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パートナーの飯が不味いんだがもう限界かもしれない

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パートナーの飯が不味いんだがもう限界かもしれない

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■食べた事を心に刻み付けたい■


「ミリーネさんが手料理を振舞ってくださるようですし、楽しみはありますわねぇ♪」
 まったりと、ミリーネの料理を待つ椿 ハルカ(つばき・はるか)
 料理の手伝いをしたかったものの、料理が苦手だと自覚していた椿は料理が出てくるのを今か今かと待っていた。
「ハルカ殿! 料理が出来たぞ!」
 駆けてくると言っても良いようなスピードでミリーネが厨房から姿を現した。
「ミリーネさんの手料理は、食べた後の記憶がありませんわぁ。今日こそ忘れないようにしなきゃ!」
 その暖かく、美味しそうな料理に目を輝かせる椿。
「ハルカ、待った!!」
 竜斗の声と。
「ハルカ殿!」
 ミリーネの必死な呼び掛けが聞えたが、椿は意識が遠のいていった。
(あらぁ? わたくし、ミリーネさんの手料理をちゃんと食べれたのかしらぁ?)


「ルシェン」
 厨房から料理を乗せたカートを押して現れたルシェンに手を振る榊。
 ルシェンが料理下手なのを充分知っている榊は、ぶるっと身震いをした。
(頑張って、食べ切って生き残らなきゃ……!)
「アイビス、もし僕が戻ってこれなかった時は、宜しくお願いね」
 見事な笑顔。いかにも心待ちしていました、とばかりの榊の笑顔だが、ソウルヴィジュアライズで榊の感情を感じ取るアイビスには、それが痩せ我慢だというのが解る。
「私は『食事』という機能がないから食べる事は出来ないけど……。朝斗、無理しちゃ駄目だよ?」
 アイビスの言葉に頷き、
「何を作ってくれたの?」
 にこやかな表情で榊はルシェンにそう声をかけていた。
「ビーフシチューよ」
 蛇の血がなかったのは残念、と続いたルシェンの言葉に、冷や汗が落ちていく榊。
 スープ皿に注がれるシチューは、具も大きく色合いもおかしい所は無く、とてもおいしそうだ。
「今度こそ食べられる物ができたと思うの!」
 目を輝かせながら、そっとルシェンは榊の顔を覗き込む。
「うん、とっても美味しいよ」
 ナラカ(地獄)へ一直線するかと思うような味。
 気が遠くなりつつも、肉体の完成、歴戦の生存術を使用し、正気を保つ。
 一瞬でも気を抜いたら倒れそうだ。
 貴賓への対応をフル活用し、ゆっくりと美味しく食べてみせる。
「良かった。みんなにも配って来るわね」
「ルシェンの作った料理は全部、僕が食べたいから置いてってくれるかな」
 他の席へ回ろうとするルシェンを榊は引き止めた。
「でも、多いわよ?」
 ルシェンが差す鍋。軽く50人分ぐらいありそうだ。
「それでも、食べたいから」
 力強く榊はそう言った。
(……なんか他の人たちも心配になってきたなぁ)
 榊は自力でなんとか凌げそうだと、他の人へと気が行くアイビス。
 今はまだ倒れたのが数人で、各々誰かがすでに手当てをしている。
 人数が多く、人が倒れ始めたことに気付いていない人も多く、まだ会場はパニックに陥る事無く和やかだ。
 そして、まだ、美緒の料理は姿を現していなかった。