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リア充爆発しろ! ~クリスマス・テロのお知らせ~

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リア充爆発しろ! ~クリスマス・テロのお知らせ~

リアクション

「ポーキーゲーーーーーーームッッ!」
 雅羅たちが客席へと戻ると、パーティー会場はすごい盛り上がりになっていました。
「説明せねばならない!」
 テーブルの上に立ったセレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)は、腰に手を当て、参加者たちを眺め下ろします。
「ポーキーゲームとは! 二人でポーキーを両端から食べるゲームである。以上!」
「言われんでも、知ってるわ!」
 周りから総突込みですが、セレンフィリティは気にした様子はありません。ちょうど気分も乗ってきたところなのです。
 あの後、彼女もパーティに備えて着替えてきたところでした。
 真っ赤なビキニで再登場です。ミニスカサンタになるつもりだったのですが、全身を分厚い生地で覆う姿が、彼女の美学に反したのです。身体を覆っているのは胸と腰周りしかありません。いつものことですが、小さい子供もいるのにお構いなしです。
 ケーキにフライドチキン、ポテト、サラダ、デリバリーのピザまで食い散らかした後は、欲望の赴くまま愛しい恋人とポーキーゲームをするのみです。
 ところで、『ポーキー』とは! 言うまでもなく、お菓子メーカー『尾崎クリコ』が発売している、チョコレートの塗布された細いスティックタイプのお菓子なのです。美味しい上に、二人で食べると幸せなことになります。
 性なる夜だからといって、パーティーの最中に口付けなどはしたない真似は許せません。しかし、ポーキーゲームなら! 両端から棒状のお菓子を食べるだけです。おやおや、二人とも真ん中まで食べたところで、偶然顔がくっついてしまいましたよ! そう、これは合法! ゲームで偶然起こったハプニングなのです。まあ多分。
 そんなポーキーゲーム。
「ポーキー持ってきたわよ」
 陽菜都がグラスにさしたポーキーの束を運んできます。
「言っておくけど。これはあくまでお菓子として持ってきただけなんだからね! いくらクリスマスだからといって、羽目をはずしすぎて公序良俗に違反するような行為は謹んでね」
 根が真面目な陽菜都は、ポーキーのグラスをテーブルに置くと、ぷいっと不機嫌そうに戻っていきました。きっとツンデレ属性も持ち合わせているのでしょう。柱の影から、ドキドキ覗き見していますが。
「と言うわけで、セレアナ」
 テーブルの上から降りてきたセレンフィリティは、さっそくポーキーを口にくわえて、恋人のセレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)の前に突き出します。チョコレートつきの方を相手に食べさせてあげようという優しいセレンフィリティです。
「みんな見てるじゃない」
 言いながらも、セレアナはポーキーの反対側をくわえたのでした。
 見つめあいながら、ポリポリと食べ始めます。
「まあ、破廉恥ですわ。少しは場をわきまえてもらいたいものですわね」
 眉をひそめながら言ったのは、アデリーヌ・シャントルイユ(あでりーぬ・しゃんとるいゆ)です。すでにポーキーを口にくわえてスタンバっていましたよ。恋人の綾原 さゆみ(あやはら・さゆみ)と一緒に食べ始めます。
 会場は、ほぐれた空気になってきました。参加者たちは食事も進み会話も弾んでいるようです。
 そんな中、いいムードの曲が流れてきました。
 パーティーを盛り上げようと、【アコースティックギター】をかき鳴らすのは想詠 夢悠(おもなが・ゆめちか)、パートナーの想詠 瑠兎子(おもなが・るうね)は【フルート】を奏でます。
 夢悠は主に男の娘アイドルなのですが、楽器の演奏も出来るのです。
 流行の曲から落ち着いた曲まで、しばし参加者たちの耳を楽しませます。
「歌います!」
 さゆみとアデリーヌが、ポーキーゲームを切り上げて前に出てきました。
 こちらも、アイドルの本格派です。夢悠たちの伴奏で美声を披露したのでした。
 陽菜都の特技が歌だと聴いていた夢悠は、優しく呼びかけます。
「キミもどう? 是非聞いてみたいな」
 彼女にも、みなと一緒にクリスマスを楽しんで欲しいとの思いです。男子は苦手ですが、男の娘アイドルではどうでしょうか?
