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訪れた特殊な平行世界

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訪れた特殊な平行世界

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 あるツァンダの街。

「たまたま公務に来ただけなのに、何この騒ぎ。しかも記憶食いやらをどうにかして欲しいとか言われるわ……散々ね。しかもあの名も無き旅団とか関わってるって言うし。それって……」
「……あの双子関係ね」
 セレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)セレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)は遭遇した騒ぎにげんなり。詳細を知るだけに余計に。ちなみに本日は公務のためいつもの大胆な服装ではなく国軍制服である。

 一通り事態に呆れた後
「それでどうするつもり? 記憶の提供に行くつもり?」
 これからの予定を訊ねるセレアナに
「当然。あんなヤバイもの放置は出来ないわよ。ほら、セレアナ」
 セレンフィリティは異様な空を見上げつつ答えるなりさっさと記憶素材化魔法薬が散布される場所へ駆け出した。
「……えぇ」
 セレアナも一度上空を見上げ溜息を吐いた後、セレンフィリティに続いた。
 二人は無事に記憶素材化魔法薬の服用に成功する。ついでに記憶食いの性質情報も手に入れた。

 記憶素材化魔法薬吸引後。
「……素材化する記憶というと」
「色々とあるわね」
 セレンフィリティとセレアナは素材化する記憶に思いを馳せていた。吸引後それ程時間が経過していないためまだ素材として表面に現れていないのだ。
「…………(記憶というとあの四人かな。絵音と元誘拐犯の三人組、間違えて誘拐されたあの日から何やかんやと……今はすっかり懐かれちゃったし)」
「…………(絵音に初めて会った時、絵音の我がままを聞いたばっかりにセレンが誘拐犯に間違われたのよね。騒ぎは無事に解決はしたけど……)」
 セレンフィリティとセレアナは絵音と初めて出会った出来事を思い出すが、抱く感情は違い、しみじみと溜息である。
「…………(トランプは負け続きだったなぁ。でもハロウィンの戦利品対決は一勝一敗だったけど無事に勝利もして大人としての威厳を保てたし、クリスマスの時は驚かせられたなぁ。マジで泣きそうになったし)」
「…………(トランプやお菓子の量を子供と張り合って見ていて呆れたわね。ハロウィンの時はシュウヤに同情されるし、クリスマスのサプライズはセレンを見事に驚かせる事が出来たわね)」
 セレンフィリティとセレアナは妖怪の宿で熱中したセレンフィリティが負け続けムキになったトランプゲーム、あおぞら幼稚園と交流したハロウィンやクリスマスを思い出して感慨深くなっていた。
 その結果
「……(というか、よく考えるとあたしって子供よりも子供じみてるじゃない。さすがにこのままだと大人としてお姉ちゃんとしての沽券に関わるけど……ま、いっか)」
 セレンフィリティはある事実に気付くも楽しい思い出にひとまず別の場所に保留。
「……(セレンを宥めたり呆れたり子供に同情されたりで何だかセレンに引きずられている気がしないでもないけど、悪くないわね。そんな子供っぽい所も含めてセレンだから私は惹かれたのよね)」
 セレアナは子供相手にムキになる子供っぽい恋人の姿に微笑ましくなりクスリと笑いをこぼした。セレアナが振り返る記憶はどれも気苦労が絶えない物ばかりだが最愛の人と過ごした大切な記憶でもあったりする。
 そんなセレアナの様子に気付いたセレンフィリティは
「……セレアナ、笑みをこぼして何を考えてるわけ?」
 おかしな人だと言いたげに肩をすくめながら訊ねた。
「……セレンの行動に気苦労と幸せが絶えない事かしら」
 セレアナは口元に少々のからかいを含みつつ答えた。
 すると
「気苦労は余計でしょ」
 セレンフィリティは口を尖らせて文句を口にした。
 そうこうしている内に無事に記憶は素材となり表面に現れた。

 記憶の内容は二人が振り返っていた物も当然含んでいたが、
「……これ、妖怪の山でキスミに鉄拳制裁をした時のじゃない」
「……二人の悪ふざけに巻き込まれて仕置きに行く様子もあるわ」
 セレンフィリティは妖怪の山でのキャンプ、セレアナは架空世界の冒険にて双子をとっちめた記憶を確認していた。
 とにもかくにも
「さっさと抜いて平行世界に持って行って思う存分堪能して頂きましょうか」
 セレンフィリティは雑な性格のためか素材をぶちぶちと一気に引っこ抜いて光に変え、特殊な平行世界へと送っていく。
「それが一番だけど、油断は禁物よ。素材状態でも狙って来るらしいから」
 セレアナは一つずつ確実に抜きながら周囲を警戒していた。それは入って来た記憶食いの情報によるものである。
 案の定
「来たわよ」
「えぇ、とりあえず、動きを止めてその隙にこの場所を離れるわよ」
 二人に生える素材を狙う記憶食いの襲撃に遭遇。セレンフィリティとセレアナは警戒態勢から戦闘態勢に移行。
「はいはい。こいつらを消せる薬はまだなのよね」
 セレンフィリティは『行動予測』で回避し、『エンドレス・ナイトメア』で動きを止め
「もうそろそろ出来ると思うけど、今は仕方が無いわ」
 セレアナは『霞斬り』で動きを止めてその隙に別の場所へ移動し、残りの素材全てを無事に光に変え特殊な平行世界の元に送った。