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特別なレシピで作製された魔法薬

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特別なレシピで作製された魔法薬

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 打ち合わせ後。
「命に関わるとか探求心が旺盛過ぎるのも困った物だね」
 エースは黒亜の所業に対してぼやいていた。
 そんな時
「エース、確認した所、三名で予約を入れていてまだ来ていないみたいです。時間は近いので付近にいるかもしれません」
 知っている者がいないか確認しに行っていたエオリアが戻って来た。
「三名かい?」
 聞き返すエースに
「えぇ、あのお二人とお花見の際に清奈さんが友人だと教えてくれたネネコ河童の女々さんですよ。彼女はお酒を卸すために早く着く予定でしたがまだみたいで」
 エオリアは橋姫の清奈と知り会った時を思い出させた。残りの一人は川姫の藍華である。
「お酒を楽しんでいた彼女か。とにかく急ごう。もしかしたら被害に遭っているかもしれない。しかし途中で会わなかったという事は別の道だと考えるべきだよね」
 エースは女々の事やここに来るまでに見掛けなかった事を思い出した。
「そうですね。宿に続く別の道を捜索してみましょう」
 エオリアの言葉を合図に二人は宿に続く別の道で捜索を開始した。
 エースは『人の心、草の心』で植物に聞き込みをしてその横ではエオリアが『サイコメトリ』で道傍らの石等から情報収集をしながら急いでいた。訊ねる事は黒亜や清奈達の居場所や痕跡だった。エースは籠手型HC弐式・Nで得た情報を拡散した。

 その結果、
「会えてよかった。それに無事で」
 エース達は無事に出会う事が出来、挨拶と二人に花を渡した。
「ありがとう。私もまた会えて嬉しいわ」
 清奈はエース達の顔を見た途端晴れやかな表情になり差し出された花を嬉しそうに受け取った。
「以前はとてもお世話になりましたわ。あれからしばらく清奈さんも大人しくて耳休めが出来ましたわ」
 同じく花を受け取った藍華は隣の友人を横目で見ながら余計な事を口にする。
「藍華、余計な事を言わないでちょうだいな。本当にあなたは……」
 清奈は不機嫌そうに顔を背けた。以前エース達に誘いを受け宿で楽しんだ後しばらくは嫉妬に満ちた恨み事を口走らなかったのだ。よほどエース達と過ごした時間が楽しかったらしい。
「仕方無いですわ。わたくし川姫ですもの。それより何が起きているんですの? 空気が妙に騒々しいですが」
 藍華は悪意は無いとばかりに友人に笑いかけた後、真剣な表情をエオリアに向けた。
「まずはこの解除薬を飲んで下さい。事情はここより安全な場所で話しますのでもうしばらくだけ我慢して下さい」
 エオリアはまずはと一時しのぎの通常解除薬を二人に差し出した。話よりも命が大事なので。
「えぇ」
「大変な事が起きているみたいですわね」
 清奈と藍華はエオリアの様子からただ事では無いと読み取り言う通りにした。
 エース達が連れて来た幼き神獣の子に清奈達を乗せて宿へ送り届けた。

 温泉宿『のっぺらりんの宿』の前。

「……ここは宿ですわね。早速、事情をお願いしてもいいでしょうか」
 藍華は宿に到着早々、事情を問いただした。
「実は……」
 エオリアは事情を説明し、清奈達を捜していた事や女々がまだ来ていない事も付け足した。
「そう、まだ来ていないとなるとどこかで油を売っているわね」
 清奈はエオリアの話を聞いた途端、予定通りでない友人の身を案じ始めた。
「心配は無用さ。俺達が必ず見付けるから。それで心当たりはないかな?」
 エースは友人を心配する二人を励まし、捜索のために情報収集。
「心当たりと言えば、彼女がよく通る道は……」
 清奈はゆっくりと心当たりを思い出し話した。
 そして、
「では、その場所を捜索してみますね。お二人は宿の方で休んでいて下さい」
「必ず連れて来るから」
 エオリアとエースは女々の捜索に取り掛かった。