「……!」
 陽菜都は、出てきかけて途中で固まってしまいました。
 男子が、期待に満ちた目で彼女を見つめています。これ以上近づかれると、条件反射的に殴りつけてしまいそうです。
「ごめんなさい」
 クリスマスに暴力は避けたい陽菜都は、申し訳なさそうに厨房へと引き返していきます。
 そこへ。
「大丈夫だから、来な。お前はきっと変われる」
 陽菜都を引き戻すために手を伸ばしたのは、如月 和馬(きさらぎ・かずま)です。
 もちろん、彼だってパーティーを楽しんでいたのです。New和馬として生まれ変わった彼は、羽目をはずす騒ぎはしません。紳士的な立ち居振る舞いで、目立つこともなく、悠々と食事と談笑をたしなんでいたのでありました。
 今夜の和馬は、悩める女の子を放置しておくほど野暮ではありません。ワイングラスを片手に、優雅なしぐさで陽菜都に微笑みかけます。
 背景にバラが出現しました。少女マンガの王子様チックにまつげがやたらと長くなり、大きくなった瞳には星がキラキラと宿っています。
「さあ、出ておいでお姫様。オレがみなの所へエスコートし」
「いやーーーーーー!」
 和馬に至近距離まで迫られた陽菜都は、パンチを繰り出していました。切れ味鋭いストレートが、和馬の顔面に命中します。
「ああっっ、ごめんなさい」
「ふっ。元気な子猫ちゃんだ」
 だがしかし! New和馬は、そこいらの童貞どもとは違うのです。
 陽菜都のパンチを食らってもなお、動じることなく穏やかな笑みを浮かべたままでした。実のところ、パラ実で修羅場を潜り抜けてきた恐竜騎士団の和馬にとって、大したダメージではありません。
「構わないさ。そこが陽菜都の魅力だろ。オレで良ければ、何発でも打ってみな。その想い、全て受け止めてやるぜ」
 女の子たちを華麗にエスコートすることが、和馬に課せられたミッションなのです。紳士的な物腰を崩すことなく、陽菜都をエスコートしなければならないのです。
 言っておきますが、これは下心があってのことではありません。本命は別にいるのです。大人の階段を上っていることを童貞どもにアピールしてやることによって優位に立ち、意中の女性との距離も縮まると言うものです。
「みんなも待っている。オレと一緒に行こう」
「ごめんなさいごめんなさい!」
 ボコボコボコボコ! 
 陽菜都の放つパンチは、和馬が全て顔面で受け止めます。
 なんという包容力でしょう。鼻血すらカッコイイ和馬は、攻撃をものともせず前進を止めません。
「ほら、もっと来い! オレは、まだまだ大丈夫だぞ!」
「ひいぃぃぃぃぃ!?」
 陽菜都は、殴りつけながら涙目になっていました。
 和馬の顔がボコボコに変形してホラーの化け物みたいになってきています。笑みを浮かべたままの表情が不気味さを醸し出しています。
「ひ〜、な〜、つ〜!」
「いやぁぁぁぁぁぁ!」
 殴っても退くことなくぐいぐい迫ってくる和馬に、陽菜都は厨房から走り出て、レストラン内を逃げ惑います。唖然と見守る参加者たち。
「はははは。待て待て〜!」
「助けてーーーー!」
 陽菜都はレストランの外へと走り去っていきました。その後ろを、和馬は全力で追いかけます。
 二人は、瞬く間に街の人ごみの中へと消えて行き、見えなくなってしまいました。
「……」 
 なんとも言い難い沈黙が、会場を包んでいます。
 そんな中、夢悠だけは雰囲気に飲まれることなく演奏を続けていました。
 陽菜都に逃げられたのは残念ですが、雅羅が聞いてくれているのです。それだけで十分なのでした。二人だけの空間。これはこれでいいムードです。
「雅羅、一緒に歌おう!」
