された秘境の一つ、大図書館に挑んでおります」
 マイクを持った葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)が、あらぬ方向をむいて大げさに言いました。
「ちょっと、どこむいて話しているのよ」
 また何か始まったかと、コルセア・レキシントン(こるせあ・れきしんとん)が溜め息をつきました。
「そんな我々の前に現れた物は……。ああ、あれはなんでありましょうか。巨大だ。実に巨大な何かが、闇の中に蠢いておるであります。さっそく、近づいて確かめてみることにするであります」
 マイクをしっかりと握りしめたまま、葛城吹雪が禁書保管庫の奥の方へとそろりそろりと進んで行きました。
「おおっと、コルセア隊員。気をつけてください。どこから凶暴な魔道書が牙をむいてくるか分からないのであります。特に、毒魔道書には充分気をつけるであります」
 突然何かを思い出したかのように、葛城吹雪が振り返ってコルセア・レキシントンに言いました。
「何よ、その毒魔道書って言うのは……」
 もうわけが分からないと、コルセア・レキシントンが呆れます。
「ま、眩しい。この輝きは……魔方陣であります。今、怪しい魔方陣が、我々の眼前に忽然と現れたのであります。これは、ここで何かの怪しい儀式が行われていたのありましょうか。それとも、新たな超絶魔道書の覚醒の場面に我々は遭遇したとでも言うのでありましょうか。ここでコマーシャルであります」
「スポンサーがいたの!?」
 葛城吹雪の言葉に、コルセア・レキシントンが驚きますが、もちろん、ただの言葉のあやです。
「はい、CMがあけました。それでは、いよいよ、謎の魔方陣に突入しようと思うであります。けれども、ここで思いもしないトラブルが我々を襲うとは、夢にも思わな……」
「さっさと入りなさい!」
 いつまでもぐずぐず中継ごっこをしている葛城吹雪を、コルセア・レキシントンが蹴っ飛ばして魔方陣の中へと叩き込みました。

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「簡単な見取り図を書くだけだと思っていたのに、大図書室って、こんなに広かったんだあ」
「もちろんじゃ。なにしろ、我が輩がゆったりと飛ぶことができるんじゃからな」
 広大な大図書室を初めて見て驚いているマーガレット・アップルリング(まーがれっと・あっぷるりんぐ)に、アガレス・アンドレアルフス(あがれす・あんどれあるふす)が言いました。
 その言葉に、セリーナ・ペクテイリス(せりーな・ぺくていりす)が本当だろうかと、ちょっと疑わしそうな目をむけます。
「お師匠様のことはおいておいて、ここは大司書さんが管理している大図書室ですから、それはそれはりっぱなのです」
 憧れるような目で、リース・エンデルフィア(りーす・えんでるふぃあ)が説明します。スルーするなと突っ込みを入れるアガレス・アンドレアルフスは完全無視です。
「大司書さんですか?」
 聞いたことがないと、マーガレット・アップルリングが聞き返します。
「そうです。りっぱ方だという噂なんですよ。ぜひとも、一度お会いしたいと思っていたのです」
 どうやら、マーガレット・アップルリングのマッピングを手伝うと言っていたリース・エンデルフィアの本当の目的は、大司書さんに会うことのようです。
「さて、次はどこを調べましょうかぁ」
「みんなは禁書保管庫の方へ行ったみたいですし、なんとなく大司書さんがいそうな気がしますから、そちらへ行きましょう」
 セリーナ・ペクテイリスの言葉に、リース・エンデルフィアが答えました。
「これはまた……。何か、懐かしさを感じるのう」
 禁書保管庫の奧にある巨大な魔道書を見て、アガレス・アンドレアルフスが言いました。
「これは、いかにも、大司書さんの魔法って言う感じです!」
 リース・エンデルフィアが目を輝かせました。
「入ってみましょうかぁ?」
 セリーナ・ペクテイリスの言葉に、リース・エンデルフィアが思いっきりうなずきました。

