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リアクション
イルミンスール魔法学校、 廊下。
「まずはロズに会ってから旅団の誰かを捜そう」
「そうだな。あれからどうしたのか気掛かりだしな」
ルカルカ達は双子の元には行かず、ロズの方に行く事に。双子と親しくしているが悪戯を持ち掛けるのは危険臭を感じたルカルカが首を立てに振らなかったら。ダリルは自身の種族柄のためか人間より人工存在に親和性を感じる為かなり気に掛けていた。
ロズを捜し回ってすぐ後
「ロズ!」
ルカルカは前方を歩く目的の青年を発見し呼び止め
「……随分、見た目が変わったな」
ダリルは振り返ったロズに対し開口一番に姿明らかの服装を口にした。
「正体がばれているから野暮ったい格好はやめろとしつこく言われて、抵抗はしたんだが、虚しく強引に……」
強引にという割にはロズにはそれほど嫌がっている様子は無くそれなりにやっている事が言葉に滲み出ていた。
その時、
「正体がばれてとは二人に打ち明けたんだな」
陽一が登場。
「あぁ。あのイベントが終わってから……手紙を見せて打ち明けた……共に歩むために」
ロズは手紙書き後の双子とのやり取りを思い出しながら静かに答えた。
「それであの二人は受け入れてくれたんだな?」
ダリルは親しげに訊ねた。ロズの姿から受け入れられた事は明白だが、その経緯が知りたいのだ。
「自分に宛てた手紙なのにもう少し自分の事を書けと言われて……気に掛けられて」
双子に掛けられた言葉を鮮やかに思い出し、ロズはわずかに口元をゆるめた。
「それで二人なら大丈夫と思って話したんだな。随分、驚いていたんじゃないのか?」
ダリルはロズの素性を知るため双子が仰天したのではと想像していた。
「……かなり……特にキスミは」
と、ロズは答えた。
「だろうな。それであの二人とは?」
陽一は笑いを含みみつつ訊ねた。何せキスミは自分が故人になっている上にロズは自分をモデルにしたものなので驚かない方がおかしい。
「二人いれば万が一に何が起きても問題無いと何とかしてくれている」
ロズはこれまでと変わらぬ日々の中に自分のためにと時間を割いてくれている事を話した。
「それは良かった(ロズも心無しか少し元気になったみたいだし、双子もロズの為に頑張っているみたいだな。まぁ、あの二人、迷惑はばら撒くが心根は悪くないからな)」
陽一は唯々三人がうまくいっている事に心底喜んでいた。
「ねぇ、立ち話もあれだから座ってゆっくり話そうよ」
話に区切りが付いたところに割って入ったルカルカの提案で一旦お喋りを中止して大図書室に場所を移した。
大図書室。
ルカルカ達は全手記の閲覧を依頼するとルカルカ達は大図書室の精通者として世界樹の紋章を有する事とエリザベート達から予め許可を貰っている事からあっさりと許可を貰った。
ルカルカは司書から手記を受け取り、ロズと交流する二人と共に席に着いた。
「……改めて見ると色んな所を旅しているみたいだし……時々、今回の事に関係がありそうな事が書かれてる。そう言えば遠くて近い場所っていうのもあったね」
ルカルカはペラペラと手記に記された旅模様を読みながらあれこれと思考する。
「やっぱり、旅団を捜しに行ってみようかな。彼らと関わりのある魔法中毒者もここにいるし。来ている可能性はあるけど……まずは今回の切っ掛けになった黒表紙を調べてみよう」
ルカルカはそう言うなり黒表紙の手記に手を触れ『サイコメトリ』を始めた。
そしてすぐに読み取り終えそっと手を離し
「……(主は若い青年調薬師でこの世界と似ていたけど平行世界の風景で……何か事件が起きた後かな、怯えと安堵混じりに手記にペンを走らせていた……彼の周囲に仲間らしき姿があったからこの持ち主は元からあちらの住人という事で……とりあえず報告は後にしようっと)」