 あの後、出し物の準備をしていたルゥ・ムーンナル(るぅ・むーんなる)が、戻ってきました。
 子供たちが喜んでくれるかもしれない、と【ワイルドペガサスの馬車】を持ち出してきたのです。
 クリスマス仕様に装飾された馬車を操るのは、パートナーの此花 知流(このはな・ちるる)です。さすがに小さなファミレスに馬車を運び入れることは無理なので、入り口の外に横付けすることになりました。 
 クリスマスの街を馬車で流すのも、パーティーのイベントとしてオツなものです。
 子供たちが物珍しげに寄ってきます。
「乗せて上げてね」
 それとは別に、ルゥは、聖歌隊で鍛えた歌唱も披露してくれるのです。なんというサービス精神の持ち主でしょうか。
「私、あまり自信がないんだけど」
 周りが歌を歌うのが上手すぎて、雅羅は尻込みします。
「心がこもっていればいいの」
 ルゥは、笑顔で雅羅の手を引き舞台へと上げました。もう、先ほどまでのちょっと変なルゥはいません。聖夜に光臨した清らかな美少女なのです。
 参加者たちにロウソクが配られ、キャンドルサービスも始まりました。
 照明が落とされ、ロウソクの淡い光の中で皆が一緒に楽しく歌を歌います。
 平和で穏やかなひと時。おかしな連中など現れそうにありません。
「ただいま……」
 逃げ出した陽菜都が帰ってきました。あろう事か、和馬に手を引かれて。
 和馬の姿は、すでに原型をとどめなくなっています。陽菜都を捕まえるのにどれほど激しい格闘劇があったのでしょうか。一方的に殴られまくり全身から血が吹き出しています。
 薄明かりの中で見ると、めちゃくちゃ怖いです。
 それでも彼は、優しく微笑んでいるのです。いや、顔が傷だらけでよくわかりませんが、まあ多分。
「ほら、平気だったろう?」
「……」
 陽菜都は真っ赤になって顔を背けていましたが、こくりと小さく頷くと客席の隅に腰掛けました。
「メリー・クリスマス」
 和馬は、陽菜都にもロウソクを手渡して上げました。
 ロウソクの火に照らされた和馬は、ハンパない迫力あります。絶対夢で出ますよ、この怖さは。
「ありがとう」
 にもかかわらず、陽菜都は和馬を見つめながら、ロウソクを受け取ったのでした。
「おおっっ、ブラボー!」
 固唾を呑んで様子を見守っていた参加者たちは、喝采の声を上げました。
 あの陽菜都が、男子とのコンタクトに成功したではありませんか。
 すぐに免疫がつくことはないでしょうが、大いなる一歩を踏み出したと言っても過言ではありません。
 女の子を華麗にエスコートできた和馬は、グッと拳を突き上げます。
 ひどい目にあいましたが、我がクリスマスに悔いなし! もはや、童貞どもとは住む世界が違うことが証明されたのです。
「ぐふぅ……」 
 見事任務を果たし終えた和馬は、仁王立ちのままその場で動かなくなりました。その姿はやり遂げた男の威厳に満ち溢れてたといいます。
「……」
 頬を染めて上目遣いの陽菜都がじっと見つめる中、オブジェと化した和馬は、拍手に包まれ誰にともなく運び出されていきました。この辺で退場です。
 そして、時間は粛々と経過していきました。
 パーティーの参加者たちを祝福するかのように、満天の星空が広がっています。街のイルミネーションと飾りつけられたクリスマスツリーのライトが、流れていく歌に合わせて点滅しているのがわかりました。
 クリスマスツリーが……。
「ん?」
 ふと、誰ともなしに違和感を覚えて、暗闇の中顔を見合わせます。
 飾ってあったクリスマスツリーの数が多いような気がしたのです。ロウソクの数も増えていませんか?
