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リアクション
「ちょ、ちょっと、兄さんっ!
大学爆破しようっていう人? たちに、なに協力してるんですかっ!
しかも何コレキモッ!!」
土埃が起こる程の勢いで走ってきた高天原 咲耶(たかまがはら・さくや)は、巨大な列車砲に触手がうねうねと蠢く酷フォルムに両のこめかみに指を当てて頭を落ち着かせようと必死だ。でもあの酷フォルム列車砲は完成してしまっているし今更どうしようもない。取り敢えず今の彼女に出来るのは、これ以上状況を悪化させない事だけである。
「とにかく、他の人に迷惑がかかる前にあの列車砲? をなんとかしないと!
アルテミスちゃん、前衛をお願いっ!」
「分かりました、咲耶お姉ちゃんっ!
あの巨大な列車砲の注意を引き付ければいいんですね!」
駆けつけたばかりのアルテミス・カリスト(あるてみす・かりすと)は魔剣ディルヴィングを正眼に構え、酷フォルム列車砲に向かって走り出した。
「やああああああッ!!」
気合いの声を上げながら酷フォルム列車砲の意識をこちらへ向けさせたアルテミスは、スキルで防御力を高めながら馬鹿正直な程真っ直ぐに突撃して行った。
「この防御に普通の攻撃は通用しませんよっ!」
その頃酷フォルム列車砲の後方では、咲耶が手の中に稲妻を走らせる。
「機械なら電気に弱い筈です!」
彼女が両手を前に突き出すと、それに導かれる様に雲間から酷フォルム列車砲を目掛け落雷が起こった。
「どうですか!?」
「らめ〜!」
トリグラフのどの山羊かは分からない、一匹の声が酷フォルム列車砲から響くと、突如触手がびたーんびたーんと地面を打ち始めた。
咲耶の攻撃が指揮系統になっている?トリグラフを攻撃してしまったのか、はたまたハデスお馴染みのAIの暴走か。
出鱈目にのたうつ触手はやがて咲耶の姿を捉える。
「きゃああっ、触手がこっちにッ!?」
地面を擦りながら猛スピードでやってきた触手が咲耶を捉え、足から巻き付いてゆく。何度喰らってもこの感覚には慣れそうに無い。咲耶が身体をくねらせていると、向こう側でアルテミスが同じように触手に拘束されているのが、見えてしまった。
そりゃだって防御力を幾らあげたところで、防御力は防御力な訳で。
魔力を込めて作られた衣も、上から抑え付けられればただの服になってしまう。下からバストを押し上げるような動きをする触手、上から押し下げるような触手。
二本の動きによってアルテミスの柔らかな胸がくにゅくにゅと卑猥に歪む。
「さ、咲耶お姉ちゃん……見……ないで……ぇ」
「そうは言われても……ゃんッ!」
アルテミスの方に集中していた咲耶の神経が、付け根まで這い上がってきた触手が肌の上をするすると移動するのにそれこそ雷に打たれたように衝撃を受ける。
「残念だけど?お楽しみはここまでよ!!」
「ミリツァさん!」
空京大学に到着し反響でK.O.H.を探す際に、友人のピンチに気付き駆けつけたミリツァ、そして壮太やコハク、美羽――幾らオリュンポス入会推薦状を持っているからってそれとこれとは別だ――らの活躍によって、咲耶とアルテミスは乙女のピンチから間一髪助け出された。
さて、ハデスの方はと言えば、妹とパートナーを巻き込んだ事もさして気にせず、マイペースに酷フォルム列車砲の動きを分析し、一人頷いている。対アレク戦を考慮して考えたフォルムは、キモいし酷い訳だが、彼の中でだけは満足いくものに仕上がっていたらしい。
「完璧だ」
[たーげっと確認シマシタ]
「ククク、アレクよ、来られるものなら来てみるがいい」
[ロック]
「遺跡での借り、返してくれるわ!」
「めーっ!」
トリグラフが男は爆発しろというキアラの望みを遂行したのか、ハデスに改造された恨みを晴らしたのか。
恐らく両方とお約束が重なって、ハデスは世にも珍しい合体ギフトの攻撃を喰らった、パラミタでも初めての人物となった。
偉業……とは言い難い何かで歴史が塗り替えられた後、限界を越えた酷フォルム列車砲はバラバラと砕け散った。
「め〜……」
ヘロッヘロになったトリグラフが地面に伏して居ると、懐かしいパートナー匂いが辺りを漂った。多分一、二時間ぶりくらいに。
「全く君たちは…………」
呆れながらも何処か甘い声でそう吐いて、ハインリヒは一頭ずつ大切に抱き上げて、腰のポーチに入れる。
「僕のパートナーたちが、ご迷惑おかけしました」
「全くよ」
ミリツァの抗議を受けている間に、リカインの頭の上で、髪の毛が一房持ち上がる。シーサイド ムーン(しーさいど・むーん)だ。
以前アレクとギフトの存在について話した時に、トリグラフが行った合体と今の勇士。
シーサイド・ムーンはすっかり、この戦の神の名を冠した五頭の山羊のファンになってしまったのである。
そしてこのまま超兵器になるのであれば、ぜひともかの有名な宇宙的大兵器を目指して欲しいと彼等に告げる。
しかしシーサイド・ムーンは元々無口?であるし、トリグラフはめーしか言わないため、この場にいる誰もがテレパシーで行われたその会話に気付いていない。
ただ一人。
めーを理解する人物を覗いては。
「エンジン出力を利用したエネルギーの放射……。それってつまりDEW(指向性エネルギー兵器)だよね。
それは君達には難しいよ。でも……そうだな、電磁波とかは無理でも機晶エネルギーの放射は可能領域。
剣の花嫁や機晶姫それを利用した攻撃方法も編み出しているからやってやれない事は無い。ジゼルの音波エネルギー放射だってあんな出鱈目な事が出来るんだから、要は質量をどの位まで上げる事が出来るかで――……
よし、やるか!」
ご主人様がまた良からぬ考えに頭を染めるのに、五頭の山羊は元気よく手を上げ「めー」と鳴いた。
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