ルカルカは読み取った記憶をゆっくりと頭の中で整理しつつロズ達の様子を見て報告は後回しにして手記を閉じて息抜きにキツツキを構い始めるのだった。
その間。
「やはり二人によく似ているな」
ダリルはロズの姿について話題にした。
「時々、事情を知らない者にあの二人の兄だと言われる事がある……嫌ではないが少々複雑になる」
ロズは息を吐きながら複雑な心境を吐露した。
「それは仕方無いな。この世界の双子はお前の世界とは違って子供だから、そう見えるんだろう。複雑なのはお前にとっては平行世界とはいえヒスミは製作者で親のようなものでキスミは生まれる切っ掛けをくれたものだからか?」
ダリルはロズの気持ちをすっかり見透かし、彼の心境を言葉にした。
「……その通りだ」
ロズはまた複雑そうな顔をしていた。
「平行世界の双子はこっちと同じ性格なのか?」
陽一がふと思いつき訊ねた。
「語ってくれた思い出話から同じ性格だと思う」
ロズは水槽でまどろみながら聞いた老いた製作者の思い出話を振り返り人柄を推測して答えた。
「それなら万一の時の為にお前の身体の内部に何か秘密があったりしてな」
ダリルは少々苦笑い。
「……その可能性はあるかもしれない。自分の世界を出たのは緊急の事で彼に聞く時間も調べる時間もなかった上にこちらの二人の協力も今始まったばかりで何も」
ロズもここに来て双子と生活し彼らの性格を知ったためダリルの言葉を否定出来ない。
「例えあったとしても悪意のある物ではないはずだよ。二人は悪い子ではないからね。ところで君も今回の事に力を貸しているというが……」
陽一もまた苦い笑いを浮かべながら言うなり話を本題に移した。
「……黒表紙の手記があった平行世界に行き、様々な平行世界間を放浪し遭遇した世界を浸食し存在を消す特殊な平行世界について発生時期や場所の調査を頼まれた。手記にそれらしい事が書かれていたらしく」
ロズが任された任務内容を明らかにした。
「大丈夫なのか?」
ロズの出自を知るダリルは気遣った。
「……ありがとう。自分の世界に及んで……彼を生み出す事になってこの世界の皆に迷惑を掛けてしまって……」
ロズは重苦しい空気を纏わせもう一人の自分、正体不明の魔術師の所業を思い起こしていた。
「無事に騒ぎは解決したんだからそこまで思い悩む事はない。ほら、前に俺達が言っただろう」
「ありがとう」
陽一の励ましにロズは気を取り直し礼を言った。
「ちょっといいかな」
隙を見てルカルカが読み取った記憶を皆に話した。
「向こうの世界でもこの世界の未来に起きるだろう事が発生し解決したという事か」
ルカルカの情報を分析しダリルは簡潔に結果を口にした。
その時、
「それで特殊な平行世界発生の日が特定された後はどうするんだ?」
ダリルが肝心の質問をすると
「目的地にたくさんの思い出をあげるんだよ!!」
横から可愛らしい少年の声が答えた。
「??」
三人が声に気付き振り向いた先にいたのは
「ラールだよ!! 遊びに来たんだぁ。ムヒカお兄ちゃん、用事があるからって一人で」
ハーフフェアリーの5歳ぐらい少年。
「……子供だけど、旅団のメンバー?」
ルカルカはラールの手に見覚えのある赤表紙の手記がある事から正体を見破った。
「そうだよ、お姉ちゃん!!」
ラールは人懐こい笑顔をルカルカに向けた。丁度自分達を調査する三人組と別れた後だ。
「そうか、旅団の者か。それでその目的地とは遠くて近い場所なのだろう。そこはもしかして特殊な平行世界の事か。世界と言う位だから巨大な物と考えて間違い無いか?」
『博識』なダリルは子供らしいラールの言葉から何を言っているのかを上手く察する事が出来た。
