リアクション
…※…※…※… 「ダーくん。こっちこっち、こっちにお願いー」 「おう」 小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)の手招きに王 大鋸(わん・だーじゅ)は紐で縛って纏められたコンクリートブロックを両手に下げると、指示された場所に運び、置いた。 「美羽、レンガはどうする?」 「レンガも運ぶよ。私も運ぶね」 協力要請の連絡を受け取った美羽は修繕よりも新たに設置したいものがあると主張していた。 『系譜』が小さな孤児院だと知っている美羽は、今回の様に来客が多い場合、食堂やキッチンだけでは手狭になり、下手をすると全員が入れない状況が生まれる。そんな時、外で食事等ができるならとても楽しいのではと考えたのだ。 そして、外で食事と一番に思い浮かべるのはバーベキューだった。 美羽はレンガ造りのバーベキューコンロの設置を言い出したというわけだ。 「どのくらいの大きさがいいかな」 「そうですねぇ」 相談を受けてベアトリーチェ・アイブリンガー(べあとりーちぇ・あいぶりんがー)は思案に首を傾げた。 …※…※…※… 「あの、あそこにあるお皿って今使う?」 ミルディア・ディスティン(みるでぃあ・でぃすてぃん)の第一声に、キッチンの引き出しという引き出しを開けていた弁天屋 菊(べんてんや・きく)は、そちらに顔を向けた。 「使わないよ」 「じゃぁ、持って行っても大丈夫かな? お昼のご飯を配る時に使う食器のことで相談したら、食堂の食器は自由に使ってもいいって許可は貰っているの」 一度に多くの食器を運べるように丈夫な木箱も借りてきたイシュタン・ルンクァークォン(いしゅたん・るんかーこん)がそれを調理台の上に置く。 「キッチンが使えれば楽なんだろうけどさ」 これから自分が弄るんだと言う菊にミルディアは大丈夫だと笑った。 「外でテントを張ってそこで調理……というより、盛り付けだけして終われるようにしてきたから大丈夫よ。気にしないで」 ミルディアは、それにしても、と続ける。 「なんか本で見るおばあちゃんの家のキッチンみたい」 「そうだねぇ」 古い家だから、当たり前といえば当たり前なのだが、特に竈が、そんな雰囲気を醸し出している。 「どこから直していこうかね」 手直しする部分のポイントとして注意しておくべきことはないだろうか。 「まず人数が多いから一度に大量に纏めて食事を作れるようにしたいし、外も中もどの出入口も小さいねぇ。あとは……換気と、火の始末」 料理人の目線から譲れない部分もある。 でも、気になるところを弄り過ぎて、逆に使いづらくさせるのも本末転倒になってしまっていけない。 利便性を追求しつつ、よく考えなくては。 …※…※…※… 「おい、怖がらせないように気をつけろよ」 パラ実生徒会長の名声でもって暇そうなパラ実一般生徒を作業員として引き連れてきた姫宮 和希(ひめみや・かずき)は、作業を手伝うため準備を手伝うシェリー・ディエーチィ(しぇりー・でぃえーちぃ)に気づき、ヤンキー達に注意を飛ばす。 ただ突っ立っているだけでも威圧させるんだから。 和希の一声に、整列することなく群れていた生徒達が「オウッ」と返事を返し、聞いたことのない短くて重い唱和にシェリーは一瞬だけビクッとした。 アーティフィサーのガイウス・バーンハート(がいうす・ばーんはーと)は、これとはまた違うが施設工事をしたことがある過去の経験を活かし、子供達が喜ぶような綺麗で楽しい外観になるように、先の学習室のミーティングで設計・リフォームの提案をしていた。 出来上がった設計図に更に手を加えたり逆に削ったりする部分が無いかチェックを入れて、忘れない内にと皆を呼び寄せた。 言葉短めに今回の注意事項を伝え、全員にヘルメットを手渡す。 「安全第一だ」 シェリーやニカにも渡して、特に足元には気をつけるようにとガイウスは念を押すことを忘れない。 |
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