「こんなレバー、あったっけ?」
 確認のために室内灯をつけようと部屋の隅へと近寄っていった雅羅は、目の前の太い突起物を握りました。太くて硬い棒は、なんだかいやな感触で熱く脈打っています。
「? ……ああ、スイッチはこれよね。じゃあ、このレバーは?」
 雅羅が反対の手で室内灯のスイッチを入れると明かりが戻ってきました。
 目の前には、小さな“クリスマスツリー”が出番を待ちわびていたのでした。
「メリークリスマス! 僕を食べてもいいんだよ!」
 どこから、いつの間に入り込んだのでしょうか。
 下半身を何も身につけていない男が、器用にこちら向きで壁にへばりついていました。雅羅と目が合うと、ポッと頬を染めます。
「いやん(はあと)。こすってくれると、ホワイトクリスマスぅ!」
「……」
 雅羅は、自分が握り締めていたものを見つめました。それは、男の大切なカリスマ。壁の男は、今夜絶賛活動中のツリー隊だったのです。
「……」
 雅羅は、その場で完全に硬直します。
「氷術!」
 事態を察知した夢悠が容赦なく、スキルを放ちます。
「こっちよ」
 ルゥが、雅羅を引き離しました。全く、彼女になんて事をしてくれるんでしょうか! もう許せません。
 会場内は、一瞬で騒然となりました。
 ツリー隊の男は、カサカサと壁伝いに這って逃げます。見事な動きです。それだけの特技があるなら、他で役に立つでしょうに。
 全員が、ツリー男を捕らえようと追いかけ始めました。
「……」
 雅羅は、まだ声が出ないようで、少し離れたところでぐったりと座り込んでいました。そんな彼女を、ルゥがぎゅっと抱きしめて落ち着かせます。
「大丈夫。大丈夫だからね」
「な、なにあれ!?」
 ぼんやりとしていた陽菜都は、騒ぎに気づいて我に返りました。
 見てはいけないものが見えています。よくわからないのですが、全身が汗でびっしょりです。驚きのあまり、悲鳴もでません。
「お、おしぼり取ってくる」
 悪寒が止まらない彼女は、男の捕獲は他の参加者たちに任せて、よろよろと厨房に入っていきました。
 確か、おしぼりを湿気で暖めてある機械があったはずです。ボックスを開けると、丸めたおしぼりが詰め込まれていました。
 陽菜都は、おしぼりを一本無造作に取り出すと、ごしごしと顔を拭きました。火照りと汗が止まりません。
「そうだ、雅羅にも」
 とりあえず、変なものを握ってしまった手をきれいにしなければなりません。雅羅にもおしぼりを渡そうともう一本引き抜きかけて。
「あれ?」
 陽菜都が握っているおしぼりが引っかかって抜けないのです。力を込めて押したり引いたりしているうちに、彼女はその正体に感づきました。
「!?」
 陽菜都は、手を放しその場にへたり込んでしまいました。殴り返す気力も削がれたのか、瞳孔が開いたままピクリとも動きません。
「ふぅ……。オレの“おしぼり”が熱っつあつだぜぇ」
 なんとそこには! ボックスの反対側に穴を開けて自分の“あつあつおしぼり”を丸められたおしぼりの隙間に詰め込んで待ち構えていたツリー隊の男がいたのです。
 色々と混乱気味だった陽菜都が気づかなかったのも無理はありません。形と言い色合いと言い大きさと言い素晴らしい迷彩なのです。自分の“あつあつおしぼり”を陽菜都に押したり引いたりしてもらい、いい気持ちになっていたツリー隊の男はフィニッシュの時を迎えていました。
「ホワイト・クリスマスぅ!」
「……」
 描写できない何かの液体が噴出される寸前、城 観月季(じょう・みつき)がすごい勢いですっ飛んできて虚脱状態の陽菜都を回収していきます。危うく、彼女らの顔面に降りかかるところでした。
 これはかつてないほどヤバい状況です。もうダメのレベルを超えています。ここで打ち切りになりそうですよ!