「そうだよ。ラールの身体にいるあの人が言ってた。世界を覆うくらい大きいって。だからどこにいても目的地がある。目的地から来るんだよ」
「取り憑いたのは知的生命体と言うが、会話も出来るのか」
「うん。でもね、頭の中で。あんまりお喋りじゃなくて何をしないといけないか教えてくれた後はずっと黙ってるの」
ラールとダリルは知的生命体についてやり取りをし、
「それで思い出をあげるのはどうやってするの?」
「それはね、あの人がラール達の中にあるたくさんの旅の思い出を持って体から出るんだ。あの人は平行世界とか色んな世界を回って危ないものが来るって知って解決するためにラール達に旅をさせて思い出をいっぱいにさせたんだよ。思い出が出て行ったら名も無き旅団の旅が終わるんだよ。でもラール、終わってもみんなと旅をするんだ! 今度はただのラールとして」
ルカルカとラールはこの先の展開に関わる事を話した。
「だから、お姉ちゃん、案内して!! ラールの思い出いっぱいにするために」
ラールはにこにことルカルカの顔を覗き込んで来る。
「うん! したげるよ!! あとでプリンも……ダリル」
ルカルカはラールの頭を撫でながら即答し土産のプリンの事を思い出すが、個数が足りない事に気付き、ダリルの方に顔を向けた。
「そんな事もあろうかと置いて来た鞄に余分を入れてある」
ダリルは不敵に口元を歪めルカルカのリクエストに答えた。
「さすが、ダリル!! あとで一緒にプリン食べようね! ダリルが作った美味しいプリンだよ!! ほっぺたが落ちるんだから!!」
ルカルカは嬉しそうに手を叩き、ラールを誘った。
「お兄ちゃんが作ったプリン? うわぁ、楽しみだぁ」
子供のお菓子好きは定番なものでこのラールも嬉しそうに言った。
ここで
「……もうそろそろ、準備をして行かなければ」
ロズは仕事を思い出し席を外し、
「あぁ、気を付けて」
陽一は彼を見送り、少しの間ここに留まってから出て行った。
陽一が出て行った後。
「ねぇ、お姉ちゃん、ラール見たい本があるんだけど……」
「その本かぁ。確か普通じゃ入れない所にあったはず」
ルカルカはラールにせがまれて貴重な絵本を用意するはめになった。
そこでダリルが『アストラルプロジェクション』で肉体から離脱し様子を見に行った。
その間、ルカルカはダリルの体の番をしてていた。
「こんな所、キスミ達がいたら悪戯されそうなシチュだなぁ」
ルカルカはこそっと呟いていた。
無事にダリルは肉体に戻り、絵本はラールの元へ。
一通り大図書室での用事を終えると再び校長室に帰還し、ラールをエリザベート達に紹介してから一緒にプリンを食べた。
プリンを食べる時、
「折角だから記念に写真を撮ったげるよ(念のために今の旅団の姿を写真に収めておこう)」
裏に思惑を抱くルカルカがデジタル一眼POSSIBLEを取り出し記念撮影を提案し、皆に受け入れられ撮影しラールの姿も手に入れた。
撮影後は仲良くみんなでプリンを楽しんだ。途中、ラールの手記を見せて貰ったが子供の書いた物のため内容は可愛らしい拙い物で調査の役には立たなかった。エリザベート達はラールに特殊な平行世界訪問の際、イルミンスールに来るように伝えた。
一方。
「……その姿は」
情報収集も終わり学校を出ようとした陽一は廊下で見慣れた正体不明の格好をしたロズに遭遇。
「さすがに平行世界を渡り歩くにあの姿は落ち着かない。渡り歩く時だけこの格好だ」
陽一の様子から察したロズは先回りして答えてから
「そうか。無事に帰って来るように」
陽一に見送られながらどこかに行った。
「さて……」
見送りを終えた陽一もまた去った。
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