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「……未来体験薬ですか。そう言えば以前……」
 フレンディス・ティラ(ふれんでぃす・てぃら)は渡されたレターセットを手に以前未来体験薬の被験者として参加した事を思い出し、恥ずかしそうにした。
「……未来の自分宛か(ま、俺はフレイが視た未来になるように努力するしかねぇ訳だが……)」
 ベルク・ウェルナート(べるく・うぇるなーと)は見覚えのあるフレンディスの様子に軽く溜息を吐きながらも今一番気になるのは
「席はどうする(ロズもいるな。という事は手紙を書いたかもしれねぇな。双子相手に頑張っているみたいだが、あれから双子の自由奔放さに影響されて少しは前向きになってりゃいいんだが……心配だから後で様子見に行くか)」
 向こうで歩き回る双子の後ろを歩くロズの事。
「ベルクさん、席ならあそこが空いてるよ(……自分の未来か)」
 レターセットを手に持つジブリール・ティラ(じぶりーる・てぃら)は空席のある席を発見しつつ胸中で手紙の事を考えていた。

「……未来の自分への手紙ですか(あそこにご主人様が……会わないようにするのですよ)」
 手紙書きの情報を得た忍野 ポチの助(おしの・ぽちのすけ)はこっそり登場。現在家出中のためフレンディスだけには会いたくないのか駆け寄る事はしない。

「……あそこ……グラキエスさん達がいますよ!」
 フレンディスはジブリールが示した席に見知った先客達を発見し、駆け寄った。
「あいつらも来ていたのか」
 ベルクもフレンディスに続き、ジブリールも行った。

 グラキエス達が和むテーブル。

「グラキエスさん達も来ていたのですね」
「手紙を書きに来たのか?」
 フレンディスとベルクが親しげに声をかけた。
「いや、変わっている事をしていると聞いて見学に来た……席を探しているならここに座ったらいい」
 グラキエスは親しくしているフレンディス達に会った事を喜び、席を勧めた。
「はい。ありがとうございます」
 礼を言ってフレンディスは席に着いた。続いてベルク達も適当に座った。

「グラキエスさん達も来ていたのですか」
 ポチの助はグラキエス達が来ている事を発見するなりフレンディス達とのやり取りを警戒のため目を離さずに見守っていた。

「……(何を書きましょうか。きっと未来も私忍者さんをやってると思うのですが……明日死んでもおかしくない身故に以前見た初夢や未来は……でも願うだけなら構いませんよね)」
 フレンディスは便箋としばらくにらめっこをした結果書く内容を決めた。こちらの生活で平和で脳天気思考になってきているのは、忍者稼業の影響のためか以前経験した初夢や未来体験薬は自らの理想や想像でしかないと考えている。
「大丈夫か?」
「はい、お気遣いありがとうございます。書く内容が決まりました(あの未来の自分に向けて……)」
 悩む自分を気遣うグラキエスに礼を言うなり10年後の自分に宛てて手紙を書き始めた。
「……(あれから色々ありました。ジブリールさんが家族となって……家出中のポチとも一緒で……あの光景が現実の未来になりますように)」
 フレンディスは未来体験薬が現実になる事を願いながら綴った。

 フレンディス達が手紙を書いている間。
「手紙は書かないのか?」
「俺は書かねぇよ。フレイが視た未来に向かって努力するだけだ(いつ報われるかは分からねぇけど)」
 訊ねるグラキエスにベルクは即答しつつ胸中では苦労人の溜息を吐いていた。
「我らと同じか」
 ゴルガイスがうなずいた。
「そういう事だな。より良い未来のために頑張るしかねぇよな。お互いに」
 グラキエス達の事情を知るベルクはニッと笑みを浮かべた。
「あぁ」
 ゴルガイスは深々とうなずいた。
 その間にもフレンディスとジブリールは手紙を書き続け、先にフレンディスが先に書き上げた。その時、ベルクは付近にいたロズに疑問符を浮かべる知り合いに事情を教えていた。
「どんな事を書いたんだ?」
 グラキエスが興味で内容を訊ねると
「それは言えませぬ」
 恥ずかしいフレンディスは赤面し見られないように急いで便箋を封筒の中に入れた。
「そうか、お茶でも飲んで一息入れたらどうだ?(きっと幸せな内容なんだろう)」
 グラキエスは深くは追求せず飲み物を勧めた。フレンディスの様子から大方の内容は予想出来ていたり。
「そうします」
 フレンディスは飲み物でまったり和んだ。
「……前の時と同じだな」
 事情説明から戻って来たベルクは以前参加した未来体験薬の時の羞恥心で報告出来なかったフレンディスの事を思い出していた。
 しばらくして
「……ロズの様子でも見て来る」
 双子達が強制連行を受けた所を確認するなりベルクは席を外した。

 一方、ジブリール。
「将来を考えた事なかったけど面白そうだし書いてみようかな? ついでに未来体験薬も楽しんでみようか」
 ジブリールはゆっくりと10年後の自分を想像しながら便箋に染み込んだ匂いを楽しみながら書き始めた。