 清奈に聞いた心当たりの道を進んでしばらく。
「エース、あそこにいるのは……」
 エオリアは酒瓶を抱えてのんびりと歩く植物まみれの見覚えのある女河童を発見した。
「河童の女性に酒瓶。と言う事は間違いなさそうだね。しかし……」
「素材化が結構進んでいますね。急ぎましょう」
 エースとエオリアは急いだ。
 女々の所に駆けつけ
「大丈夫かい」
 エースが一番に声をかけた。
「ん? あぁ、大丈夫だけど、あんたは?」
 女河童は初めて見る顔に訝しんだ。エース達が彼女を知っていると言えど清奈に教えられた事と遠目から姿を見ただけで直接の接触はこれが初めて。
「清奈さん達に頼まれてあなたを捜しに来ました。まずはこの解除薬を飲んで下さい」
 エオリアは自分達を信用して貰うため清奈の名前を出すと同時に通常解除薬を差し出した。
「……分かった」
 じっとエース達の顔をなぜか品定めでもするかのように見た後、通常解除薬を受け取り口に放り込んだ。
「それで清奈達は?」
「彼女達は俺達が無事に宿に届けたから心配無いよ」
 友人達を心配する女々にエースは無事である事を伝えた。
「そっか。それなら良かった。それよりあんた達は清奈が言っていた素敵な殿方達だろ?」
 女々は悪戯っ子のようにエース達に訊ねた。先程の品定めの視線はこれが理由だったり。
「……おそらくそうだと思います」
「光栄だな。それにこうして女々さんとも知り合えてますます嬉しいよ」
 エオリアとエースはそれぞれ嬉しそうな反応を示した。エースは遅くなった挨拶の花を渡した。
「ありがとう。それで清奈達の無事は分かったけど、これは何なんだ?」
 女々はおもむろに自分に生えたどす黒い素材を抜き取って見せながら訊ねた。
「……」
 エース達はまさかの出来事に言葉が出なかった。
「ん? 抜いたらまずいのか? さっき不気味な色をした奴を二つ三つ抜いたけど体は大丈夫だったけど」
 エース達の様子から女々はまずい事をしたと悟るも意に介する気配がない。
「記憶が素材化した物で抜いてしまうとその記憶を失ってしまうんですが」
 エオリアは女々の手にある素材に視線を注ぎながら説明をした。
 聞いて恐れるかと思いきや
「それはまたとんでもないねぇ。まぁ、二つ三つ記憶を失ったぐらいどうって事ないさ。ほら、あたい妖怪だろ。記憶なんか腐るほど持ってるし」
 女々は豪快に笑い飛ばして手に持っていた素材を捨ててしまった。
「……胸の花には気を付けて下さいね。命を素材化した物ですから(……豪快な方ですね)」
 エオリアは念入りに胸に咲く素材について警告し、胸中で女々の気性に苦笑していた。
「それより、宿に行きたいんだけど」
 女々は酒瓶を抱え直しながら話を元に戻すと
「手伝うよ。二人が先に到着しているはずなのにと言っていたけど」
 エースが手伝いを申し出た。ついでに予定と違う理由も訊ねた。
「あぁ、それはちょっとこれを休み無しで作ったせいで宿に向かっている途中で眠気が来て一眠りしたからさ。起きたら体に妙な植物が生えていて驚いたよ」
 女々は肩をすくめながらクックッと笑いながら答えた。その理由もまた少々間抜けな話である。
「そういう事でしたか」
「とりあえず胸の花が無事で何よりだよ」
 エオリアとエースは理由はともかく女々が無事であった事にほっとした。
 エース達は幼き神獣の子に女々を乗せて宿まで運び、清奈達と再会させた。
 その後、
清奈達から他の妖怪の居場所を聞き出し、エオリアの銃型HC弐式・Nに入力し、捜索に当たり無事に皆救い出し、完璧な解除薬完成後は配布に回り、救助に尽力した。