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パートナーの飯が不味いんだがもう限界かもしれない

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パートナーの飯が不味いんだがもう限界かもしれない

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■目を離した隙に何かが起きる■


「美緒さんや皆が頑張って料理を作ってくれてるから、私もお礼に作ってあげなきゃね」
 出来立ての料理の数々を見て、香奈は張り切った。
「何を作るんだ?」
「ハンバーグ!」
 ハンバーグを作るという香奈は材料を吟味していた。
 香奈の旦那の忍は、きっちり香奈の背後についていた。
 それを嬉しいとか、ほんわか暖かい気持ちになる香奈ではあったが、忍にとってはそう甘い話ではなかった。
(香奈の料理で被害が拡大する前に、俺が何とかしないと)
 とりあえず、材料には問題はないようだ。
 だからと言って安心する事は出来ず、忍は香奈の手元を見ていた。
 挽肉、玉ねぎ、食パン、卵、何だか良く判らない物――、
「――っ! 香奈、それはハンバーグの材料じゃない」
 思わず手が伸びた忍。
「あら?」
 忍に言われて、香奈はその材料を戻す。
 厨房は広いが、あちこちで皆が料理している為に、香奈の手が届く範囲にあったようだが……。
(あれは、なんだろう)
 何かの下拵え中か、料理済みなのか全くもって解らないが、料理が得意な忍が解らないものである。
 不安を煽る何かであるのは間違いないようだ。
 静かに安堵の息を吐き、忍は香奈の手元を見守った。

 後は焼くだけになったハンバーグを見て、忍はもう安心だと気が抜けた。
 そして、トイレに行きたくなったので、香奈にそう告げて――――席を外した。
 明るく忍を見送った香奈は、じーっと焼けていくハンバーグを見る。
 ごくごく普通のハンバーグだ。
 ちょっと首を傾げる。
「インパクトが足りないかな?」
 きょろっと辺りを見渡すと、何やら変わった調味料が見える。
 フライパンの中に入れ、蓋をする。
 凄まじい音を立てているが、料理とはそんなものだ。周りからも爆発に似た音が常時する。
 香奈は自分が作っている料理が危ない橋を渡ろうとしている事に気付かず、作っておいたハンバーグ用のソースにも手を伸ばした。
「こっちも一工夫」

 戻ってきた忍が見たものは。
 七色のソースが掛けられた金色のハンバーグ
「何でこうなった……」
 自失呆然中の忍に、香奈はニコニコと悪意も無い純粋な笑顔を見せる。
「どうぞ、召し上がれ」


 シリウスが倒れたこともあって、少し料理に取り掛かるのに時間が掛かったが、準備は万端で取り掛かるのには時間は掛からなかった。
 自分の料理を手伝って欲しいと言ったリーブラは、美緒に料理の説明をしていた。
「ニシンの酢漬けはシリウス自家製でおいしいんですよ」
 そう嬉しそうに言いながら、ニシンの酢漬けと同量のゆで卵を丁寧に刻んで貰うように美緒にお願いする。
「それと、マヨネーズで和えて混ぜる……日本風ニシンという、元は勘違いから生まれた料理だそうですわ」
 美緒が作り終わったそれをクラッカーに乗せて、リーブラは微笑んだ。
「でも……簡単だけど、美味しいでしょう? こういうのも一つの料理の路線だと思いますよ」
 リーブラが美緒の気を逸らせている間に、美緒の料理は冬山達によって手心が加えられる。
 美緒の料理に負けず劣らずのセレンフィリティの料理は、本人が自信満々なのと、恋人のセレアナがこれもセレンの為、と、このまま会場へと出される事となっていた。
 大惨事は免れそうも無いが、美緒が自分の料理で傷つく事はないだろう。