■■■

 10年後、夕方、葦原の賑やかな通り。

「みんな、心配しているから早く帰ろう。その手に持っている花も早く渡さないと萎れる」
 大きくなったジブリールが猫を撫でている少年に動いて貰おうと声をかけている。成長してもあの性別が曖昧な姿は相変わらずだが顔立ちは一層端正になっていた。
「もう少しだけ。ほら、お兄ちゃん。可愛いよ」
 母親にプレゼントする花を力強く握り締めたまま猫から動かない元気そうな茶髪の少年。性別が曖昧なジブリールを兄と慕っている模様。
「そうだね(連絡しておこうか)」
 フレンディスに似て脳天気で好奇心旺盛な性格の少年の保護者として付き添うジブリールは帰宅が遅くなる旨を家に連絡した。
 それから随分経ってから二人は無事に帰宅した。

 帰宅後。
「ただいま、お母さん、お土産!」
「遅くなった」
 少年とジブリールが無事に帰宅。
「まぁ、綺麗な花ですね。ありがとうございます。二人共、夕御飯の用意が出来ていますので手を洗って来て下さい」
 フレンディスはにこにこと息子が差し出すお土産を貰った。
「はーい」
 少年は元気に手を洗いに行った。
「もうお兄ちゃんはいつも遅いんだから。お姉ちゃんを困らせて」
 黒髪ロングのクールで冷めた感じの妹が兄の呑気さに呆れていた。手にあるのは父親に買って貰った魔法関連の書物。
「お姉ちゃん、明日、一緒に本を見に行こう」
「いいよ」
 書物から顔を上げ、少女はジブリールとお買い物の約束をした。少女には姉と慕われている。
「すまねぇな、毎日こいつらの面倒を見させて」
 ベルクは娘の頭を撫でながら子供達の世話を文句も言わず手伝ってくれるジブリールに感謝した。
「いいよ。弟と妹が出来てオレも嬉しいんだ」
 そう嬉しそうに言ってからジブリールは手を洗いに行った。

■■■

 想像から帰還後。
「……(あれが以前フレンディスさんが視た未来の子供かな? そこにオレがいる世界……叶ったら最高に幸せだよね)」
 ジブリールはフレンディスから以前聞いた未来の話を思い出し、口元に笑みを浮かべながら手紙を書き終えた。
 それから
「ベルクさんがいないけど」
 ジブリールはいつの間にかベルクがいない事に気付いた。
「マスターはロズさんとお話をしています」
 フレンディスがすかさず、ベルク達がいる別テーブルを示した。
「それなら……せっかく噂の双子が居るし、オレもお近付きになっておこうかな」
 ジブリールはロズを確認した後、双子達がいるテーブルに行った。

 そんなジブリールの手紙の内容は
『10年後のオレへ
今のオレは十分幸せだけど
それでも沢山問題にぶつかると思う
でもだからこそかな?
未来のオレは今のオレよりずっと幸せそうに視えた
手紙を受け取ったら今日視た未来通りか教えてくれよ?』
 という物であった。

「……早く書いてここを離れるのですよ」
 ポチの助は急いで手紙を書き始めた。
「……とりあえず10年後の僕に宛てるのですよ」
 ポチの助は手早く書きながら時々フレンディス達の様子を確認し警戒していた。
「……未来(前に参加した時に視た一緒に会話していた子はきっとフードを外したあの子なのです)」
 ポチの助は以前未来体験薬の被験者として見た誰なのか確認出来ない女の子と獣人化した自分が楽しくお喋りしている未来を思い出し、女の子はもしかしたら今とても気に掛けているあの子ではないかと思っていた。
 ふと
「……願いを書くために来た訳ではないのです。決意表明のためなのです」
 ポチの助は自分を奮い立たせた。ここに来たのは、今考えている夢や目的が実現出来るようにポチの助なりの覚悟を示すために来たのだ。
「……だから未来の僕は」
 ポチの助は気に掛けるあの子の暴走という悩みを解決してあげているのではと。
「……(そうすれば、きっと喜ぶはずなのです)」
 ポチの助は問題を解決した先にあるあの子の心底の可愛い笑顔を思い浮かべて少し照れる。
「……ご主人様がこちらを見たような」
 警戒をしている故か顔が自分の方向に向くだけでばれているのではと焦るポチの助。気付かれていないのにそう思えてしまう。
 そのため
「……もうここを離れるですよ」
 ポチの助は急いで書き上げて脱兎の如く撤収した。照れと急ぎの中書いたため内容は中途半端であったが、ポチの助の優しい気持ちに溢れていた。
 その内容は
『未来の僕に送ってやるのです
超優秀なハイテク忍犬の僕なので心配してませんが
さぞかし超一流の専属機晶技師になっている事でしょう!
きっとあの子の悩みも解決させ毎日笑顔を……』
 と中途半端な物であった。