「雅羅の災厄が、陽菜都にまで!?」
 陽菜都を抱きかかえたまま、観月季はゾッとしました。今日はこれまで何も起こらなかった反動が一気に出てきたのでしょうか。
 おまたせしました。
 不幸体質な雅羅の奇跡で、今年最後の不幸な事件へと発展する模様です。
「お願い。ちょっとだけ」
 よほどショックだったのか、陽菜都がしがみついてきます。観月季にも雅羅にも劣らない彼女の胸の感触を楽しんでいる場合ではありません。
「なんたる不届き者でしょうか! しばきあげてあげますっ!」
 弾力を密着させあいながらも、観月季はキッ! と“おしぼり男”に向き直りました。
 雅羅の胸は、すでにルゥが確保していました。よく見ると、抱きしめあいながらめっちゃ擦れあっています。二人とも息遣いが荒くなっています。
 そちらは、任せておきましょう。
 今夜の観月季は、新規パイ拓、もとい新規開拓です。予期しなかった陽菜都とダンスの時間なのでした。このたわわに実った果実は、パイ手にとって、いや相手にとって不足はありません。
「行きなさい! 【世界木の蔓キッコウMen】!」
 観月季は特製アイテムを放ちました。いかにもパチモンくさいところに好感が持てます。こいつは、やってくれそうです!
「……」
 解き放たれ、瞬く間に2mほどの大きさまで成長した【世界木の蔓キッコウMen】は、観月季の命令を忠実に理解し、狙い過たず襲い掛かって行きます。雅羅に!
「きゃーーー!」
 ただでさえ弱っていた雅羅は、なすすべもなく【世界木の蔓キッコウMen】の枝に脚から絡み取られ、逆さ宙吊りにされてしまいました。
「や、やめて!」
 裾を押さえながら何とか振りほどこうとする雅羅ですが、クリスマス・スペシャル! 触手攻めのスタートです!
「ああっ、雅羅!」
 ルゥは、鼻血を出しながらもけしからん植物へ駆け寄ります。攻撃を仕掛けようとするものの、雅羅に当たりそうで躊躇います。決して、艶姿を見ていたいからではありません。
「おやめなさい! あっちですわよ!」
 観月季は、慌てて【世界木の蔓キッコウMen】に命令を出し直しました。
 雅羅を助け出そうと駆け寄りかけて、陽菜都ともみ合い状態になり、躓いて転んでしまいます。重なるように倒れこむ二人。勢いで、メロンが露出してしまいました。
 ですが、それどころではありません。
「……」
【世界木の蔓キッコウMen】は、雅羅をポイと放り捨て、“おしぼり男”へと向かっていきました。ようやく正しく理解したようです。
「!?」
 起き上がりかけた観月季は、上から雅羅が落ちてくるのに目を見張ります。当然、身体を張って受け止めることになりました。
 重なり合う胸の弾力が、雅羅を怪我から守ります。衝撃で、三人は抱き合う格好で弾みながら床を転がります。観月季と雅羅と陽菜都と。なによりのクリスマスプレゼントでした。
「終わったどすえ」
 ルゥのパートナーの此花 知流(このはな・ちるる)が、固まったままの三人を助け起こしました。
 会場内に目をやると、二人のツリー隊の男たちは参加者たちに袋叩きにされているところでした。
 一通り、ボコボコにして寒空の外へと放り出しますと、ポリスメンが素早く連れて行きました。
「 グゴゴゴゴゴゴ!  」
 暗黒オーラを全身に纏った、悪夢のフリー・テロリストまでやってきます。
「……!」
 雅羅たちがよそ見をしている間に、全員が力を合わせて全力で叩き出して起きます。ポリスメンに連れて行ってもらいました。
 これにて一件落着です。
「あれ、何かあったの?」
 騒ぎはガン無視でポーキーゲームに熱中していたセレンフィリティが聞いてきます。
「全く、理解できないわね」
 セレンフィリティとセレアナは、また二人だけの世界へと入っていきます。
「やれやれ、ですわ」
 観月季は苦笑しました。クリスマスにも残念な雅羅が見れて、ほっとした様子です。
「遅くなりましたけど、これプレゼントですわ」
 観月季は、銀の十字架を雅羅に贈ったのでした。
「ありがとう」
「お正月は、一緒に初詣に行きましょう」
「そうね」
 雅羅は、騒ぎの後片付けをしている夢悠に視線を投げかけました。
「……」
 様子を見ていた夢悠は、視線を逸らせてしまいます。どうしてなのよ! と瑠兎子がハリセンで頭を叩いていますが。
「来年もよろしくね。いい年でありますように」  
 クスリと微笑んで、雅羅は答えたのでした。