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ゾンビの館! 救出を求む調査隊

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ゾンビの館! 救出を求む調査隊

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 第 4 章

 洋館に突入する前にルカルカと夏侯 淵(かこう・えん)はまず外側から調査団と研究者の居場所を特定しようと、『銃型HC弐式』で熱感知を確認していた。
「1階には殆ど熱感知はないな……動いているのは多分、先に突入した救助隊かゾンビの殲滅に動いている人たちだと思うのだ」
「そうね、やっぱり地下か……洋館の最上階か、どちらかかしらね」
 ルカルカは熱感知の結果を見ながら考え、淵に向かって決断した。
「――とにかく、洋館へ入りましょう。救助隊やゾンビ殲滅以外の人を見つけたら捕まえて皆の居場所と黒幕を聞き出して全員お縄にするわよ!」
 先に入っていったセレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)セレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)を追うように2人も洋館の中へと突入した。

 『籠手型HC弐式・P』を手に、研究者の居場所を絞り込もうとしているセレンフィリティだが、中々その熱源分布に絞り込めずにいた。1階を歩くとほぼゾンビの類は殲滅された事が容易に解る程の灰塵が通路の至る所で見掛けられる。
「ゾンビの邪魔が入らない内に研究者達を捕まえたいところなのに……どこなのよ、もう!」
「落ち着いてセレン。1階には殆ど反応がないわ……あ、待って!」
 セレアナが急に腕を引いて通路の影に身を隠した。一瞬の事にセレンフィリティも反応が遅れたものの、セレアナの後ろから歩いていた通路の先を見据える。
「ふぅん……どうやら、彼に聞けば解りそうね」
「おあつらえ向きにこっちへ来るようよ……逃がさないでね、セレン」
 足音が段々と近付き、数メートルという所でセレアナが研究者の眼前に【光術】を放つと急な明かりに驚いて目を伏せた隙にセレンフィリティが『絶望の旋律』を研究者の額に向けて正確に狙いを定めていた。目くらましに尻餅を付いていた研究者に漸く視力が戻り始めると目に飛び込んだ光景に顔を一気に上気させる。
「な……っ、なんだあんた達! いや、でも……イイ」
「なに鼻の下伸ばして見てるのよ?」
 ツゥーっと鼻血が流れるのも構わず、下から見上げるセレンフィリティの水着姿が研究者を刺激し続けたがセレアナはそれに構わず質問を開始した。
「さて、あなたの上司に当たる黒幕の研究者の所へ案内していただきましょうか。ついでにあなたもシャンバラ教導団へご招待するわ」
 セレンフィリティの水着姿に未だ目を離せずにいる研究者を立たせると同時にルカルカと淵が合流する。
「あ、良い所に。セレンが色仕掛けで1人捕まえたわ、これから黒幕の所へ案内してもらうところだから一緒に行きましょう」
「い、色仕掛け?」
「セレアナ、あたし真面目に犯人逮捕のお仕事してるんだけど……?」
 ルカルカと淵が未だ顔の上気が引かない研究者とセレンフィリティを交互に見つめると何とも言えない顔を見せ、セレアナはセレンフィリティを宥めながら研究者を引っ立てて案内させるべく歩き出した。


 ◇   ◇   ◇


 洋館の裏側に回った源 鉄心(みなもと・てっしん)は正面以外の逃走経路を確認しながら洋館内部へと侵入を決め、更に外観を調べる為、予めイコナ・ユア・クックブック(いこな・ゆあくっくぶっく)が【空飛ぶ魔法↑↑】で2階と3階をぐるりと見たところ、2階の東側にカルやゆかりが捕えられている部屋を見つける事に成功した。窓が開かない為、直接言葉を交わす事は出来なかったものの、調査団に登録していた契約者は全員無事だと洋館の外から内部にいる教導団員に情報が齎された。
「でも、変ですわ……イーシャンさんとシルヴァニーさんの居る部屋がわかりませんの……! たまたま、窓のない部屋だったのかもしれませんけれど……」
 鉄心の元へ戻ったイコナへ『ベルフラマント』を掛けながら、ティー・ティー(てぃー・てぃー)が鉄心に訊ねる。
「イーシャンさんか、シルヴァニーさんとテレパシー出来ないでしょうか……鉄心」
「そうだな……やってみよう。確か青の書、シルヴァニーが知識を解放する魔道書だったな。彼の方が精神感応は高いか……」
 ティーの提案もあり、鉄心はシルヴァニーへテレパシーで呼びかけてみた。

 同じ頃、イーシャンとシルヴァニーはドアに凭れ掛かり、疲れ切った顔をしていた。
「なんっだよ、このドア……」
「普通の鍵じゃない事は確かなようだね……【ピッキング】を使っても開けられるかどうか……」
 2人揃って深い溜息を吐くと、途端にシルヴァニーが何かを探すようにキョロキョロと室内を見渡した。その様子にイーシャンが不思議そうに見ていたものの、鉄心からのテレパシーをかろうじて受け取ったシルヴァニーは現状を彼に伝える。
(あまり長くは話せねえと思う、手短に言うが最上階へは足を踏み入れるな。落とし穴から俺達みたいに軟禁状態にされる、研究者については詳細を知る前にこうなっちまったから大して情報は出せねえが護衛なり用心棒なり付けていると考えていい。……悪いな、鉄心。手間を掛けさせて)

 途切れたテレパシーに、軽く息を吐いた鉄心はティーとイコナへ向き直る。
「彼らが捕えられた罠は、最上階にあるようだ。中に居る救助隊やルカルカ達にも伝えないといけないな。俺達は研究者の逃走ルートを抑えよう、絶対に逃がさない」
 頷くティーとイコナを連れ、鉄心は裏口から侵入するとなるべく無駄な戦いを避けながら研究者捕縛へと向かっていった。