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「ここに、新たな道が開いたんだな。きっと、この先には新たな部屋があって、新たな本があるんだろう。きっと、その先にはあの大司書もいるに違いない」
 ここに、もう一人、大司書に会うことを夢見ている男、グラキエス・エンドロア(ぐらきえす・えんどろあ)がいました。
「ずいぶんな自信だな。何か、根拠でもあるのかな」
 ゴルガイス・アラバンディット(ごるがいす・あらばんでぃっと)が訊ねました。
「勘……というよりは、感じる物があるということかな。きっと、この先には、本があふれているに違いない。本のある所にこそ、大司書はいるはずだ」
「さすがは、グラキエスだな。至極まっとうな理論だ」
 うんうんと、ベルテハイト・ブルートシュタイン(べるてはいと・ぶるーとしゅたいん)がうなずきます。
「まっとうも何も、あたりまえと言えばあたりまえではあるがな。あまりグラキエスの趣味をあおりたてない方がいいぞ、ベルテハイト。まあいい、ではそこへと行ってみようか。なあ、グラキエス」
 ベルテハイト・ブルートシュタインに一言釘を刺すと、ゴルガイス・アラバンディットがグラキエス・エンドロアをうながしました。

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「えー、私たちも一緒に行くんですかあ」
「もちろんですわ」
 渋るテンコ・タレイアに、ショワン・ポリュムニアがきっぱりと言いました。
「テンコちゃんは、サボろうとした……と。めもめも……」
 すかさず、リクゴウ・カリオペがメモります。
「ああ、ひどーい。あたしたちは、ちゃんと働いてたのに……」
「仕方ない。まだまだ、仕事続いている……」
 愚痴るテンコ・タレイアを、まあまあとテンク・ウラニアが慰めました。
「テンコちゃん、ガンバだよぉ」
 のほほんと、タイモ・クレイオがテンコ・タレイアたちを応援しました。
「いずれにしても、いろいろと調べなければならないことがあります。できれば、ここにある本をよく知っている者に話を聞ければ、時間の節約になるというものです。なんでも、この転移の魔方陣の先には、この図書室の大司書がいるとか。実に興味深いことです」
 ショワン・ポリュムニアは、この魔道書の先に大司書がいるという学生たちの話を信じたようです。
「さあ、行きますよ。遅れないように」
 一同をうながすと、ショワン・ポリュムニアは魔方陣の中へと入っていきました。

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「ほーほほほほ、残るは、この先のエリアだけですわ。さっさと済ませて、今月の生活費をいただきますわよ」
「はい、お嬢様」
 お嬢様に言われて、執事君がうやうやしくお辞儀しました。大図書室のその他の場所のマッピングは、執事君が即行で終わらせています。お嬢様の執事たる者、その程度は仕事にもなりません。
 ちなみに、メイドちゃんはのんびりとお茶を飲んでいました。この程度のことでは、出る幕もないという感じです。
「それでは出発!」
「はい、お嬢様」

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「まったく、変な奴を撒くのに思わぬ手間をとってしまったわ。あの子供たちはこの中に入ったのだな」
 川村玲亜から逃げるために大図書室の中をグルグルと回っていたコウジン・メレが、やっと禁書保管庫に辿り着きました。
「禁書か、この先にある本ならば、少しは期待できると言うことか」
 コウジン・メレは、迷わず魔方陣の中へと入っていきました。

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「ああっ、もう。せっかく、この大図書室を思う存分堪能できると思ったのにい。玲亜ったら、本当に迷子になるだなんて……」
 川村玲亜を探し回っていた川村詩亜が、最後に残った禁書保管庫へとやってきました。
 せっかく本の海の探検を堪能できると思っていたのに、ずいぶんと思惑が外れてしまったようです。とはいえ、川村玲亜が迷子になるのは、ある程度予想できたことでしたが。
 そのため、あわてず騒がず書架の本の背表紙も楽しみながら、しっかりと探してきたわけですが、結局見つかりませんでした。仕方なく聞き込みを行うと、何やら禁書保管庫に入っていくのを見たという証言がいくつもありました。どうやら、ここに迷い込んで、そのまま魔方陣の中へと入っていってしまったようです。
「いったいどこにむかっているのやら。待っててね、今見つけてあげるわよ」
 この先にどんな本があるのかちょっとわくわくしながら、川村詩亜は魔方陣の中へと入っていきました。